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題名は「偽悪的」っぽいけど、内容はそこまでじゃない:読書録「人は悪魔に熱狂する」

・人は悪魔に熱狂する 悪と欲望の行動経済学
著者:松本健太郎 ナレーター:神田武
出版:毎日新聞出版(audible版)

マーケターであり、データーサイエンティストでもある作者が、行動経済学の視点から色々な事象を分析・解説した作品。
この本、発売されたころにリアル本で購入してたんですが(発行は2020年7月)、そのまま積読になってたのを、今回audibleで見つけてそちらで聴きました。
audibleにも図版は収められているのですが、比較するとリアル本にあるのが全部収録されてる…って訳でもなさそうです。
…が、聴いてて、それほど気にはならないかな?
いちいちグラフとか、そこまでチェックしないので(「読む」場合も)。
もっともこういう本で「それで良いのか」ってのは有りますがw。


ザクッと取り上げられてる事象はこんな感じ。

・人は「強欲」な存在である:食べ放題、吉野家「悪魔のメニュー」、意識高い系とNewsPicks
・「怒り」が人を動かす:グレタ・トゥーンベリ、上沼美恵子のMー1審査、東京医科大学入試の男女差別
・人は「怠惰」な動物である:ホリエモンの本音トーク、3種の神器、カイジ
・言葉は人を騙す:SDGs、上級国民、AI美空ひばり
・嘘は真実より美しい:宝くじ、ランキング、偽科学
・人は「矛盾」に満ちている:占い、ファクトフルネス、ゼロ・コロナ


作者は仏教系の大学(龍谷大学)を卒業しているらしく、仏教的な視点から「悪」を捉えて論じています。
そういう意味では<「悪」を認める>というスタンスとも言えます。
だから上記に挙げた事例なんかも、そこにある人間のありようを「全否定」するのではなく、行動経済学的に解説し、是認する姿勢が多く見えます。
面白いのはそこから偽悪的に「人間、そんなもんだからしゃーないんよ」って方向になるんじゃなくて、それを踏まえた上で「だからこういう風に考えてみたら」「こんな方向に動けばいいじゃない?」と、割とポジティブな方向に話を持っていくところですかね。
おかげで読後感は、「題名の割には」悪くありません。
(アプローチは「橘玲」さんに近いと思うんですが、立ち位置は作者の方がリベラルなんじゃないかと感じます)


取り上げられている事例も、その分析も、行動経済学関連の本をちょっと読んだ人にとってはそんなに目新しいもんじゃないんですが、語り口が良く、スラスラと頭に入って来る印象があります。
アメリカはオーディオブックが盛んらしいですが、こういうのは確かにオーディオブック向きですかね。
エッセイに近いと思いますが。
しっかり読み込みたいなら、図版が揃ってるリアル本の方が良いでしょうがねw。



#読書感想文
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