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「多様な教育」を選択することに社会は耐えられるのだろうか?:読書録「子どもが面白がる学校を創る」

・子どもが面白がる学校を創る 平川理恵・広島教育長の公立校改革
著者:上阪徹
出版:日経BP

我が家の子供たちは、もう高校生になっていて、それぞれ「私立」に通ってますから、「公立校改革」には直接の関係はないんですが…。
ただまあ、小学校は二人とも公立に通って、転勤に伴って、東京(練馬)・石川(金沢)・大阪(豊中)の学校を見てきました。
その経験もあって、「やっぱり公立高が変わらないと…」という思いはあるんですよ。
それもあって、読んでみました。
ま、「広島」は妻の出身地で、馴染みがあるってのもありますかね。


内容はナカナカ面白かったですよ。
まだ「改革」は着手されたばかりで、「成果」という点では判断は早すぎますが、改革の大胆さ、スピード感、柔軟さ…あたりは、「ほう?」と感心させられます。
改革の中身としては帯に挙げられてる、

・民間女性を教育長に招聘
・異学年集団(イエナプラン)の導入(小学校)
・国際バカロレア認定校を公立で設立(中・高)
・専門学校(商業・工業・農業)のアップデート
・学校図書館のリニューアル
・内申書の見直し(評価比率を2割に)
・スペシャルサポートルーム設立による不登校対策

と多岐に渡り、具体的に取り組まれています。
個人的には「?」なところもあるんですが、課題認識や取り組みの仕方・スピード感には同感できるところも多いです。(「イエナプラン」「バカロレア」には僕は懐疑的。「内申書」は2割でも高いと思いますw)


実行できているポイントは以下ですかね。


①知事の強い問題意識があり、サポートも積極的
②教育長が「ビジネス」偏重ではなく、「教育」「教育現場」に対する一定の知見・経験がある
③実施にあたっては外部人材の協力を得て、教員のサポートをしている
④「押し付け」ではなく、「巻き込み」を意識した取り組みをしている





本書を読んで、僕自身は、
「ナカナカ面白くて、チャレンジングなことしてるやん」
と感心しています。
その一方で、
「う〜ん、どうなるかなぁ」
と思ってるところも。
一番は
「公立校が<多様化>したときに、<選択>する親や社会は、そのことに対応できるのか」
ってとこでしょうか?
実態としてはそうなっていない側面はあるとはいえ(転勤でそのことは実感しています)、基本的には公立校の場合、「どこでも同じ教育がされている」ってのが<建前>。
だからこそ住んでる近くの小学校・中学校に通わせるわけです。
その<建前>が否定されたとき、親・教員・社会は<選択>の結果を引き受けることができるのか?
「高校」はまだしも、小・中にはその懸念を感じざるを得ません。
(教員の転勤によって、そこが標準化されて行くことを期待しているようではありますが)



あとは「リーダー」ですかね。
この取り組みは知事・教育長の強いリーダーシップで進められているもの。
でも選挙がありますから。
万が一、リーダーが変わったとき、果たしてこの改革はどうなるのか?
これは大きな懸念材料です。




…とは言え、全体としては僕はこの取り組みには「賛成」です。
この流れの向こうにどういうことが生じてくるのか。
それを見てみたい気持ちは強くあります。
「お手並み拝見」
県民でもない僕にはそれしか言いようがないんですけどね。


平川さん。
大阪に来てくれませんかねw。



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