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その組織が維持され、成長するに足るビジネスモデルはあるか:読書録「郵政腐敗 日本型組織の失敗学」

・郵政腐敗 日本型組織の失敗学
著者:藤田知也
出版:光文社新書(Kindle版)



NHKクローズアップ現代で取り上げられた「かんぽ生命」の不適切募集を軸に、業務停止命令(かんぽ、日本郵便)・トップ辞任に至る経緯を振り返りつつ、郵政さらには日本企業の構造的課題を指摘した作品。


…なんですが、個人的にはもうチョット「失敗の構造的な要因」に踏み込んで欲しかったかなぁと思っています。
特に郵政事業の「有効性」。
これは郵政民営化にも通じる話ですが、
「これだけの組織が、今後の社会の中で必要とされるビジネスモデルを持つことができるのか」
ってとこがポイントだと思うんですよね。


・ネット利用が広がり、競合(宅配業者等)が成長する中で「郵便事業」は成立するのか?
・郵便事業を補う金融事業について、商品そのものも高度化している中、他の民間金融機関に伍して戦っていけるのか?
・それが難しい場合、この組織をどうするのか?


NHKとのやりとりとか、政権(特に菅官房長官(当時))との関係性とか、「読み物」としてはナカナカ興味深いんですが、もっと根本のとこへのツッコミを期待してたんです。実は。


<東芝やオリンパス、日産自動車、神戸製鋼所、関西電力といった日本の伝統的な〝一流企業〟で近年、大規模な不祥事が相次いで発覚している。そこには、いくつかの共通項が見て取れる。  
終身雇用を背景にした組織の「同質性」があり、異なる意見や考えを許さない「同調圧力」が働きやすい。上司の顔色を気にして行動する「忖度」がフル回転し、歪んだ「上意下達」が形成されやすい。「縦割り」や「前例踏襲」「お役所仕事」「指示待ち」といった特徴も積み重なり、組織をじわじわと腐らせていく。  
古びた成功体験を引きずる経営者が、環境変化に適応できず、無理な数字や目標を無邪気に掲げる。根っからの「ノルマ体質」や「数字至上主義」にも煽られて不正が誘発され、やがて感覚が麻痺して当たり前になっていく。>


安易な「ノルマ体質」「数字至上主義」に走ってしまうのは、そもそもの「ビジネスモデル」がワークしなくなってるから…だと思うんですよ。
そこがワークしてるんであれば、「営業目標」そのものは「悪」じゃないですから。


ま、それは僕の勝手な「期待」であって、本書の意図ではなかったって言われりゃ、それはそうなのかもしれませんけどね。


今後の「郵政」がどうなるか。


これは新しい体制のもとで立て直していくしかないでしょう。
その中で「ビジネスモデル」のあり方というのが、また問われてくるのかもしれません。
デジタル化とか進んだら、郵便事業とか、もっと厳しくなるんじゃないかなぁ。
「郵政民営化」からの長い長い流れは、まだ先が見えない…というところかと。


#読書感想文
#郵政腐敗
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