百瀬ヒバナさんの新曲「シュピーゲル」に寄せて
短い感想文のような、オタクの昂った感情の上澄みのような何かです。
既にこの曲を聴いたあなたに、身勝手に共有したい。
初めは頭拍強めでゆったり乗せてくる。
冒頭からボーカルが載っていることもあり、不穏で剣呑な世界観に身構える間はない。
否応なしに優しく誘い込まれる。
サビに入ると鏡の割れる無機質な音が挿入され、同時にリズム的安定も破られる。
足元が揺らいでよろける度に力強い四つ打ちに手を引かれていく。
そして終わり際には華麗なワルツを思わせる三連符から、裏切るようなブレイクによって息の根を止められる。
目を覚ますと聞き覚えのある落ち着いた情景。
気を失うような衝撃を夢にして、時が巻き戻ったのかと錯覚する。
けれど容赦なく加速度的に増していく変化の実感が、物語の確かな歩みとその終焉を予感させる。
救いを乞う言葉に答えを返すのは、針と鐘の音。
僅かに速度を緩めながらもどちらも止まることはなく、淡々と現実を突きつける。
ラスサビに入るも、これまでに見せた自由でいきいきとした動きは息を潜めている。
けれどその中で音は膨張を続け、窮屈さに喘ぐ何者かを押し潰していく。
そうして1度目の冷ややかな苛烈さ、鋭さからは予想し得なかったほど大きく膨れきった感情を孕んだ歌声が、2度目のブレイクで悲しげに、名残り惜しそうに鳴り渡るのだった。
優しい結びにあって、なお歩みを止めない秒針の音。
それが新たな歩みを暗示しているようにも感じられたのは、絶望に打ちひしがれながらもただ消えゆくことを受け入れない、見上げるほどの誇り高さをあの声に見てしまったが故だろうか。
MV(近日公開予定)楽しみ。
多分その時に解釈変わるのでまた書きます。
【百瀬ヒバナ】
彼岸に住む空っぽの存在「虚」。 歌だけでなく、作詞作曲にも参加し、様々な形で此岸に歌や声を響かせるため活動中。
カバー曲も現在10曲、オリジナル曲を3作。 『紅蓮華』作者 草野華余子による楽曲提供をかけたオーディションの結果、グランプリ獲得。 また、ボカロP れるりり主催「反芻シ考 歌ってみた サブスク配信プロジェクト」のメンバーにも選出。
A Virtual singer who lives on the other side of the world and sings songs that breathe life into the dead (those who have fallen). Currently has 10 cover songs and 3 original songs.
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