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星組バウホール公演「ベアタ・ベアトリクス」ライブ配信を観た感想 

初めてライブ配信で観てみて

 わたしは宝塚ファンになって半年ほどのビギナーでございまして、初めてライブ配信で観劇しました。スカイステージでは数々の作品を観てきましたが、やはり場所は違えど生でやっているので特別感はありましたしドキドキしましたね。生の空気こそ感じませんが細部まで観察できるという点ではとても良い勉強になりました。

 わたしは役者の卵として専門学校で演劇の指導を受けております。だからこそ宝塚はとても独特な世界で、舞台機構も充実していて宝塚以上に勉強になる舞台はないと思っています。もう…すごいんですよね。今回のバウホール公演は長の期が95期生のひろ香祐さん(ヒーロー)であること、100期生の極美慎くん(かりんちゃん)のバウ初主演であることを考えると若いカンパニーということでどれだけのクオリティの物ができるのだろうと楽しみにしておりましたが…最高でした。本当に。

※ネタバレ注意です

観劇感想

全体の感想

 この作品は演出家、熊倉飛鳥先生のバウホールデビュー作品でどんな作風を書かれる先生なのか全くわからず、実在の人物であるダンテ・ガブリエル・ロセッティの半生を描いた作品であるということで全く予想できない作品でした。どれだけ有名な芸術家でも作品は知っていても人生は知らないことが多いですから。初演出で画家という珍しい題材を演出した熊倉先生すごいな、って思いました。
 沢山作品を観ましたが久々にというか一番泣きました。本当に面白かった…。そして感動しました。わたしは元々人の一生を題材にしたお話がとても好きなので、きっと好きだろうな…とは思っていましたが、あそこまで引き込まれるとは…。かりんちゃんはまだ番手がないのでブルーレイ発売がないのが悔やまれます。千秋楽ということで色々な感想ブログ等々見て予習していましたが、作品の評価が高くてさぞいい話であることは承知でしたが、とにかく素晴らしい作品でした。
 ロセッティの半生を長い年月を2時間ちょっとで描く。人の一生ですから当然人の心や関係性は変わっていく様子が描かれていました。その複雑な心情や人間関係が目に見えるように美しくわかりやすく描かれていて、特にロセッティとエヴァレットの友情関係、ロセッティとリジーとジェインの恋模様はとても繊細に作られていて、魅了されました。
 演出としては、エヴァレットが「オフィーリア」を描く場面が素晴らしかったです。「オフィーリア」と「ベアタ・ベアトリクス」について、そしてダンテ・ガブリエル・ロセッティジョン・エヴァレット・ミレイについてはとてもとても予習しておりました。それもあり、「オフィーリア」を描く時の表現やロセッティの心の中にある「オフィーリア」を表現している場面はとても幻想的で素敵でした。あの時からロセッティ、エヴァレット、リジーの三人と兄弟団の関係が壊れていくわけですが、大事なシーンで本当に魂が震えるくらいに感動して心が苦しくなりました。その後、リジーが亡くなったあとのロセッティの変貌、そしてエヴァレットとの和解…どこの場面もどれも忘れられないくらい印象的でした。

極美慎さんと小桜ほのかさんのコンビ

 極美慎くん(かりんちゃん)の演技がとにかくこれまでに類を見ないほど上手いなと思いました。スカイステージの宝塚ニュースにてかりんちゃんが熊倉先生との対談で「大変不器用なもので…」と仰っていらっしゃいましたが、不器用だからこそできるお芝居だなと思いました。役作りの仕方が瀬央ゆりあさんに似ている気がします。繊細で緻密で、巧妙に作られたその人。だからこそ、舞台上でその人が地に足つけて存在している。なんというか…等身大でちゃんとダンテ・ガブリエル・ロセッティがそこに存在しているんです。なんの違和感もなく。
 この前、学校でも教わったことなのですが…今、自分がそこに地に足つけて立っている、存在している。そう思うことは簡単なことではなく、難しいけれど、それを感じることが役を演じる上で最も大事なことでそれが出来なければちゃんと舞台で役として生きることが出来ないことを学びました。その時にやったワークは頭を空っぽにしてその空間を感じるというもの。これが…何度やっても新しい発見があるんです。同じ教室で、同じ条件でやっても。不思議なものです。きっとその空間を感じることが出来ているからかりんちゃんの役が等身大に観えたんだな、ととても勉強になりました。
 そして小桜ほのかさん(小桜ちゃん)。やっぱり歌姫ですね…。小桜ちゃんのあの歌声にはいつも感嘆の声が漏れてしまいます。小柄ながらにあそこまでの存在感を出せる小桜ちゃんを尊敬します。わたしもかなり小柄なもので…舞台上で輝くためには身長は大きな武器になります。高身長が揃う宝塚なら尚更でしょう。その中で小桜ちゃんがどれだけの努力でバウヒロインを掴んだのかを考えると尊敬の言葉しか出てきません。そして何よりもかわいい…。最高のモデルと聞いてなんの違和感もなく、とにかくかわいい。純粋で穢れの知らないリジーを演じるに当たって小桜ちゃん以上にピッタリな娘役さんいますか!?
 この二人は何度か違う作品でもカップルを演じていますよね。この前までの大劇場公演「めぐり会いは再び」、カップルかと言われれば違いますけど「アルジェの男」。小桜ちゃんという指針があるのでかりんちゃんの歌声がとても安定して聞こえました。この二人の身長差カップル大好きなんです♡ 可愛すぎて…小桜ちゃんが1期上さんなのであと何回あの二人のカップルが見れるかわかりませんが、今のうちに目に焼き付けておきます。

天飛華音の演技力

天飛華音さん(カノン)の演技力は…すごいですね。特にあの「オフィーリア」を描いている時の場面。画家そのものでした…。さすが実力派で礼真琴さんのDNAを受け継いでいるだけあります。カノンが元々から演技派であることは知っていましたし、ココ最近では大劇場公演でもいい役をもらっていることからもわかっていましたが…あの演技には脱帽です。でも、かりんちゃんの演じ方とは全然違うんですよね。なんというか…カノンは本能的です。才能ある人なので直観力や感覚的なところを大事にされている気がします。その上で自分にあった演技の仕方でカノン色になっていて、その個性がエヴァレットの個性に繋がっている気がしました。カノンは努力家ですね。才能の感性と努力によってこれからどんなカノン色が作られていくのか楽しみです。エヴァレット…めっちゃ好きです。初めてできた友達と自分の才能を伸ばすことの間に立たされ、究極の選択を迫られたときの心の葛藤、ロセッティとの心のすれ違い。最後に和解できて、幸せになれて本当に良かった。

その他、気になった方々

水乃ゆりちゃん(みずのちゃん)ですね…。みずのちゃんは…魔性の美女がよく似合う…。あの色気で102期生とは恐るべし…。ジェインは優しいですね。ロセッティを一途に想いながらもロセッティにとって特別な人はリジーだけで、自分を見てくれないことを解っていながらずっとロセッティを案じ続けて、寛容で利発で優しい人だと感じました。
碧海さりおくん(ちゃりお)。なんて優しい人!脇を占める能力のある人は貴重ですね。とにかく優しい人で…ウィリアムは才能があったわけでも派手な人生を送ったわけでもない素朴な人で…いわゆる普通の人といった感じ…なのですが、そういう友達がいたからロセッティは生きていたのかもしれませんね…。

最後に

 NOSでもかりんちゃんが、ロセッティにとって特別な人はリジーだけで、ジェインはこれまで他の女性と同じ愛であったことを大事に表現したいと仰っていましたがその表現がそれはもう良く分かって。ロセッティとリジーの心は離れて行ってしまいますが、その根本の心はずっと愛し続けていて、不変の愛があることが分かって最後の方のデュエットは全部号泣しました…。
 「ベアタ・ベアトリクス」はロセッティが妻を愛せなかった罪を感じ償いとして描いた作品です。わたしは今作を観て、償いと共に、ロセッティがもう一度筆を取るための希望の作品であったのではないかと思います。だから最後、愛おしそうにその絵を眺めて絵のタイトルを言ったのだと解釈しました。
 かりんちゃんのバウホール初主演作、ライブ配信でも観れて本当に良かったです。そして、一度も止まること無く千秋楽を終えられたこと、本当に良かったです。これからのかりんちゃん、カノン、小桜ちゃん…皆さんに期待です!


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