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運動会と理不尽


刺激的な体験が記憶に残るのって、「幸せな刺激」だけじゃなく「辛い刺激」も同じだなと思う。
一種のトラウマ的なやつ。



今でも思い出せる自分の記憶の中で、「嫌な出来事」として残っている最古の記憶は、保育園の年長さんだった時の運動会。


当時、運動があまり好きじゃなくて、室内でポケモンの絵ばっかり描いていた幼女のわたし。
日頃から、園庭で遊ばなきゃいけない時にやっていた遊びといえば、ポケモンアニメのロケット団から学んだ落とし穴作り。



◯簡単!誰も落ちない落とし穴の作り方(約15cm四方)

[用意するもの]
・砂場
・スコップ
・小枝いくつか(穴の幅より長いもの)
・落ち葉いくつか

①砂場に穴を掘る。

②その上に枝を格子状に橋渡して並べる。

③さらに上に落ち葉を敷いて隙間を無くす。

④周りの地面となじむ程度に砂でカモフラージュする。

⑤できあがり!



完成した落とし穴は誰も落ちないし、ただ作る工程に満足したのちに片付けます。

そんな風にインキャライフを満喫していた無害で純朴な幼女だったわたしですが、園の運動会で謎の理不尽に見舞われます。



ただでさえ気乗りがしない運動会。

全員参加、個人戦のかけっこの競技。
園庭が狭いからか2人ずつ短距離を走るその競技で、わたしは同じ年長のS子ちゃんと一緒。

運動音痴を自覚していたので勝つことにあまり希望は無かったけど、自分なりに頑張って走った。
結果、意外にも勝ったのはわたしだった。

ちょっと嬉しい…のも束の間、S子ちゃんの様子がおかしい。
泣いている。

年長の女児たちが集まる。
「S子ちゃんどうしたの」「だいじょうぶ?」

シクシクと泣きながらS子ちゃんは答える。


「あみちゃんにまけるとおもわなかった」


えっ

オイオイオイ。
なんだそれ。
だいぶ失礼じゃないか。

幼女のわたしも、あまりの理不尽さにさすがにびっくり仰天。
そんなこと言われて泣きたいのはこっちの方だが??


なんだか気まずい気持ちのまま運動会は終わった。



S子ちゃんは小学校に上がるタイミングで親の仕事の関係とかなんとかで県外に引っ越した。

わたしの心に傷跡を残して…





それから今までずっと運動が苦手。
中学の頃のプールでは、最初の壁蹴りで床に突っ込んで沈んだ。
高校の頃の50m走では、ヨーイドン!の一歩目でみんなの前で派手にずっこけた。

S子ちゃん、ごめんね。




空をなくす/syrup16g

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