見出し画像

鉄パイプとナックルダスター #助手席の異世界転生  #毎週ショートショートnote

教授の私では
何故ダメだったのか。

自分を支えていた立場の助手が
どうして、あんなに
完璧な論文を提出したのか。

私は卓上の資料を床に叩きつける。
それでも怒りは収まらず
ラボにある非常用の手斧を
取り出し、助手に振りかざした。



俺が悪かったのだろうか?
教授に理解して貰えなかった。
助手として働いてきた俺を
裏切ったのは貴方なのに。
ただ悲しかった。

ホワイトベージュの椅子が赤く染まり
助手席の異世界転生が始まった。

呼吸の止まる瞬間、真っ赤に
染まった俺の手にすがる教授の
姿を最後に俺は意識を失った。




いい香りがする。
花の香り。何の花だろう。
きっと天国だ。
楽しそうな声が聞こえる。

俺はゆっくりと目を開けた。
思ったより周りは暗く香りはキツい。
靄だと思ったが煙草の煙のようだ。

起き上がったソファからの光景は
俺のいた真っ白なラボから
真っ暗で派手な
ヤンキー漫画に変わっていた。

目の前には
ラボで使用した薬と違う白い錠剤と
注射器やストロー。

俺の指にナックルダスターと鉄パイプ。


【148文字】



#助手席の異世界転生   
#毎週ショートショートnote

サポートありがとうございます。 治療、子育て、罰金返済等に使用させていただきます。