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女子留置所の中 釈放編

留置所を出て
自分の収監されていた建物を
見上げる。


こんなところに私はいたのか。
小さな世界で大きな事を学んだ。


今までお世話になった看守に
頭を下げる。
「ありがとうございました」
本当に感謝した。
厳しく辛かったが
支えてくれる事も多かった。
たくさん伝えたい気持ちはあったが
口から出てきた言葉は
シンプルな言葉だった。

「もう大丈夫。ちゃんと反省できたもの」
看守の言葉があたたかかった。

そんなちょっとセンチメンタルな
気持ちになってしまったので
当初の目標である
保釈後の第一目標
『コンビニ前でビールを飲む』
は達成されなかった。



自宅に戻り自室を見回す。
シンプルに汚い。
と思った。

物が多すぎる。
留置所の部屋には何もない。
何もないのに生活できた。
私の部屋には、
いらないモノが多すぎた。

「捨てよう」
過去の自分との決別の意味もこめて
どんどんゴミ袋へ入れていく。
気がつくと、
45L10枚のゴミ袋を使い切っていた。

今日はこの辺でいいか
と区切りをつけて
あらためて、部屋を見回した。

お湯を沸かしてお茶を飲んだ。
温かいお茶が体に溶け込んでいった。

自由に温かいものが飲める幸せ。

不思議だった。
今までの普通が普通ではなかった事。
まだ別世界にいるような感覚だった。

冷蔵庫で冷やされていたビールに
手をつける気分には、なれなかった。



久しぶりの我が家のトイレ
便座に座って私は叫んだ

「トイレットペーパー!!!!!!!」


久しぶりに出会った
トイレットペーパーは
今日、一番の感動を私にくれた。

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