会社員の夫に頼り
私は子育てと家事だけを
やっていればいい。

休日は疲れた夫を気遣い、
マッサージをして
夫の食べたいモノを用意し、
いつでも風呂に入れるように
準備した。

傍から見れば献身的な妻。
おしどり夫婦に見えるだろう。

珍しく買い物についてきた夫は、
食費も考えず、食べたい物を
次々とカゴヘと入れていく。

「お母さんって奴隷みたいだね」
小学生の息子に言われた言葉が
突き刺さった。

夫の言う事を聞き
夫に従う私。
息子には、そう見えたのだろう。

「違うわよ。お父さん休日は
疲れているから、甘えているのよ」
そう答えた私の声は
きっと震えていただろう。
自分に言い聞かせるように
頭の中で反芻する。

いくら繰り返しても
『奴隷』という単語を消し去る
事はできなかった。

夫に愛人がいても
気づかないふりをしてきた。

息子が野球に出かけた土曜日。
夫は愛人宅へ出かけた帰り
複数の男に襲われた。

白骨化した夫の
スマホを叩きつけた。
夫と同じ様にバラバラになった。

もう、私は奴隷じゃない。

【415文字】

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