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ジャガイモは冷蔵していいのか、いけないか問題について

北海道厚沢部町の板坂さんから、「雪の下メークイン」そろそろ出ますよー、と連絡が来る。

雪の下に貯蔵して、凍るギリギリの温度の置くことで、イモのデンプンが糖化し甘くなったイモ。ホクホク感は少し落ちるものの、その深い甘みは年明けの1月末~春先にかけて食べられる旬の味です。

この越冬芋、凍らないように糖化して濃度を高めているため、常温に戻すと糖分が呼吸などで使われてしまうため、越冬芋は「冷蔵輸送の冷蔵保管」ってことを過去に書いてきました。

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(上記マンガ「八百森のエリー」(©仔鹿リナ/講談社)から拝借)

冷蔵して甘みが増してジャガイモは美味しい、ってことを布教してきたわけですが、ここで一つ問題が!

「ジャガイモを冷蔵すると毒素が増える」って話があると。

「冷蔵庫で保存したじゃがいもは見た目や味が劣化するだけでなく、体に有害な物質を作り出してしまう可能性があります。冷蔵したじゃがいもを高温の油で揚げると、からだに有害なアクリルアミドという成分が発生します。」(リンク先↑より引用)

で、実際混乱している人もいるわけです。


これについては、農水省のページが詳しく。先に教科書的な正解を引用すると、
「ジャガイモを揚げたり炒めたり焼いたりすると、ジャガイモに含まれる糖とアミノ酸の一部が反応して、アクリルアミドという有害物質ができます。
ジャガイモを冷蔵庫で保存すると、糖の濃度が高くなるので、このようなジャガイモを揚げたり炒めたりするとアクリルアミドのできる量が増える可能性があります。
冷蔵保存したジャガイモは、煮物や蒸し物といった水を使った調理に使えば、アクリルアミドもできにくく、甘味も増しておいしくいただけます。」
(上記、農水のHPより)

つまり、ジャガイモを冷蔵して毒素(アクリルアミド)が増えるのでなく、

ジャガイモを冷蔵して増える糖が120度以上の加熱でアミノ酸と反応して毒素(アクリルアミド)が生成する可能性が高まるので気をつけよう、って話です。(逆に言うと、糖化していないイモにも糖分はあるので揚げればアクリルアミドはわずかながら生成している)

で、120℃以上の加熱って点で、揚げたり炒めたりは避けて、煮たり蒸したりした方がいいよ、と。

じゃあ、マンガ「八百森のエリー」で、試食で糖化したジャガイモを揚げているのはアカンのか?、って疑問が出てきます。

そこについても、農水省のページに回答があって、
多くの食材にはアミノ酸と糖類が含まれています。その中の特定のアミノ酸(アスパラギン)と糖類(ぶどう糖、果糖などの還元糖)が、揚げる、炒めるなど120℃以上で加熱されることによって、アクリルアミドができます。また、アクリルアミドは食材に含まれる水分が少なくなってから、多く生成します。アクリルアミドは加熱調理の副産物として、昔から食品に微量に含まれていたと考えられます。」

「食品に含まれている栄養素が、食品の加工調理の過程で他の成分と反応した結果、ある程度以上とるとヒトの健康に悪影響を与える可能性のあるものができることが知られています。アクリルアミドもその一つです。

バランスの良い食生活を送れば、特定の食品をたくさん食べることにはなりません。そのため、アクリルアミドのようなものが一部の食品に含まれていたとしても、その食品からとる量が多くならないので、食品全体からとる量を低く抑えることができます。」

なにも、冷蔵して糖化したジャガイモだけが悪いのでなく、アミノ酸と糖類を含む食材なら、大なり小なり揚げたり炒めたりするとアクリルアミドは生成しているんです。揚げた野菜や唐揚げ、とんかつ、スナック菓子など。

日々三食揚げ物しか食べない、ってのであればそりゃ問題ですが、「バランスの良い食生活」を送れば、何ら問題ないと。

実際、日本人の食生活から割り出されたアクリルアミドの摂取量の推計値でいくと、中央値で0.154μg/kg体重/日で、「発がん以外の影響については極めてリスクが低いと判断」、さらに発がんリスクも「ヒトにおける健康影響は明確ではないが、動物実験の結果等から、公衆衛生上の観点から懸念がないとは言えないと判断」とまっどろかしい回答。

すず辰的に乱暴に意訳すると、

「マンガで、フライドポテトで試食してますが、あの分量食べたからって健康被害は出ないでしょうね。冷蔵いもは糖分高く焦げやすいので低めの温度で、とおまけページでも書いてましたが、「焦がさない」よう気をつければ気にするレベルではないと思います。

いもの冷蔵の有無を気にするよりも、「揚げ物」ばっかり食べていないかどうかの食生活を気にする方が健全かなと思います」

まぁ、気にする方は、「揚げたり炒めたり」は控えて、「ゆでたり蒸かして」冷蔵いも(越冬いも)のおいしさを堪能ください。

気にし過ぎが一番よくないかなと思います。気にして、越冬芋の天然の甘さを体感できないのはもったいないかなと八百屋的には思います。


ちなみに、「冷蔵すると乾燥する」って点について。

家庭用冷蔵庫は基本「温度」を調整するだけで、イモは乾燥します。なので、新聞紙にくるんでビニル袋に入れて、でも呼吸確保のために、袋に穴をあけて…なんてことが書かれます。まぁ、裸のまま冷蔵庫にはいれないでね、ってなくらいのものです。

一方、産地側の冷蔵庫ですが、こちらはいろいろです。
【農家さんの倉庫】(冬場限定の)天然の冷蔵庫;温度のみ
  気をつけないと凍るので、いろいろ工夫が必要
【大型冷蔵庫】大きいだけ;温度のみ
【氷室・雪室・「雪の下」貯蔵】(氷・雪の効果で)温度+湿度を調整
【最新鋭の冷蔵庫】(ホクレンの”よくねたいも”の貯蔵庫とか)
 温度+湿度+ガス成分を調整 結果、いもの呼吸と発芽を抑える!

年明けて、品種によって発芽のしやすさは異なりますが、2-3月あたりから徐々にイモの芽が動き始めます(冷蔵していても)。それを抑えちゃう、最新鋭の冷蔵庫だから、「よくねたいも」とかは6月に販売できちゃうんです!

でも、常温棚だと温かいのでそのうち店頭で発芽、ってことに、だからやっぱり「越冬芋は冷蔵保管!」です。


なんか予想以上に長い文章になっちゃいました。

これから春先まで、越冬芋の季節です。
八百森のエリー(第2巻)を読んで、糖化したジャガイモのおいしさを確認したら、ぜひぜひ実際に堪能ください!

八百森のエリーについては以下をどうぞ。食いしん坊な方はぜひ!

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