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8分のバニラ。(楽典崩壊。カデンツの死の後に咲いた花。)

あなたは1985年頃の音楽革命をご存じですか? あの時期一方でヒップホップが、他方でハウスミュージックが覇権を握り、結果、楽典は崩壊した。カデンツが死んだのだ。あの時期を境にポップミュージックのルールはなにからなにまで激変した。では、それからポップ・ミュージック・シーンはどうなっていったか? 


一般的には、Björk (ビョーク)を取り上げたりすればわかりやすいでしょう。ただし、ここでぼくは極私的かつ非標準的に論を展開してみたい。まずはこの曲を聴いてください

楽しいでしょ? お洒落でしょ? アナーキーでしょ? この曲は麻紀子さんと坂井俊哉さんによる音楽ユニット「8分のバニラ(はちぶんのバニラ)」の「ニューオルリンズのなで肩女」という曲で、1995年のリリースです。迂闊にもぼくはリアルタイムではこの曲を聴き逃していて、つい先日はじめてこの曲を聴いて椅子から転げ落ちた。こ、こ、これは懐かしいビートポップスをループとして見ることによる、ビートポップスの脱構築ですか??? 


ぼくはあらためて1980年代半ばに起こったポップミュージック革命を理解した。その後ポップ・ミュージックはヒップホップ、アシッド・ハウス、インディ・ダンス、ポストロック、エレクトロニカと分岐し発展してゆく。かっこいいビートにのせてループを作り出し、おもいがけない音色を組み合わせ、音のコラージュを作り出し、ときにはリフとリフのずれを作り出し響きの立体感を愉しむようになった。楽典が生きていた時代が遠いむかしのようだ。


8分のバニラのこの曲のディストーションのかかったギターリフの変態的なこと。しかもそこに麻真紀子さんのコケティッシュなヴォーカルが乗る。音色がカラフルで、そのうえ音楽観がループ loop ゆえ、意表を突いた展開を繰り返しながら、漂いつづけ、ただしけっして和声的には解決しないか、あるいは解決したようなしないような微妙なところへもってゆく。ヘッドフォンで聴いても楽しいし、音楽の仕上がりのレヴェルが高い。ゴージャスだな~、超楽しい。


なるほど、たしかにあらゆる音楽はループとして見ることができる。音色の組み合わせとして見ることもできる。このように見れば往年のビートポップスもまたまったく新しく蘇えらせることもできる。楽典が崩壊しカデンツが死んだ後あらためて蘇るビートポップス。流行は生まれては死にそしてまた蘇る、ただしまったく新しいスタイルとなって。


なお、ユニット名の由来は、かつて麻紀子さんが「あなたって8分の1くらい外国人の血が混じってそうね」と言われたとき「スウィーツ大好きな麻紀子さんが「わたしの血の8分の1はヴァニラだったら良かったのに」とおもったことに由来しているそうな。


Special Thanks to 「湘南の宇宙」さん。

Eat for health, performance and esthetic
http://tabelog.com/rvwr/000436613/




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