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プロセスインテグレーションの仕事

はじめに

 今回は、半導体デバイスのプロセスインテグレーションエンジニアの仕事に関してまとめていきます。話の流れてしては2つ目の項目となります。おおよその仕事内容に関してと全体像に関してはこちらのnoteをご参照ください

全体像

 それでは具体的にプロセスインテグレーションエンジニアはどのような仕事を行っており、責任範囲としてどの様なものなのかを明確にしていきます。各社によってこの責任範囲は変わるので一概に言えませんが、おおよそこの様な感じです。

Fig.1 プロセスインテグレーションエンジニアの責任範囲

 責任範囲がかなり広いので、一人で全てを実行することはほぼありません。大抵はそれぞれの工程、もしくは2−3工程をまとめておき、それをエンジニアが担当することになります。全体の進捗やバランスを調整するためLeadエンジニアが統括するというのが普通です。
 Fablessの場合、Fabに関する工程(Select process module, structure wafer studyおよびPerformance verificationの一部)はFabのエンジニアが担当する場合が多いです。その場合、Fabless側はDeviceのDesignとPerformance Checkが主な責任範囲になります。要件や必須事項は適宜Fab側と協議して決めないといけないので交渉術やLeadershipが非常に重要になります。
 それでは各工程の内容をみていきましょう。

Design a device structure

 Device simulatorを使用し、Targetとなる構造をWS上に構築します。その時にある程度現実に近い不純物プロファイルや構造を入力するのが重要です。あまりにもかけ離れた情報を使用すると後のProcess Flow構築で痛い目に遭います。
主な作業の流れとしては、

  • Targetとなる構造をCADツールを用いて構築する

  • ある程度現実味がある不純物プロファイルや構造パラメータでRefineする

  • 計算用のMeshを生成する

  • Device Simulatorで特性を評価する

となります。1つ目と2つ目のところがかなりKeyとなってくるので、前の記事でも書きましたモジュールの知識がある程度必要になってきます。

Select process module

 デバイス構造を構築する時に重要なのは、ある程度現実味がある構造にするということです。そのため実際に使用可能なプロセスモジュールとその特徴を把握しておく必要があります。例えばイオン注入機で使用できる最大Dose量やRotation制限などです。また大体の熱履歴とかも把握しておくと不純物拡散のSimulation精度が向上し特性予測精度がUpします。
 これらのパラメータをProcess Simulatorに入力することで構築するデバイス構造の精度が格段にUpします

Structure wafer study

 DeviceやProcess Simulatorで構造設計後、実際にKeyとなる部分がSi上で実現できるのかを試作してみる段階です。実際に部分だけを試作してみて構造が意図したもの何か、それともかなりかけ離れているのかをCheckします。この時点でModule担当の人と協力して条件だし等も行います。
 大抵の場合、理想と異なる構造が出来上がるのでそれをDevice simulationの方にFeedbackして精度を高めていきます。この時点でDevice構造自体に欠陥が見つかった場合は適宜修正していきます。

Process Flow Development

 上記の3つの作業を複数回繰り返し、構造的に現実味があり、かつ特性的にも問題ないと判断できた時点で試作するためのプロセスフローを構築します。このプロセスフローはFab側とのやり取りに重要なものなので、慎重にかつ精度良く作成する必要があります。
 Fab側はこのプロセスフローを基にレシピ作成やFab内での試作手配をします。なのでフロー自体にミスがあると意図したものはできません。
 Simulatorで使用するプロセスフローと実施にFab側で運用しているプロセスフローは全く別なものなので、この翻訳をミスしてしまうと大変なことが発生するので有識者を交えてかなりのチェックを入れます。

Performance verification

 プロセスフローが構築でき、Fab内で実際のデバイス作成を開始します。試作が終わったものを測定し、Simulationで予測していた特性と比較しどうだったのかを検証します。あまりにも特性が違う場合は、何が原因なのかをさまざまな測定やFab内の流動履歴を見ながら考察していきます。
 新規デバイスの場合は一発で特性がSimulationと一致することが稀です。ここで重要なのは、現物が意図した構造になっていないのか、それともSimulationが現実とかけ離れているのかをJudgementするところです。
 ここはかなり意見が分かれるところで、Simulationは理想状態なのでそれに近づけるべきだと主張もありますし、現物に合うようにSimulationのパラメータや仮定条件を変更すべきだという主張もあります。Simulationでパラメータを動かしてみて、ある程度理にかなった調整だけで現物に合うのであれば、そこまでCriticalではないと思います。要はOffsetを考慮すればSimulationでも同じ傾向が取れるのであれば、問題ないと思います。

Flow Debug

 ここにくると最終段階となります、試作時にはプロセスの出来栄えを確認するため不要な測定や、安全のために不要な工程を追加する場合が多いです。それらを再検証して取り除いたり、Costの面で置換できる工程があれば積極的に置換する作業も含まれます。
 同時に生産時に使用する管理項目を決めるという作業も入ってきます。皆さんが大好きなCp, Cpkの一覧を出して管理範囲の妥当性とSPEC管理値を決めていきます。

Release

 以上の作業を終了すると、PORということでプロセスフローをFabにReleaseすることができます。一旦これでプロセスインテグレーションエンジニアの仕事はCloseとなります。実際にはProductエンジニアと協力してYield Upの作業したりします。

まとめ

 今回はプロセスインテグレーションに関してまとめました。この分野はかなり複雑なのと、強力なリーダーシップと判断力が求めまれます。


アメリカSilicon Valley在住のエンジニアです。日本企業から突然アメリカ企業に転職して気が付いた事や知って役に立った事を書いています。