見出し画像

Discovery Set (001 - 012) / fog

 7月にfogのディスカバリーセットを買った。

 fogは精油を使った、福岡の小さな香水ブランドだ。


 香水沼に堕ちて初めての夏である。
 香水は気温や湿度で質が変化してしまうと聞いていたので保管には気をつけていたが、自分自身の香りに対する変化は懸念していなかった。というか失念していた。
 敏感肌だの感覚過敏だの、一年中なにかしらの要因で心身の調子を崩してる面倒くさい人間なので、そっちばかり気をつけてたんだ。だが当然ながら、香りの感じ方も気温や湿度によって変化する。
 まぁ、まんまと香水使えなくなっちゃったんだな…。

 湿疹が出るとかはないんだけど、気持ち悪くなってしまって付けられないんだ。たとえ冷房が効いた室内でずっと過ごしていてもだ。たまに大丈夫そうな日は付けて外出しているが、ごく少量だけにしている。


 そんな日常だったのでこのディスカバリーを無事に試せるか不安だったけど、なぜかまったく平気。ヤッタネ。
 直接肌に付けないからか、それとも精油ならではの特性か…。いつ付けても気持ち悪くならないし邪魔にならない。助かる~ありがとうありがとう。




fogの香水について

 精油で作られているので服やハンカチなど布製品に吹き付けて使う。
 精油は芳香成分が高濃度に含まれており、また超微細な分子が肌から血管にまで浸透するため、直接肌に付けてしまうと炎症を起こしたりアレルギー反応を引き起こすおそれがある。スキンケア品を作るときなんかはキャリアオイルで希釈するけど、精油の種類によっては0.2%以下までとかって決まってるぐらいだ。気をつけようね。 

 香りは主張が強くなく、敏感な人でも気軽に使いやすい。
 特にこのセットに入っている香りたちはオードトワレのため、3,4時間ぐらいで落ち着いていく。

 オンラインショップでこれら既製品の購入やオーダーメイドができる。ただし常時販売されているわけではないので、公式インスタグラム(特にストーリー)で販売情報を要チェックだ。概要も読んでね。文字小さいからインスタの方が見やすいかも。

 ときどき数量限定の香りも販売されている。今年の梅雨に販売されたnoon rainはめちゃくちゃお気に入りなので、これもついでに紹介するぞ。


注意

 以下は私個人の自由な感想である。評価ではない。これめっちゃ好きってやつもあれば、うーんってやつもあるということは、ご了承ください。



001 庭

top: grapefruit, bergamot
middle: oregano, siso
base: opopanax, sugi tree

 爽やかな苦みある柑橘で始まり、広がるのは草の青臭さ…ではなくオレガノの良い香り。さらにシソの酸味や杉の爽やかな香りが混じって空気が澄み渡る。
 甘さはなくどちらかというとドライな、リラックス&リフレッシュ。ハーブを植えてるお庭はこんな香りなのかな…なんて気持ちいいんだろ。好き。

 柑橘は遠くからフッとしてくるくらい控えめ。清々しい空気のオープニングとして、良い印象を与えてくれる。
 一般的なグリーン系香水のような青臭さや瓜系の香りではなくてハーバル系。木の香りも幹や枝じゃなくて葉の香り。木々の葉の間、庭に植わる草の間を抜けてそっとたどり着いた風のよう。
 最後まで変に青々しくないので鼻をつんざくこともない。いい。ドライだし、先に挙げたようなグリーン系香水が苦手という人でもこれは平気じゃないかな。

 あと個人的に…植物っていうより食べ物の印象が浮かぶ、オレガノだから。
 トマトとなすをたっぷりのオリーブオイルで炒めて塩胡椒し、オレガノを振って、とろけるチーズを乗せるとめっちゃうまいの。それが大好きなの(笑)。オレガノっていうとそのイメージが浮かんじゃうぐらい。夏になると必ず作るんだ。


002 skin

top: lime, lavender
middle: rosewood, ambrette seed, liquor
base: tonka bean, musk

 なんだか懐かしい甘い香り。トンカにライムやアンブレットが混じって、お菓子っぽい、どこか馴染みのある香り。ラムネみたいな…。
 それからラベンダーのピーンと弦を弾くような酸味、甘さにまったりした空間にジリジリ響き渡るかんじがいい。それはだんだんローズウッドに置き換わって静まり、ムスクの湯気がまた波のように打ち寄せ、酔いに気づく。

 ムスクにリキュールだけど、ラベンダーとトンカのおかげか清潔感があっていやらしさやだらしなさがない。こういう香りってもっとムワッとかドロンとかっていう、怠惰と堕落の雰囲気があるもんだがそうはならんのよね。肌に付けてないから尚更だと思う。
 だんだんリキュールが熱を帯びてくるけど、酔ってないというか…鍋で煮詰めてアルコールを飛ばしてる最中のような。そうなるとラベンダーの香りがハンドソープみたいにも思える。台所のイメージが湧く。お菓子作りでもしてるのかな。
 とにかく癒やし効果が高い。すごくいいなぁ…。

 だんだんローズウッドも沸き立ち、ムスクに蒸されて、熱くとろける甘さとウッディな酸味がほわほわ…。静かな透明感もあり、決して煙ったりしない。視界は良好。酔ってないよ。


003 tree

top: pine, iris, grape fruit
middle: fir, oakmoss, patchouli
base: japanese cypress, leather, myrrh

 煙たくくすぶる甘い松。すっきりと刺激的でスモーキー。ムムムと主張するレザーはじっとして近づいて来ないので苦味はあまりない。
 レザーとミルラが合わさりぶわぁんってなるけど、グレープフルーツとアイリスでスッキリまとまっている。これがいい。ただ甘いだけだともっとベトッと貼り付くような重さがあるけど、この香りはさっぱりしていて煙たさも風味づけというかんじ。まとまりがとてもいい。

 甘さのない清々しさなら001だけど、こちらは重みがあり引き締まる。うーんこっちの方が好きかも。
 確か砂糖水に松の葉を付けておくと、葉に付いていた天然酵母が発酵してサイダーになるんじゃなかったっけ。そういう爽やかなイメージが浮かんでくる。

 後述するnoon rainもそうだけど、アイリス入ってるのが全く嫌じゃなくてすごい。私はアイリスがとても苦手でノートにあるといつも避けてしまうんだけど…fogの香水においては全く問題ない、大丈夫。むしろ好きになる。
 アイリスそのものが目立つことなく、やさしく全体をまとめ合わせ、カドを取ってなめらかに仕上げている。絶妙にしっとり、さらり。気持ちがいい。


004 red

top: jasmine, black currant
middle: rose, amber
base: frankincence, vetiver

 花、水、土、うねって沈む湿っぽさと積もる乾き。ちょっと独特な香り。ジャスミンとローズという魅惑のふたりがいるのだけど、ベチバーが目立つんだ。どうにも香ばしい香りが続くので、あんまりフローラルという印象がない。

 まず甘さ控えめなジャスミンとローズがぶわっと花開いて、カラントの甘酸っぱさが染み渡る。その後に独特な香ばしいようなベチバーが覆う。ゴマみたいだ。
 このむわぁんとした感じはローズ、でも蕾が小さいのでかなり控えめだな。ジャスミンはどちらかというとお茶のイメージが先に浮かぶ、たぶん甘さが弱いから。カラントで水分たっぷりなのが伝わる。アンバーと混じって甘いんだけど、やっぱり花の甘さじゃなくてフルーティな甘酸っぱさ。これもやはり控えめ。
 そのあとのベチバーの土臭さが強い。この独特さが強い…。水分が混じって茎の匂いもするんだけど、だんだんフランキンセンスの癖も出てきてやっぱり香ばしくなる。

 ジャスミンとローズは確かに咲いてるんだけど、それを覆い隠す勢いのベチバーのベシッとした土臭さ。カラントの甘酸っぱさと花の芳しさはそこに吸収されていき、少しの水分と酸味が残る。なんというかな…不思議だな…。ほんのり甘いような、花のふくらむ様子は伝わるけども、覆われて花が見えなくなる。


005 near

top: bergamot, tonka bean
middle: tobacco, black agar, amber
base: patchouli, vanilla

 さっぱりと甘いインセンス風タバコ。この含みのある苦さがいい。
 すっきりした苦みが走るシトラスがあって、それを邪魔しないパウダリーな甘さがふわふわ。これが油を感じる甘さだったらせっかくのベルガモットが台無しになるところなので、トンカなのが大変よい。
 そこからなめらかに繋がるタバコとブラックアガー。穏やかで格調高いウッディに続いていく。たまらない。バニラもそこに同調する。いつもなら癖のあるパチュリも邪魔をせず、演出サポートに一役買っている。

 タバコやアガーにやわらかい甘さが絡むから、ウードというよりインセンスと感じる。ラブダナムやサンダルウッドじゃないからその主張も強くなくて、ベルガモットですっきり、パチュリで雰囲気増し増しというかんじ。

 個人的にはもう少し甘さ控えめのほうがいいかな。でも好き。
 この手の香りって香水でもよくあるタイプだと思うが、そういう中ではこの005が一番好きだしずっと飽きない。こういう、重たくない、ベッタリしない軽やかさがfogの(精油の?)香水の良さだ。嫌味がない。


006 fir

top: cardamon, geranium
middle: clove bud, fir, tobacco abs.
base: black spruce, tobacco abs.

 セットの中ではこれが一番好き!

 これもタバコ系。トップはカルダモンにクローブがひんやり辛い!こりゃいい!夏向けだ。
 名前の「fir(ファー)」はモミの木、「black spruce(スプルース)」はマツ科のクロトウヒ。このウッディがスーンとした香りのベースとなっている。それにゼラニウム。タバコがほんのり脂っこく甘い。もう全部最高じゃん。いや〜いい。

 カルダモンの爽やかさ、少し陰りと湿りのあるクローブ、大好き。そしてその向こうからグググイと現れる、同じように対照的なゼラニウムとモミ。そしてタバコのふくいくたる香り!たまりませんな。
 甘くないところが推しポイントだ。せいぜいカルダモンとクローブから甘い雰囲気を感じるくらい。大変よい。トップがシトラスじゃないから爽やかすぎない。

 惜しむらくは、香りが軽くすぐ消えてしまう事。まさにタバコを一服嗜んだような、短い恍惚のときだった。もう一本つけるか。
 こういう感じの肌に乗せる香水もほしいな。甘くない爽やかさのあるタバコ系。


007 cassis

top: labdanum, lemon
middle: cassis, lemon, star anise
base: patchouli, frankincence

 カシスが甘酸っぱい。それにレモンで瑞々しいオープニングだ。スターアニスが沸き立ち、パチュリのひねった癖が全体に響き渡る。ラブダナムの甘さが沈み込んでいく。
 フルーティな甘酸っぱさが好ましい。パチュリの独特なスーンとした癖にスターアニスも重なっていくけど、ラブダナムが果実の甘さを一押しし、フランキンセンスが歪みを平らにするよう降り積もっていく。そしてレモンの軽やかな高音。
 ラブダナムとフランキンセンスのおかげか、だんだんコクが出てきて少しお酒のような雰囲気も。

 カシスとパチュリによる独特な酸味のある水分のかんじが独特。なんというか…唾液とか体液っぽさがある。変な表現で申し訳ない。
 パチュリが得意じゃないので、少し独特だなと思いつつもフルーティなところはよかった。すっきりしながらもコクや深みがあって、おしゃれでかっこいいかんじ。
 ただ、時間が経つといくつかの癖がえぐみのようになってずっと残ってしまった。よく嗅ぐと甘酸っぱいのもまだいるよ!って分かるんだけどね。


008 煙

top: tonka bean, all spice
middle: tobacco abs., vanilla
base: opopanax, sandalwood, vanilla

 甘いお香とタバコ。オールスパイスとサンダルウッドのコンビで、独特な刺激と雰囲気がモクモク出てくる。甘く上から降ってくるお香の香りと、刺さるタバコの苦み。煙った香りが重く沈み込むような、染み付いていくような。
 005はベルガモットから始まりブラックアガーでじんわりフェードという割とスッと締まった感じだったが、こちらはもっとお香が充満するような雰囲気。オールスパイスの刺激とオポポナックスのアーシーなくぐもりが、目に染みる煙のイメージに繋がっていく。
 レザーやチャコールのような燻したスモーキーさじゃない。仏壇にお線香あげたときって、ちゃんと「燃えてる」って匂いもするよね。あんなかんじ。煙の出処が見えてる光景だ。

 他所の家の匂いと仏壇の匂いが交じるイメージが浮かぶ。お香なのか線香なのか寺系のフレグランスなのかはわからないけど、玄関入った時にそういった匂いがする人の家ってある。あれにタバコの苦みが混じってるってイメージ。
 たぶん、サンダルウッドがちょっと得意じゃないので「人の家」というテリトリー外のイメージになるんだろうな。好きな香りだけど「自分ではない」印象になる。人から香ってきた方がしっくり来そう。


009 白

top: lemon, lavender
middle: white magnoria, fabric
base: ambrette seed

 ふんわり包み込むような柔らかい清潔感。レモンとラベンダーでキリッとしつつも主張は強くなく、他の香りたちが全部包んでいく。ほわ…と甘い。気持ちがいい。

 ひんやりしてるけど、くったり柔らかいかんじ…お気に入りのブランケットに頬ずりしたような。
 じゃあベッドやソファでくるまっているイメージかというと、レモンとラベンダーのリフレッシュする香りが洗剤とかハンドソープっぽくて、濡れてるイメージに繋がるからズレる。
 取り込んだ洗濯物を畳んでいるのならここまで甘く柔らかい必要はない。それならむしろ乾いてサラッとした質感のほうがいい。
 じゃあ洗濯してる最中かというと、マグノリアが甘く微睡んでるから、水仕事してるというかんじもしない。マグノリアの水感って留まってる水って感じで動いてないんだ。
 リラックスとリフレッシュがダブっていて、なんでだろう…どのタイミングなんだろうと思ってたら、説明文にありました。

「水通しした衣類が陽にあたった後の、あたたかな香り。」

 それだー!!だからひんやりと柔らかさどっちもあるのか…!あの甘さはおひさまの香りだったんだ。納得。解決。
 面白いなぁ…そうだそうだ、洗濯物干してるときって、冷たくビタッと貼り付く衣類をパンパンッと広げて、ポカポカジリジリ眩しい太陽にかざすようにハンガーにかけていくと、洗剤や柔軟剤の香りがしてくるよな。止まっているようでゆっくりと動く太陽の時間、せかせか動く自分、その中間にある冷たい洗濯物。
 わかる…ああいうときの洗剤の香りってなんか、気持ちいいんだ。洗濯物の濡れた冷たさと陽の降り注ぐ暖かさが気持ちいいんだ。

 あと、noon rain(後述する限定の香り)とちょっと似てる。どちらも「とりあえず」と言っていつでも付けられるかんじ(笑)。この009は特に清潔感があるから人や場所も選ばないし万能。優しくて良い。お気に入り。


010 occur

top: cyclamen, spearmint
middle: tonka bean, ambrette seed
base: laurel, rosewood

 まず植物の青い匂いに柔らかい甘さ、それとなんだか酸っぱいようなハーブ。それからスペアミントがバァーン!と来て、一瞬歯磨き粉の香り!と思ってしまうが、あ、いや甘いしほんのりウッディな香りするわと意識戻る。
 歯磨き粉なのは…スペアミントのインパクトと水分やハーブを感じるからかな。

 ちなみに一般的なシクラメンの花に香りはほぼない。シクラメンアルデヒドという合成香料(つまりシクラメンの花から抽出したものではない)があるけど、fogは精油だから生花由来だよなぁ…この青さがそうなのか、これがシクラメンのかほり…。昔祖母がよく育ててたなぁ。精油単体でも感じてみたいもんだ。

 目立つほど青々しいわけではなく、水分たっぷり吸ってる植物の茎のイメージ。爽やかというよりも湿っぽい。爽快感はみんなスペアミント、彼はとても声がでかい。あとはローレルさんの酸味。甘さはしつこくないので、食後や朝に付けるのが向いてそうだ。すっきり爽快リフレッシュ。やはり歯磨きの位置か…。
 主張の強いスペアミントが長く続く。あとからウッディの温かみがじわ…と出てくる。ミントがキンキンしてるけど、柔らかい甘みを通ってその向こうでウッディが少し滲み落ち着いていく。そしてローレルの酸味がふうっと吹き抜ける。風通しが良い。

 とにかくミントが気持ちいいね。うんうん切り替えにいい。


011 wind

top: 柚子、山椒
middle: 紫蘇、月桃
base: patchouli, oakmoss

 なっなんだこの香りは…!薬味…梅しそきゅうり…!(おいしい)
 柚子、紫蘇、山椒という薬味ラインナップなのでまあそう感じても仕方ないかもしれない。きゅうりを思わせるようなグリーンはないんだけど、たぶんパチュリのせいだろう。月桃はショウガ科のスパイシーで爽やかで独特な香り。うん、やっぱり薬味だったね。

 だんだんと柚子と紫蘇と月桃のツーンとスーンとしたトリオが研ぎ澄まされていく。植物!っていう青さと酸味が強いのだが、やはり食べ物イメージが付き纏う。草の酸味だと言われればそうなのだが強烈なので独特。
 fogの香りの中で、これが一番香りの主張が強いと思う。

 なんだこれ…こんなんアリか…。いやとてもいい香りなんだけどどのタイミングで付けたらいいんだろう(笑)。自分の想像の外にある香りだったので、付けたいと思うタイミングもまだ思い浮かばない。
 グリーンな香りと柚子の組み合わせって他にお気に入りもあるんだけど、これは…そういうのとはまたちょっと違うよな。

 説明文には「風に乗って山椒や紫蘇などの野の香りが窓から入ってくるようなイメージ」とあるのだが、そういう環境に暮らしたことがないので「なんだろこれ」の先には梅しそきゅうりが待ってるんだ。一番の原因は私が長いこと「香りといえば食べ物」な生活してきたせいだと思う。すいません。
 とはいえ香り自体は好きなのでちょこちょこ嗅いでいる。


012 core

top: cinnamon
middle: tonka bean, benzoin
base: sandalwood, spikenard, agarwood

 めっちゃシナモン!あの甘さと熱く辛い粉気、つなぎにベンゾイン、それから澄んだ甘さのトンカ、向こうから届くサンダルウッドとアガーウッド。そしてぎらりと姿を現すスパイクナード…。この砂漠の熱い風のような中に現れる植物の匂い。

 スパイクナードを知らないんだけど、癖のあるアーシーな香りとのこと。ツーンとしつつボソボソした土埃っぽいかんじがするので、これかも。植物の香りだと分かるけど水分はない。乾いている。

 初めて試したとき個性の強いシナモンだけが目立ってしまって、やたら熱いポカポカした香りだった。ほとんどの香りはそのシナモンに同調し、そのあとスパイクナードが出てきて、これがギラギラしてるもんだからシナモン軍と相容れない雰囲気になってしまっていた。
 もう一度試したときには、今度は特にミスマッチ感はない、砂漠の熱い風と巻き上げられる砂のようなかんじ。ツーンはどこへ消えた?あくまでアーシーな印象。サンダルウッドとアガーウッドのインセンスな風味、ウッディな落ち着き、どこまでも広がるドライな景色。
 甘さは控えめ。モクモクした粉っぽい煙の隙間にいる。熱い空気、刺さる風。とてもドライ。

 シナモンからサンダルウッドとこの雰囲気がずっと続くので、ちょっとしつこさはあるかもな。自分はブラックペッパーとかカルダモンとかスパイスも加えてみたい。爽快な風が吹くかも。


まとめ

 一般的な香水と同じように、しばらく置いたら香りが変化するだろうと思ってる。というか既に、最初に付けたときと最近とで感想がちょっと変わってきてる。苦手かも…という香りも全然いいじゃん!に変わる可能性もあるな。そうなったら追記するか別記事に書こう。

 ほとんどの香りが静かでスーッと…刷毛でまっすぐ色を塗ったように…消えていく。少し筋を残して。どれも軽くてくどくない。
 布製品に付けるから、香りももっと染み付くのかなと思ったけど全然そんなことなかった。オードトワレだしね。個人的にはとてもちょうどいい。

 良い意味で表現力に空白がある。その余裕と距離感が心地よい。一般的な肌につける香水だとこうはいかない、自分に同化したように香り立つから隙がなくて、時には息苦しく追い詰められるような気持ちになることがある。これは感覚過敏な私ならではかもしれんが…。
 香りとの距離だけじゃなくて、香りそのものに隙間があって、それは言い換えれば完成度が低いって捉えられてしまうかもしれないけど…でもそれが、「自分自身」じゃなくて「この場に内包される自分」を彩ってくれる。「自分を中心とした場」ではない。香りを纏っているのは自分なのにそうなっていく。こういう感性って日本人的というか、女性的な捉え方だと思う。共感性というのかな。同調するわけじゃないから平行に並ぶんだけど、それがよい。伝わるかなぁ…。

 あと不思議だったのは「ああ、わかる知ってる」って思う香りが多かったこと。精油だからなのかなぁ。香水の香料よりも、直接的な生々しさがあるよね。懐かしさとか親しみがあって、面白いね。


おまけ: noon rain(限定)

ambrette, peppermint, fennel, cyclamen, iris

 ペパーミントの強い爽快感にフェンネルのなんとも言えぬ好ましいあの香り(説明できないのでフェンネル買って嗅いできてくれ)。しっとりした様はシクラメンとアイリスで清潔感もある。スーッとしながら明るくなく、白く曇っていて、静かで柔らかい。
 アンブレットのなんとも心地よい甘さがあって、はっきり感じるほどじゃなくちょうどいい。服やタオルに顔を押し付けて感じるような「いい匂い」に近い。
 003で書いたように、アイリスがすべてのカドをとりなめらかにしっとりとまとめている。おかげで嫌味がなくどれかが出しゃばることもなく、美しいバランスを保っている。

 ”雨の香り”なんだけど、湿度のある重苦しさとは違って、シトシト降る雨を冷えた窓越しにじっと感じてるような。そういう心地よさ。 低気圧で具合悪そうな時にもスーッとして気持ちがいい。よい…。

 夏の重苦しい湿度にもかなり効く。ムシムシした屋外でもドライヤーの熱風浴びてるような屋外でも、冷房ガンガンに効いた駅ビルの中でも近所のスーパーの中でもどこでも似合う。何しろ清潔感があるので009と同様に場所を選ばんのだ。香りが変に主張しないし、ミントが涼しくてとっても気持ちがいい。
 いやーほんと買ってよかったな…。マジでいつでもさっぱりしっとりさせてくれて良い、助かる。

 DIPTYQUEのオルフェオンや、LABORATORIO OLFATTIVOのデコベールと重ねてみてもよかったよ。似たような清潔感や柔らかさ、甘さのある香りが良さそうだ。

 部屋に飾ってる”雨乞いモビール”にも吹き付けて楽しんでる。 部屋がうっすら、ほの甘く、シンと静まるんだ。

蒸し暑い夜にもおれにも似合うケロ

 以上です。
 9月には013と014の新作2種が出る予定だそうだ。楽しみ~。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?