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WEリーグはもっと娯楽性を!

先月、WEリーグに関して次のような記事が公開されていた。

https://news.yahoo.co.jp/articles/31fe6f32d39687a1d3d373efb697157cf74a1aa8

観客数が伸び悩んでいるという内容に対して、Twitterではネガティブなコメントが多く見られた。1試合平均の観客者数が約1800人というのはリーグが掲げる1試合平均5000人には程遠い数字だ。だが、あまり悲観する必要はないのではないか。まだ1年目なので、これから試行錯誤しながら盛り上げていけば良い。

それよりも気になったのが、記事で紹介されている野中・リーグ専務の「危機感を感じている」というコメントだ。この発言に、WEリーグの抱える問題点が凝縮されているように思えてならない。

先月29日、サッカージャーナリストの宇都宮徹壱氏とお笑い芸人の梶田ガクシ氏によるTwitterのスペースにリスナーとして参加させていただいた。そこでスピーカーの方が「WEリーグは楽しそうじゃない」といったことを発言されていたのが、とても印象に残っている。

そう、いまのWEリーグ、もっと言えば日本の女子サッカーに足りないのは、エンターテインメントである。以前からなんとなく感じていたことだが、日本の女子サッカーには娯楽とは程遠い雰囲気が漂っているように思えて仕方がない。

選手や関係者のインタビュー記事では「危機感」「不安」といった言葉を目にすることが多い。もちろん、危機感を持ちながらプレーするのは大事だ。これまでの女子サッカーの歴史を振り返れば、責任を背負うのは当然のことだろう。だが、そういうことは選手や関係者の間で共有すれば良いことであって、事あるごとに公の場で発言するのはいかがなものか。

WEリーグの公式ガイドブックで、ある選手がインタビューで「WEリーグが発足すると聞いたときの心境はどうでしたか?」と聞かれて「正直に言うと、漠然とした不安のほうが大きいです」と答えていた。

念のため断っておくが、その選手のことを責めるつもりはない。不安のほうが大きいと言うのは、偽らざる気持ちなのだろう。しかしながら、ファン向けの媒体でそう言うことを口にするのは適切ではないし、それをそのまま掲載するWEリーグの姿勢にも疑問を抱く。一般企業の場合、担当顧客の前で「不安です」などとは言葉は口が裂けても言えないはずだ。

WEリーグだけの問題ではない。メディアの側にも、女子サッカーにはいわゆる苦労話を求める傾向がないだろうか。「選手は苦労しながら頑張っています」といった、お涙頂戴的な記事が目立つ。

WEリーグは、プロサッカーリーグである。プロであれば、あくまでも娯楽性を最も重視してほしい。

リーグは「女子サッカー・スポーツを通じて、夢や生き方の多様性にあふれ、一人ひとりが輝く社会の実現・発展に貢献する」という理念と「世界一の女子サッカーを。世界一アクティブな女性コミュニティへ。世界一のリーグ価値を」というビジョンを掲げている。女性の社会進出が大事であることは、言うまでもない。

だが、それ以前に大事なことがある。プロサッカーはエンターテインメントであること。そして選手たちは、お客さん(ファン)に娯楽を提供するエンターテイナーであるということだ。選手や関係者には、待遇や環境の改善を訴えることは別として、「危機感」「責任感」「重圧」といった言葉は、出来れば公の場ではあまり使ってほしくない。冒頭で触れた、野中専務がメディアに対して危機感という言葉を使ってしまうのは、顧客目線が欠けていることの証左ではないか。

「プロサッカーとは娯楽である」ということをWEリーグに関わる人全員が認識すること。それこそが、女子サッカー人気獲得のカギだ。