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もっとも星が見える島

寒さから逃れたウサギとカメは、南ぬ島石垣空港へ足を踏み入れた。朝早くの空の旅にウサギの瞼は重く、細い指で目をこすりながらも、島の暖かさに心を開いた。「ああ、暖かい…」彼女の声は、重ね着のコートを脱ぎながら、小さな喜びに満ちていた。その姿を見てカメは静かに微笑んだ。「やっと楽園に着いたね」

カメはウサギに、さらに遠い島への冒険を提案した。「この島よりも、もっと遠くへ…」彼女は彼への信頼を胸に秘め、うなずいた。暖かく、美しい南の島なら、どこでも彼女は受け入れられた。だが、予想だにしなかった試練が、二人を待ち受けていた。

「これは、一体どういうこと?」ウサギの声には、ほんの少しの不安が滲んでいた。全方向から船におしよせる大波に飲まれないように、彼女は船の手すりにしがみついた。
「船旅には冒険がつきものだね」と、カメも動揺を隠しきれずに、手すりを強く握った。

波照間島に着いたとき、二人は少し疲労を感じながらも、共に乗り越えた冒険を心に刻んでいた。「帰りも同じなのかな?」ウサギが小さな声で尋ねると、カメは波を見つめ、「今夜はここに留まることになるかもしれないな」と静かに答えた。

「このまま海が荒れていたら、帰りの便は欠航になるかもしれないと言われていたんだ」とカメはウサギに説明した。「でもね、もしこの島で一夜を過ごすなら、思い出に残る特別な夜になるよ。なにしろこの島は、日本でもっとも星を見ることのできる島だからね」と、カメは今はまだ青い空をゆっくりと見上げながら、彼女に囁いた。

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