月星真夜(つきぼしまよ)

風を感じながら走るのも、異国の香りや風景を自分の中に刻むのも好き。けれど、そんな冒険の…

月星真夜(つきぼしまよ)

風を感じながら走るのも、異国の香りや風景を自分の中に刻むのも好き。けれど、そんな冒険の合間には、図書館で本のページをめくる音や、美術館で絵画に向かって深呼吸する静けさが、私の心を落ち着かせてくれます。日々の中にある小さな奇跡を、いつも感じられる心を持っていたいな🍀 ̖́-

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ウサギの自己紹介

こんにちは!元気いっぱいのウサギです。 いつも読んでくれてありがとうございます。ここで自己紹介をさせてくださいね。 私はいつも何か新しいことを見つけては、ワクワクしながら飛び込んでいます。「退屈」という言葉は私の辞書にはありません。時に人は私をちょっと無謀だと思うかもしれませんが、私にとって毎日は楽しい冒険なんです。 夜明けって素敵だと思いませんか? 新しい一日が始まるあの瞬間、目覚める世界の音を聞くのが大好きなんです。その時、今日一日に何が起こるのかなんて、誰にもわから

    • 協力か それとも犠牲か

      その日、ウサギとカメはロードバイクに乗って名栗湖周辺を疾走していた。カメは前を走りながら、時折振り返ってウサギの様子を確認した。彼女は遅れることなく、しっかりとカメの後ろをついてきていた。風の抵抗を少なくするために、二人は20センチの間隔を保ちながら、先頭を交代しながら走っていた。 「近藤史恵さんの『サクリファイス』を読んでいたら、久しぶりにロードバイクに乗りたくなったの」と、誘ったのはウサギだった。カメはその突然の提案にちょっと驚いた様子だったが、すぐに笑って頷いた。

      • 海と星空の冒険

        その日、夕暮れの図書館の中庭はオレンジ色の光に包まれており、静かに本を読むカメの背中を照らしていた。彼は分厚い本に視線を落としながら、いつも通りの穏やかな表情を浮かべていた。そこへウサギが軽やかにやってきて、彼に声をかけた。 「カメくん、ウサギのティースプーンへのメールありがとう。そのことでちょっと聞きたいんだけど、北海道まで泳いだって、あれは本当なの?」ウサギは、ずっと心に秘めていた疑問をそっと口にした。 カメは目を閉じ、静かに記憶をたどりながら話し始めた。「そう、あの

        • 水しぶきとの抱擁

          「おはようございます!今日もウサギのティースプーンのお時間がやってきました」と、ウサギはいつものようにラジオ番組を始めた。今日のテーマは「旅のびっくり体験談」で、リスナーから寄せられた様々なメールを前に、彼女の声は弾んでいた。 「次にご紹介する体験談は、ラジオネーム『図書館大好きなカメ』さんからです。『僕のびっくり体験は、青森から北海道まで泳いだことです』とのことです。えっと、北海道って泳いで行けるんでしたっけ?」ウサギは珍しく言葉を詰まらせた。彼女は頭に疑問符を浮かべなが

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        • 異国への旅のお部屋
          8本
        • 読書のお部屋
          17本
        • ティースプーンのお部屋
          4本
        • 宇宙のお部屋
          13本
        • スイーツのお部屋
          8本
        • 映画のお部屋
          6本

        記事

          しずくのぼうけん

          今朝は雨が降っている。ウサギは部屋の窓辺に座り、じっと雨の音に耳を傾けていた。彼女の目の前で窓ガラスを伝う水滴は、それぞれが小さな旅をしているかのようにゆっくりと動いていく。窓から見えるいつもの景色は、雨の日は少し特別に見える。彼女は、そんな雨の日が好きだった。 ウサギはふと思い出したように、本棚から一冊の本を取り出した。「雨の日に読むなら、この本だね」と彼女は呟いた。その本の表紙には、一輪の赤い花を空に掲げながら微笑む「しずく」の姿が描かれており、手書きの文字で、マリア・

          燃える本と濡れる本

          8メートルもの高さを誇る巨大な本棚が、まるで魔法によって作られたかのように、ウサギとカメの目の前に立ちはだかっていた。しかも本棚に並んだ本たちは、メラメラと炎に包まれながら、美しい輝きを放って次々と燃えていた。そしてその景色も束の間、つぎの瞬間には滝のように降り注ぐ雨が、瞬く間に本を濡らしていった。そのあってはならない光景に二人はただ呆然と立ち尽くしていた。 二人の目の前では、やがて巨大な樹木が根を下ろすと、空から無数の本がパラパラと降り注ぎ、空っぽだった本棚を瞬く間に満た

          燃える本と濡れる本

          海と砂上の楼閣

          その夜、ウサギとカメは首都高速道路を走り続け、羽田空港に向かっていた。「今日はアースディね。異国の地と会話ができるような場所に行きたいわ」図書館からの帰り道にウサギが呟いた。そんな彼女に、カメは静かに提案した。「空を舞う飛行機を見に行こうか?」 二人がたどり着いた国際線ターミナルの展望デッキは珍しく人がまばらだった。ゆっくりと滑走路に目を向けると、異国の航空機が地上から離れる瞬間を捉えた。「見て、あの飛行機はどこの国へ行くのかしら?」ウサギの問いは空中に溶け、二人はその飛行

          おおきな木

          その日、ウサギは足元に視線を落としながらカフェに辿り着いた。ひとつ小さく息を吐くと、何かを吹っ切るようにドアを開けた。店の奥で本に視線を送っているカメの姿を見つけると、彼女は少しだけ笑みを浮かべた。 カメの前に座ったウサギは、しばらくの間、ページをめくるカメの指を見ていた。やがて「優しい気持ちになれる絵本が読みたいわ」と独り言のように呟いた。彼はゆっくりと視線を上げると、ウサギの瞳を見つめた。 カメは読んでいた本を静かに閉じると、一冊の本をリュックから取り出した。ウサギが

          あの頃を思い出す街

          その日、ウサギとカメは下北沢の街を訪れていた。東口改札口を抜けたウサギは目を見張った。「駅前がずいぶん変わったわね。小田急線の改札も、井の頭線の改札も、以前はもっと迷路のようだったわ」 二人は慎重に周囲を見回しながら足を踏み出した。街にはなんとなく懐かしさを感じさせる景色が残っていた。路地には昔ながらの古着屋が軒を連ね、その個性的なファッションが風に揺れていた。 一方、雑貨屋の店頭には奇妙な形のオブジェが並びふと目を奪われる。街全体にカオスと整然とが混ざりあい、そこはかと

          あの頃を思い出す街

          未知者との交差

          映画館のシアター7のスクリーンで「ゴーストバスターズ/フローズン・サマー」のエンドロールが終わり、ゆっくりと出口に向かっていたウサギがぽつりと言った。「最後に流れた『新しい学校のリーダーズ』のMV、すごく斬新だったと思わない?」 映画館を背にして、夜の空気を感じながら、ウサギは隣を歩くカメに話を続けた。「未知の存在と冷静に向き合うのは、私には難しいと感じたわ。だからかしら、15歳のゴーストバスターズの少女が16歳のゴーストとチェスをしながら仲良くなるシーンがとても印象に残っ

          ギリシャの兵士のように

          その日、ウサギとカメは駒沢公園のランニングコースを軽やかに走っていた。二人は一心不乱に5周回した後、給水のために小さな休憩を取ることにした。ウサギがペットボトルのキャップを開ける音が静かな公園に響く中、ふと彼女は話し始めた。 「ねえ、マラソンの原点って知ってる? 私はマラソンの始まりの地を走りたくて、アテネにある古い競技場へ行ってきたのよ。それはもう、歴史を感じる神聖な場所だったわ」とウサギは目を輝かせながら語り、カメは静かに水を飲みながら、その話に耳を傾けた。 カメは静

          ギリシャの兵士のように

          逃げられなかった二人

          図書館中庭のテラス席で目を細めて空を見上げるウサギは、春風に髪をなびかせながら、かつての冒険を、もう一つ思い出していた。「ポンペイの遺跡を訪れたときのことも忘れられないわ。火山灰に埋もれていた古代の街。あの時も私は、考古学者になる夢を膨らませていた」 カメは静かに彼女に視線を送った。「確か少し前に、ポンペイの遺跡で保存状態の良い戦車が発掘されたね。紀元79年のヴェスビオ火山の噴火により一瞬で火砕流の下に押し隠されたポンペイの街で、長い間、重い灰のベールに埋もれていたその街の

          逃げられなかった二人

          古の風を読み解く人

          その日、ウサギは図書館の分類番号242の書架の前で腕を小さく組みながら、エジプトに関する本を探していた。やがて書架から一冊の本を抜き取ると、自動貸出機で貸出処理をした後、中庭に足を向けた。 中庭に辿り着いたウサギは、テラス席でゆっくりとページを捲っていたカメに、ぽつりと話し始めた。「ある時、私は考古学者になりたかったの。カメくんがサピエンス全史の話をしていた時に思い出したわ」 カメが静かに先を促すと、「学生の頃の私は、何よりもこの広い世界を自分の目で見たくてたまらなかった

          自分なりの感性で

          ライブの帰り道、まだ興奮が冷めやらないウサギは推しメンマフラーを首に巻いたまま、ふと口にした。「私はある時、音楽の世界で生きてみたいと思ったの。そこで、音楽の都ウィーンへ旅をしたわ」 彼女の横を歩いていたカメは、静かに驚きを感じていた。「初めて聞いたよ。ウィーンで音楽の勉強をしたんだね」カメがそう言うと、その言葉を聞いたウサギは、「言葉が通じない世界で音楽を勉強することは考えていなかったわ。私がしたことは、音楽の息吹に触れることだったの」と、慌てて首を振った。 「そうなん

          星を観るために出来ること

          その夜、ウサギとカメは街の灯りから離れ、小高い丘から夜空を見上げていた。周りを静寂がそっと包み込む中で、二人は星の光に導かれるように無限の宇宙へと思いを馳せていた。まるで星々のささやきが聞こえるかのように言葉を交わさずに、ただ静かに宇宙の広がりを感じていた。 「ウサギさんは知ってるかな? もうすぐ南米のチリに、世界で最も高い場所に建つ天文台が完成するんだよ。その標高はなんと5,640メートルもある」と、カメは星に目を奪われながら静かに語り始めた。 「確かに、高い場所ほど星

          星を観るために出来ること

          確率という名の夢物語

          エンドロールが流れ終わり、シアター10の扉を抜けたウサギとカメは、未知の惑星から帰還した宇宙飛行士の気分だった。「デューン 砂の惑星」に描かれていた壮大な宇宙の物語は、地球とは異なる星の生命体を二人の脳裏に思い描かせていた。 ウサギはゆっくりと歩きながら、春の星空を見上げた。「地球以外にも生命体がいるかもしれない。そう考えると、星がいつもと違って見えるわ」と彼女は呟いた。隣を歩いていたカメも、彼女の視線の先を見つめた。「他の星に地球外生命体が存在する確率は計算できるらしい。

          確率という名の夢物語