2/17、新宿の目自動筆記

イベント梯子して頑張った気になったので新宿の目に挨拶に行ってきた。目は埃をかぶっていた。瞳の中のひとつひとつの模様に指を這わせて泣いた。少し叩いても光りもせず叩く音も地下に吸い取られていった。当然回ったり別の部屋に続いてるわけでもない。

でもこの目は、わたしが愛する場所に置いてきたわたしのもうひとつの目なのだと、わたしは信じてやまない。この目にふれるたび、わたしは何かを見るのだ。見つけるのだ。見出すのだ。なんでもっと早く思い出さなかった?鳩は寝る時間を過ぎても黒い顔で夜歩き傘で我が身を隠して住まう人ふたりはきっとわたしの目をあいしている。

ねえいつか忘れたけど光ってたの。私もあなたもあの目も。光ってたよ。人の目はひかれるしあなたの耳もひかっている。そういうひかりをたよりに、目を凝らしてわたしはわたしが生きててもいいかをわかろうとしたんだ。わたしがこの汚い街を好きな理由。ひからなくても目がそこにいてくれる、から。

新宿の目はもうひからない。変わってしまったしばらくを思って、変わってよかったあらゆるを忘れて、わたしはすこし泣いた。

愛のために走れなくなっても赤信号は真っ赤になって待っていてくれるし2時間前から歩き始めるんだよ。ゆっくりでも歩くんだよ。到着するまで。早くなくてもどうせ待っていてくれる。思い出の映画流さないで!銀のスプレーは思ったより残っていなかった、排水溝にぜんぶすてた。あの時もこんな気候だったのかなあ?そしていつでもわたしはこれで最後これで最後と思いながら甘い何かに手を伸ばす。最後という言葉がすべてをゆるしてくれる呪文のように。特別扱いをしてほしいと祈る時の手で。ほんとうはそんなものもらっても、ちっともうれしくなんかないくせに。

壁やめてみたの。たまには決壊。気持ちよかったよ。人との間に固い壁を作るとラクだけどわたしには薄味すぎて、何も感じとれなくなりそうでこわいよ。いま、肌が空気を感じているよ。迷惑はかけないからゆるしてよ。疲れたら休むからゆるしてよ。ラクな生き方の橇の乗り心地が怖くて、雪の上に転げ落ちた方がしあわせな時間だってあるんだ。あなたはきっとゆるしてくれるし、それを押し付けた覚えはないと言うだろう。

春の匂いに狂うわたしに月まで届くほどの大声でおかえりなさいって言え、言ってくれなきゃ許さない。言ってくれなきゃ、走馬灯に出してやんない。お前のシーンは全カット。なんでもするから、優しい声で、おかえりなさいを聞かせてほしい。

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