ひのはらみめい

精神科の訪問看護をしながら物を書いたり読んだり好き勝手やっています。文鳥が好きです。

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精神科の訪問看護をしながら物を書いたり読んだり好き勝手やっています。文鳥が好きです。

最近の記事

なんでそんなに自信があったんだろう。

なんでそんなに自信があったんだろう。 なんとかなると思ってた。なんとかなると思うので精一杯で、たぶん毎日台風みたいな自分の脳内のいろいろをやりすごすので精一杯で、いそがしくて、とりあえず深く考えずに「ほしい」と思ったら近づいて、抱きしめて、「なんとかなる」と思ってたんだろう。 将来をきちんと見越して悲観していれば、多分看護師にはならなかった。「体が不自由になるかも知れない、そしたら看護師なんてできない」とかって、思いもしなかったのだ。それどころじゃなかったから。好きな男と

    • あたらしいさんすう

      小学校とかの教科書のタイトルに「あたらしい」がつくことが謎すぎて、何と比べてあたらしいんだろうといつも思っていた。なんでそんなことをきゅうに思い出したかというと新しくて軽いパソコンを使い始めたから。長い文章でもかいてみるかと思ってタイピング練習がてらTwitterに入りきらなさそうなつぶやきをここに意味なく散らしてみようと思ったのだった。 愛情が濃い人や内省的な人の文章にすごく惹かれてしまう。ついつい読んでしまう。どうしてこんなにも文章が上手なんだろう。たぶん頭の中で「こと

      • 地元の映画館がなくなる

        地元の映画館がなくなる。寂しい。受験をとりあえず終えて、まず行ったのは映画館だった。「マリーアントワネット」。初めて一人で映画を観た日だった。その日、映画に行くということも、行ったということも誰にも言わなかった。私が親の許可や干渉なく一人で好きなことをした、初めての日。独立記念日。 子供の頃、映画館の外の階段の下まで並んで幼馴染とその母親と3人でポケモンの映画を観た。幼馴染の男子は3歳の頃からの付き合いで近所の子だったが、いつも意地悪をするので大嫌いだった。妹を不慮の事故で

        • 2/17、新宿の目自動筆記

          イベント梯子して頑張った気になったので新宿の目に挨拶に行ってきた。目は埃をかぶっていた。瞳の中のひとつひとつの模様に指を這わせて泣いた。少し叩いても光りもせず叩く音も地下に吸い取られていった。当然回ったり別の部屋に続いてるわけでもない。 でもこの目は、わたしが愛する場所に置いてきたわたしのもうひとつの目なのだと、わたしは信じてやまない。この目にふれるたび、わたしは何かを見るのだ。見つけるのだ。見出すのだ。なんでもっと早く思い出さなかった?鳩は寝る時間を過ぎても黒い顔で夜歩き

        なんでそんなに自信があったんだろう。

          笑えるほどシに取り憑かれていた

          あまり自分の創作活動以外での身の回りのことを身元が特定できる形で言わない方がいいのだけれど、今年後半は仕事的に地盤がグラグラ、毎日ヒヤヒヤ、ドタバタ、であった。自分のメンタルとかからだとかが原因で自分の仕事環境がグラグラすることは経験あったけれど、今回は自分個人のことじゃなかったので新鮮に真っ暗な戸惑いと船酔いの中を彷徨っていた。 脳がいつでも120%フル回転、気分は諸葛亮孔明。どうしたら自分や自分が守りたい人が安全でいられるか、そのために闘っていた。 KSJ、Kotob

          笑えるほどシに取り憑かれていた

          12月1日、

          ああわたしがこのあたりで働き始めて、3回目の12月1日がきました。初めての12月1日は、まだ傷ついていて、今より6kgくらいは細くて、おどおどしていたわね。教会のバザーで母かおばさんが買ってくれたみどりいろのコートにくるまって、小さなねずみみたいに、部屋の隅で低い丸太に腰掛けて。 その頃のわたし、何もわかっていなかったわたし。とりあえずいい子のふりをして、他人への恐怖を隠して笑顔で接して、好きもしくは怖いと思えば一生懸命懐いて、自分を犠牲にして、一切の他者からの求めに断りを

          セイレーンは歌を歌う

          セイレーンは歌を歌う 涙を流しながら 悲しい時つらい時寂しい時に セイレーンは歌を歌う セイレーンは自分のために歌を歌う 誰にも聞かせない 自分だけのための歌 かつてこの歌声は多くの人を癒し 多くの人に愛された 唯一無二の歌声であった ただセイレーンに感情を寄せるあまり 憎しみをぶつける者も少なからずいた もっと悪いことに セイレーンのうちなる喜びは 承認という薬物が歪に肥大させて セイレーンの心をことあるごと乱した 誰かに聞いてもらえる歌こそ価値があって 誰も聞いてくれ

          セイレーンは歌を歌う

          デッサン#2 外干しのオダギリ

          仕事が終わって疲れ果てた状態で駅から家までの道を歩いていると、かならず目に入る場所がある。 白っぽいざらざらした外壁の二階建て、横に長い小さめのアパートの一室のベランダ。 一階のはじっこのその部屋にはだいたいいつも洗濯物が大胆に外に干してある。 狭いけれど二車線はある道路に面しているアパートだ。その部屋のベランダから少し手を伸ばせば、外を走る車の窓から顔を出す犬の鼻にタッチできるだろう。私だったら絶対ここに住んでも洗濯物を外に干さない。なぜかって、干したそばから飛ばされるにき

          デッサン#2 外干しのオダギリ

          デッサン#1 絵里ちゃん

          アパートの反対側の端っこの部屋に住んでいた若い女の子が引っ越した。 その子は私が住む前からもうすでにそこにいて、名前を絵里ちゃんといった。 絵里ちゃんは置き配を好んだ。 私が絵里ちゃんの名前を知ることになるのも、置き配の箱にちんまりと宛名が書かれていたからであった。風に飛ばされて共用廊下をスライドしてきたアマゾンの箱を絵里ちゃんの部屋の前までこっそり運んでやったことで、私はそっと、絵里ちゃんの名前を知った。 絵里ちゃんはたまに部屋の中でひとりで歌を歌っていた。のびやかで歌手み

          デッサン#1 絵里ちゃん

          ここにたしかにツタヤが

          ここにたしかにツタヤがあったんだよ 何年か前に潰れてしまったけれど 家から30分かけてここまでよく歩いたよ 建物の上につづく短い斜面を上ると駐車場があるんだ 今は外の形だけまもって お菓子も売ってるドラッグストアになってる ここにはほんとうによく来たよ 仕事を終えて晩御飯を終えたあとの散歩で ぐんぐん歩いているうちにいつのまにか着いてしまうんだ 必ず同じ道を通ってしまうので きっと靴を履いた時点でわたしたちは DVDを借りてお家で見たいなと思っていたのかもしれないけれど そ

          ここにたしかにツタヤが

          19時過ぎのカゲロウ

          タイトル詐欺である。 ただプールに行ったというだけの記録。 一昨日、予告通り休日にプールに行った。プールはすいていた。ひとしきり泳いで筋肉の羽が生えたところで入れ替わりに子供たちがドヤドヤと入ってきて、帰りに古書とグラノーラの店に入り山本直樹の漫画を買った。グラノーラを食べてすぐ寝てしまい今さっき漫画を読み終えた 「YOUNG and FINE」というタイトル。 山本直樹の漫画はエロいが単なるエロしかないわけではない、と思っている 狂気に堕ちる寸前のような、スレスレの

          19時過ぎのカゲロウ

          7秒間で吐き続ける日の呼吸月の呼吸花呼吸朽ち呼吸

          8/14、日曜日。 まとまった文章がなかなか書けないでいる。 3分の詩を書いては「長えな」とぜいぜい息切れしている程度には文章が書けていない。 とはいえ、「人とうまく喋れないんです」と自身のことをつらつらと取り留めなく隙間なく話せる利用者さんに向けて「いま喋れてるであんた」とツッコミ入れたくなる現象というものがあり、坂口恭平氏も「人間、自分のことならいくらでも書けるもんだ」的なことを言っていたりしていたような気がするから、この頭使わなくても書けるし読める文章もまた息切れする

          7秒間で吐き続ける日の呼吸月の呼吸花呼吸朽ち呼吸

          ハーデンベルギア

           カナコはゆっくりと、しかしきちんと「主人」のほうに向き直って言った。 「本日でわたくしと高田様の契約は終了となります。ご安心ください。わたくしにインプットされている全ての個人情報はこの後ただちに中央センターにて消去の手続きが行われます」  いつも通りの低めの声でカナコは言った。一昔前の、走行音が静かだと評判であった自動車のような涼やかな機械音が「主人」である高田氏の鼓膜をくすぐった。初めてカナコを自宅に迎え入れたときにはこの機械音にも慣れなかったなと高田氏は回想した。 「あ

          ハーデンベルギア

          アイドル小説「Fake&true 虹の麓」

          お待たせしました! 実に自分史上最長となってしまったアイドル小説がほぼ完成に近づき、11月の文学フリマならびに通販で発売できそうな機運になったので、試し読みを投稿していきたいと思いマーーーーーー酢!!!!! この小説は完全フィクションではありません。わたしがちょっとだけ所属していたアイドルグループ「虹色じゃむ2020」がモチーフになっています。メンバーカラ―とか性格とかから、この子はあの子がモデルかな??とか想像して楽しんでもらえたらうれしいです。アイドルの実情、裏話、苦

          アイドル小説「Fake&true 虹の麓」

          あたまからっぽにっき

          テープ貼るのうまくなるにはどうしたらいいんだろう。 不器用だった。ずっと不器用。どうして周りのみんなはまっすぐにテープを貼ることができるのかわからなかった。自分を責めることにかけてはプロフェッショナル仕事の流儀である。いまもそうだ。 頭の中にわらっちゃうほどなにもない。どうしたらいいかわからない。以前は考えていることがたくさんあったのに。わざと、自分を圧迫するほどの観念を頭から消去しているのかもしれない。20代のころは頭の中をツイッターのフォロワーの名前や興味のない歌、ど

          あたまからっぽにっき

          狂気の値段

          狂気の選り好みは是だろうか? 狂気だけで、身を捩じ切るようにして作品を作る人がいる。 人々は狂気をもてはやすけれど、好きなタイプの狂気じゃないと「気持ち悪い」「意味がわからない」「不快」と言ったりする。その人にはそれしか生めない、人生の一部、命の一部の狂気であっても、読者からは選り好みを受ける。 その人の狂気はその人そのものであり、その人はそれしか生み出せないかもしれないのに。 狂気で創作をすることは恐ろしいことなのかもしれないと思う。 たとえば、ラーメンしか作れない店で