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整頓屋       

「もし、あと1ヶ月で死んでしまうとしたら貴女はどんな行動をするんだろう?」

整頓屋さんと名乗るその女性が私の顔をジ~と見ながら語りかける、整頓屋なんて聞いたことがないけど、つい最近旦那の転勤で引っ越しをしたきっかけで大家さんが紹介してくれたのだ

「なんでも屋さんっていうか、困ったことあれば相談してみなよ〜」

街の外れにある雑貨屋さんの奥で話しをした
私より少し若い女性がきつねのカブリモノをつけたまま真顔で話しを聞いてくれている
カブリモノを突っ込んだほうが良いのか?相手が真顔なのでファッションとしてやっているのかも知れないからそっとしておいた

悩みは実家にいる今年30歳になる弟が今だにニートで引きこもりだったり、両親がソレを放置して
いるから心配であるけど、こちらも家庭があるどうしよう?と相談した時に問いかけられたのだ

子供を大家さんに預けたままなのでとりあえず家に帰る。

宿題 もしも1ヶ月の命なら何をする?


子供が泣き出した
子供はまだ言葉が話せないので、お腹が空いたとか、トイレに行きたいなどすべてにおいて泣くという手段で私に伝えるのだろう。対応というか世話をすると泣きやむし、笑ったりもする

大人になった私は、どうやって気持ちを伝えれば
相手が理解して行動に移してくれるのかしら?

思春期の頃、家に居たくなかった。両親が不仲で
口を開けば喧嘩ばかりしていた。喧嘩がなくなると冷戦状況となり、お互いの言い分を主張しあうと落とし所がみつからないらしく、母は感情のコントロールが効かなくなっていく

基本的に機嫌が悪い、何をしてもイライラしているようで、私がかまってほしくて話しかけると、
「あんたはお姉ちゃんなんだからしっかりしなさい!」とか自分が出来ない家族の役割を押し付けてくる。

それでも極まれだけど、私の好物のコロッケを買ってきて

「あんたは私の子供だよ、お父さんは他人だけどあんたは私の子供なんだぁ」

母は孤独な自分の心を慰めるように私を利用する

気分が良い時だけ子供に優しくするのはやめてほしいと思っていた。いっそ大嫌いになったほうが気持ちがスッキリするのになって子供ながらに思っていた。

幼い弟はそれが当たり前として過ごす事で

常に人の顔色を伺う事が生き残る術となった

年齢を重ねて行くにつれて、自分の居場所を探すように家を出て、近所に住む親戚の家を頼りにする 貧しいながらも私を面倒みてくれた、おばちゃんは私を本当の子供のように育ててくれた。

優しいおばちゃんの気持ちに答えたくて必死に勉強した、テストなどて良い点をとれば誉めてもらえるからだったし、夢中になって勉強していれば
嫌な事を考えなくて済むからだったんだ

東京の大学へ行く
色んなしがらみから脱出したくて東京へ行く事にしたら、凄くスッキリした。アルバイトをせっせとこなしながら過ごす日々は充実していたが、おばちゃんの仕送りを意地を張って断り、とにかく自立を目指す

私もう子供じゃないし、何とかやっていける!


二十歳そこそこの私はいつもお腹が空いていた。
朝のアルバイトを終えても、また違うバイトをして単位を落としたくないから勉強をする

大学で同い年の娘達は優雅にサークル活動などをしてらっしゃる。田舎から都会へ出てきて親の仕送りで楽しそうに遊んでらっしゃる。

別に、羨ましいなんて思わないもの人は人、私は私だから


アルバイトの給料日まで後3日ある、シーチキンの缶詰一個をおかずに過ごさねばいけない!
ぁ~大学で唯一仲良くなった友達が流行りのタピオカミルクティーを誘って来た時に、しっかりと断われば、他のおかずが買えたのになぁ、

近所の弁当屋

大学の周辺に学生向けの安い食堂やら弁当屋さんがちらほらある、中でもお助け海苔弁とみんなから神扱いされていた200円で買えるお弁当は毎日のように買いに行く 

「おいちゃん!お助けちょーだい!」

弁当屋のおいちゃんは多分父親くらいの年で1人でせっせとお弁当を作っていた。200円の弁当を
大量に作っている正直儲かっているとは思えない

お助け弁当すら買えない状況だったけど頼れる場所がないから、カルキ臭さい水道水で飢えをしのいでいた

「おーい」

弁当屋さんの前をフラフラと歩いていたら、おいちゃんが手招きする

「なんだか、今日は売れ残っちまったからさ、捨てるくらいなら勿体ないから良かったら持っていきなぁ!」

売れ残るはずのない激安弁当しかも、私の大好物のコロッケまでのせてくれていたのだ

鼻の奥がツンとしてきたのを必死で堪えながら、精一杯の笑顔で感謝をした記憶が蘇る


★ お助け弁当のおいちゃんに逢いたい

★ 育ててくれた親戚のおばちゃんに感謝を伝えたい

死ぬまでにやる事を箇条書きにしてみたら
何よりも子供を安全に育てたい!が1番優先事項となっているが、自分の子供を誰かに頼めるような関係性はほとんどない事に気付く。

引っ越したばかりの大家さん夫婦はお子さんは成人して都会へ出ていったみたいで世話をやくことが楽しみだと言ってくれたが、そうそう迷惑をかけれないだろう

とにかく思いつく限りの、死ぬまでにやる事リストと頼れる人間関係図を書き出して見た


3日程たってまた整頓屋に顔を出す

「あらーだいぶ整頓出来て来ましたねぇー」

整頓屋さんは私が子供の頃流行った、たまごっちを頭の上にのせていた

この人は何かを頭の上にのせていないと落ち着かないのかな? 

たまごっち

通ってた小学校で持っていない子供はいなかった
弟は甘え上手なので親の機嫌を上手に伺って買ってもらっていたが、私はおばちゃんに面倒かけてしまっている気負いから甘えることができずに、
素直にほしいとは言わなかった

私の事を放ったらかしにしていた父親が気まぐれでクリスマスの夜枕もとにそっと置いていった


たまごっちを素直に喜べず机も引き出しにしまった記憶が蘇る

「やる事リストに書いてある事ですぐにやれそうな事から手をつけたら勢いがつきますよー」

忙しいとか時間が無いとか言うなら、言い訳をする暇があるんですよー余裕なんですー変化を恐れて行動を起こさないことは本能なので悪い事ではないですけどねぇ、本気で整頓したいならぁ、勢いをつけたらスムーズにいきますねえー

この箇条書きを見るとぉー
ありがとうって伝えたいんならぁ

「電話とかぁー 口下手なら手紙とかぁー
手段を変えてみたら、良いんでしょーねぇ
色んな感情が邪魔してて、素直になれなかった自分への後悔が結構あるようなのでぇー」

整頓屋さんは真顔でちょっと不気味な木彫りの犬?の置物を撫でながら私じゃなくて犬に語りかけている


人見知りなのか、恥ずかしがりやなのか?ちょっと変わった人なんだけど、ずーとあった心のモヤモヤを解決へと導いてくれたように思えた

自分の気持ちに向き合う事

本気で解決する為に行動をおこすことなんだなぁーって思えた


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