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京都人力交通案内「アナタの行き先、教えます。」@Q失踪事件の顛末

なぜか京都市バスの路線・系統を(ほぼ)丸暗記しているQ&XLのヘンタイ記憶を駆使し、観光客やお困りの方にベストな行き方、乗り継ぎをご案内する京都人力交通案内「アナタの行き先、教えます。」。

去る2月25日(火)、我々一行は「京都のどこか」に向かうはずだったのだが、この日朝からQ氏の姿が見えず、それは出動前、午後1時を過ぎても変わらなかった。

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Q氏が何の連絡もなく、「気分ひとつ」で仕事を休むことは少なくない。心配してかける電話に出ないこともしばしばだが、この場合はなんらかの被害妄想によって、ふて寝をかましていることがほとんどだ。けれど着信さえ残しておけば、後から地獄の底から這い出てきたかのような声でかけ直してくるのが通常なので、この日もXL氏と2人体制で時々電話を入れるようにしていた。

……が、「おかけになった番号はお客様のご都合によりお繋ぎできません」のアナウンスが流れるばかりで、遂に出発の時間までコンタクトを取ることはできなかった。

Q氏は京都人力交通案内という仕事に、大きな責任感を持っている(と思う)。

この仕事ができるのは自分とXL氏しかいないことは分かっているだろうし、「迷い人」(どのバスに乗ったらいいのか困り、案内を求めている人)が大勢いることも肌身で実感し続けているはずだ。

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でも、ま、責任感よりも「気分ひとつ」が優先されがちなことも我々はよく知っている。

だからスウィング出発時点での心配度はそれほどでもなく、とにかく(寝ているに違いない)Q氏を迎えに行って、それからどこかに出没しようと決めたのだった。なんせ彼の家からは「伏見稲荷大社」も車で15分ほど(近い!)だし、「三十三間堂」にはちょっと歩けばすぐに着く。

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撮影の美馬君も交え、ダラダラ喋りながらQ氏の住む、京都市内某所のマンションへと向かう。

ちなみにQ氏とXL氏は同じマンションの、隣同士に住んでいる。もちろんこの活動のためでもなければ、特別仲良しだからというのでもなく、もっと複雑な事情があってのことだ。

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着いた。

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この時点で考えていたことは「Qさん、起きてすぐに出れるかなあ」と「今日はどこで案内しようかなあ」という2点のみ。

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よく知るQ氏の部屋の前に立ち、ピンポ~ン! とベルを鳴らす。反応がないので何度か繰り返す。

……あれ? おかしい。Q氏の眠りはめっちゃ浅いので、ピンポ~ン! で起きないはずはない。

起きていても出てこないのはQ氏ではなく、親キャバ増田さんのはずだ。

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にわかに不安が高まる。

郵便受けから部屋の中に向かって声をかけるが、それでも反応がない。

扉を叩いてもやはり反応はない。

メーターを覗きこんだXL氏が「電気が止まっている」と言う。

……いない?? 

しかし、いなければスウィングに来ているはずだ。性格は悪いがこの仕事をすっぽかしてどこかに遊びに行ってしまうほど無責任な人ではない。それにふて寝から目覚めたのなら、電話をかけ直してきているはずだ。

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本気の不安、心配に変わる。

Q氏には糖尿病の持病もある。美馬君の表情も固くなり、「これをこのまま撮っていいのか……」という迷いが生じはじめている。大家のFさんに電話をし事情を説明すると、すぐに鍵を持って駆けつけてくれる(本当にありがたい)。

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仕方がない。鍵を開け、部屋へと入る。

Qさん、無事か? だいじょうぶか??

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……いない。……どこにもいない。

しかしいつも彼が背負っているマカロン柄のリュックサックはある。

……なぜだ? 余計に不安が募る。

いるはずの人がいないとき、捜す側はどんな行動を取るか知っているだろうか?

その答えは「何度も何度も同じところを捜す」。

冗談ではなく「便器や洗濯機の中まで、棚の引き出しまで開けて捜す」。

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とにかく部屋にいないことは間違いない。

すぐにマンションを出て、リュックサックを置いたまま行きそうなところ、つまり近所にある「行きつけの店」を捜す。

1件目はコンビニ。いない。

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2件目はマクドナルド。いない。以上。

落ち着いて考えなければならない。

1つ目の推理。京都市バスの中で何かめっちゃ嫌な思いをして、「こんな仕事やってられるか!!!」とふてくされてどこかに行った。

あり得るが可能性としては低い。

2つ目の推理。昨日(祝日)から部屋に帰っていない。即ち何らかのトラブルに巻き込まれ、どこかでどうにかなってしまっている……。

残念ながらこの可能性が一番高い。

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スウィングや展覧会や講演などのイベント(?)で、ご機嫌なQ氏を見た人にはイメージがつきにくいかもしれないが、彼は今でも日常的に(主に「相手が当たってきた」という被害妄想や信号無視などのルール違反に端を発する)ストリートファイトを繰り広げる人物だ。

ファイトと言っても殴り合いではなく、言い争いがほとんどのようだが、最近は「怒鳴ってからダッシュで逃げる」という戦法を取りはじめたため、「えらい! それはいいね!」と称賛していた。

だが、頭の片隅ではいつも考えていた。

いつか何事かに巻き込まれ、逃げ切れない事態が生じてもおかしくはない……と。

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……いや、待てよ。今日はひょっとして通院の日なんじゃないか? 

Q氏がT病院に行くのはいつも火曜日、前回通院はちょうど1ヶ月前くらいだったはずだ。交通案内は通常月曜日に実施しているが、今回は祝日もあってイレギュラーな火曜日実施。しかも3連休の後で通院日とも重なり、Q氏はうっかり忘れてしまっているんじゃないか。

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これなら何もかも、辻褄が合う。

スウィングに即、電話。情報の確認をする。Q氏からは「何も聞いていない」らしいので、T病院からなんとか情報を得て欲しいと西川君に依頼する。

その間、美馬君と大家さんは再びQ氏の部屋へ。部屋に今週のスケジュール表があるかもしれないと考えたからだ。西川君とのやり取りが終わった頃、2人が戻って来るがスケジュール表はなかったらしい。

けれど晴れやかな顔をしている。

何か手がかりがあったのだろうか?? 

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なんとQ氏の炊飯器が「保温2時間」となっていて、つまり少なくとも3時間ほど前までは彼は部屋にいたんじゃないかというのだ。

なるほど、Q氏が「予約」で米を炊くとは思えないし、だとしたらそうに違いない。

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「炊き上がったご飯をなぜ食べていないのか?」という謎は残るが、この日の夜はヘルパーさんに焼き飯を作ってもらう予定らしく、きっとそのための準備なのだろう。

Q氏捜索隊一同に50%くらいの安堵感が広がる。

これで病院に行っていることさえ確認できれば……。

後は西川君からの連絡を待つしかない。

Q氏の消息は心配だが、その間にやるべき仕事をしよう。

そうして相談の結果、我々は日本一の人気観光スポット「伏見稲荷大社」(昨年3月以来2度目)へと向かったのであった。

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Q氏の自宅から15分ほど車を走らせ、前回と同じ駐車場に車を停める。

制帽やら案内用紙やら必要物品を積んだバックドアを開けたたちょうどそのとき、西川君からの電話が鳴る。

どうだった? 病院に行ってた? それとも??

「Qさんからさっき電話がありました! 病院じゃなかったんですけど、今日も休みやと勘違いして普通に遊びに行ってたそうです。今もう家に帰ってはります」

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なんですと!!!?

でも良かった。心底ホッとした。

3連休やったしね。いつまで休みか分からんくなって間違えることも、まあ、あるある。

……いや、あんまりないと思うけど、そうかあ、元気に遊びに行ってたのかあ。本当に良かった。

「最悪どこかで土左衛門」の絵づらまで浮かんでいた我々にとって、これは朗報でしかなかった。

Q氏に電話をかけるとすぐに繋がる。あらためて事情を聞き、あらためて安堵する。

そしてひとしきり話をした後、誘ってみる。今から一緒に交通案内しないかと。

Q氏はこの一件をやたら謝っていたし、責任感が疼いてるんじゃないかと思ったからだ。

よっしゃQさん、今から迎えに行くわな!

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「それはちょっと無理やな」


うわお! 考え過ぎてた! 責任感とか関係なかった!

今、お昼ご飯食べてるから無理なんやって! 

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自宅で昼食中のQ氏を残し、深い安堵感と共に改めて伏見稲荷大社へと向かう。

おお、空いてるね。間違いなく新型コロナウィルスの影響やね。

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そう言えばもう15年以上前、XL氏やアッキーと一緒に初詣に来たことがあった。

あの頃はまだ、ここが日本一の人気観光スポット(2013年から6年連続らしい。ただし調査元によって順位は異なる)になるなんて、誰も思ってなかったんじゃないだろうか。

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ああ、しかし今日はゆっくりできるねー。千本鳥居もゆっくりできるねー。

あの初詣のときにここまで来たかなー。思い出せないなー。

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いやあ、ゆっくり過ごせるって素晴らしいことだねー。

Q氏は無事だったし、伏見稲荷も堪能できたし、もう今日は今さら交通案内なんてしなくっていいねー。

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いずれにせよガラガラやったしね。

あ、そう言えば「マカロン柄のリュックサックを持って出ていなかった謎」について後日Q氏に尋ねると、「上着とコレが入ってる」と、お気に入りのジャンパーとなんかのアニメの人形が入っているのを見せてくれた。全然答えになっていないけど、まあ、いいか。

というわけで次回、京都人力交通案内「アナタの行き先、教えます。」は、Q氏の失踪や新型コロナウィルスの影響でどうなるか分からないが……一応3月17日(火)、京都のどこかに出没予定である!

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