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生誕140年 ユトリロ展 〜異界へのまなざし

美術館「えき」KYOTOへ行き、「生誕140年 ユトリロ展」を見ました。JR京都駅直結の伊勢丹7階にある美術館です。
ユトリロはパリの風景を描いた画家で、家庭環境に恵まれずアルコール依存症になり治療のために勧められて絵を始め、才能を開花させました。

PhotoSpotにて

1908~1914年頃を「白の時代」と呼び、彼の半世紀におよぶ画業の中で最も評価されている時期です。ユトリロの絵として紹介されるものの大半は、白の時代のものだと思います。パリの建物の白い壁を独特なマチエールで塗り重ねる画風で、賑やかなはずの学生街であってもユトリロが描くと人の声も聴こえないような寂しげな街として描かれていることが特徴です。歩く人はごく小さく、遠くの方に「人影」のように描かれることが多いです。

ラパン・アジル、モンマルトルのサン=ヴァンサン通り
1910-12年頃(フライヤーより)

上の作品は白の時代に描かれたモンマルトルのサン・ヴァンサン通りです。ユトリロは、この場所が気に入っていたのだと思いますが、何度か作品に登場します。

ラパン・アジル、サン=ヴァンサン通り、モンマルトル
1927年 (絵ハガキより)

「色彩の時代」と呼ばれる時期に描かれた同じ場所、サン=ヴァンサン通りです。人や通りに明るい光が注ぎ、空は青く、雲が浮かんでいます。歩く人たちは画面の手前にも描かれ、会話が聴こえてくるようです。私は、この色彩豊かなサン=ヴァンサン通りも好きですし、色彩の時代も良いなと思います。ただ、彼の作品の評価は彼の精神状態が良くない時に描かれたものの方が(何故か)高いようです。人は、寂しげだったり陰鬱な影を帯びた絵画の方が好きなのかもしれません。
ユトリロを見終えて、ショップで買い物をし、地下鉄で移動して京都府文化博物館へ向かいました。ちょうどお昼時でしたので、ろうじ店舗に立ち寄って「とにまる」でランチしました。

とにまるらんち

さて、文博の総合展示で見ることができる「異界へのまなざし あやかしと魔よけの世界」を見ました。

昔の人々は、病気や災害などの災厄は異世界の住人からの干渉が生み出す現象ではないかと解釈してきました。そして異界から悪いモノがやってこないようにと様々な呪法が編み出され、魔よけやまじないが修されてきました。人々が異界に向けてきたまなざしに着目し、それがどのように表現されてきたのか、そしてそれら異界からのモノに対してどのように対処してきたのかの資料がたくさん展示されていました。
夏に大阪歴史博物館で見た ↓この展示とかなり共通点があったと思います。

私が楽しみにしていたのは河鍋暁斎の黒絽羽織「刑場図描絵」肩裏付 です。暁斎が大好きだから、というだけの話ですが…。会場内は撮影禁止でしたので写真はありません(文博のサイトに写真は掲載されています。かなり残酷な絵ですので閲覧注意です)。

土蜘蛛之草紙より

その他、渡辺省亭の「伊賀局」をはじめとする幽霊画や、百鬼夜行絵巻や土蜘蛛之草紙などの異界に棲むモノたちの絵、魔よけやまじないに使われた道具類の展示など、見ごたえのある展示でした。
2階の総合展示の会場では、日本考古学の鼻祖 藤貞幹というコーナーがあり、江戸時代の考古学者ということで彼の著作「集古図」をはじめとする多くの資料を見ることができました。

藤貞幹のリーフレットより

今日の京都は大雨ではありませんが雨模様で、そのせいか普段よりも人が少なくてゆっくりと見て回ることができましたし、文博では特別展が行われていない時期で空いていてランチのお店も並ばずに座れて良かったです。
文博の2階の総合展示では京都の歴史がざっと見られますし、今日見たような興味深い特集展示もあり観光でいらした方にもおすすめです。

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