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バイソングラス・余談

 ポーランドの音楽と言えば、個人的にはジャズがまず浮かぶ。ポーリッシュジャズ。タイトルは忘れたが五木寛之の小説だか旅行記でポーランドの熱いジャズシーンが語られていて、「へぇ、ポーランドってジャズが流行ってるんだ」と思ったのが初体験。実際に音で経験したのは日本のクラブジャズユニット、U.F.O.の”United Future Airlines”でサンプリングされていたNovi Singersの”Secret Life”かな。またこの曲の入ってるアルバム”Novi In Wonderland”(1968)のジャケットが素敵なんだわ。トラクターに女性が一人乗って、男3人がそのトラクターを引っ張ったり押したりしてると言う、音楽性と全く関係ないジャケットなんだけど、その色味が鮮烈でお洒落なんだ。実際楽しそうにスキャットをしまくっている素敵なグループ。まだレコードは二枚しか持っていないがどれも素敵。

 あ、あとポーランド出身の映画監督といえばロマンポランスキー。「チャイナタウン」(1974)や「戦場のピアニスト」(2002)などで有名な監督だけど、彼がまだアメリカに移住する前にポーランド撮られた「水の中のナイフ」(1962)が素敵な映画なんだけど、その音楽がニュージャズな感じで素晴らしい。Krzysztof Komedaと言うピアニストが書き下ろして演奏されるジャズは、まさに60年代のUSのMiles DavisやHerbie Hancockが表現していたモーダルなジャズ。60年代のポーリッシュジャズはどれもニュージャズ的で気持ちいい。

 なんだろうね、同じジャズでもポーランドの人たちが奏でると、なぜか乾いた寒い風景が浮かぶ。同じ楽器を使っていても、出てくる響きや空気感にその出自が現れてしまうものなんだろうか。逆に、ポーランドからすると、日本のジャズにも日本感を感じ取るんだろうか?

 先日たまたま古本屋で購入した、Grupa Skifflowa no To Co(読み方分からず)と言うバンドのレコード”Nikifor”(1968)も意外と良かった。これはUSのMamas Papas~The Byrdsのようなソフトロック的な肌触りもありつつ、でもマズルカ~ポルカなどのトラッド感も少しある音楽。時折使われるピアノが意外にブルージーだったりして、こういうポーランドのポップバンドの中にも黒人的な要素が入り込んでいることに、黒人音楽の感染力の強さを思う。

 北半球の反対側くらいの遠い国、日本で、ズブロッカを飲みながら2022年に、ポーランドの60年代の音楽を聞いている。それだけでなんだか素敵な物語な気がしてしまう。今頃どこか遠い国で、日本のシティポップが聞かれてだろうことも同じ、時空を超える音楽の素敵な物語。

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PS 今のポーランドもついでに紹介。と言ってもピアニストを一人紹介したいだけだけれど。ジャンルを一体なんと言っていいか分からないが、一応ジャズコーナーに置かれてはいるピアニスト、Slawek Jaskulke(スワヴェク・ヤスクウケ)。彼の何がいいって、調律を432hzで演奏されるその響きだ。実際に子供を寝かしつけるために作られたという「SENNE~夢の中で」などはぼうっと聴くのに最高の音楽、不眠症な大人にもオススメしたい音楽。そんな彼が、上記「水の中のナイフ」などを書き下ろし、演奏したKomedaをトリビュートした音源もあったりして、それも心地よい。が、紹介するのは「夢の中へ」にしておこう。

ちょいと肩の力を抜いて、ピアノが水中で奏でられているような響きに身を委ねてみてはいかが?まさに夢の中へ誘われるようなソロピアノ音楽です。


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