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R.I.P. Ahmad Jamal への手紙

#RIPAhmadJamal
4.16.2023 享年92

いやぁもう大往生でしょう!お疲れ様でした。

また独特なピアノ人生でしたね?日本のジャズ紹介本でもあまり見かけない、あって1958年の"But Not For Me"(もしくは"Ahmad Jamal At The Pershing")ぐらい。タイプこそ違えど、扱いは昨年召されたRamsey Lewisと似てるかもしれません。「日本のジャズ界で全く評価されていないピアニスト」と言う一点に置いて。

実際70年代あたりの日本盤のレビューを読むと「1958年こそセンセーショナルで、マイルスをも刺激したが、その後全くパッとしなかった」などと記されていたりします。それがいつぞやジャズ界ではなく、まさかのクラブ界からの再評価になるとはご自身もびっくりだったことでしょう。

「なぜ俺のピアノを若い奴が聞いてるんだ?」
と思ったのか?
「ふむふむ、やっと俺の表現をわかる奴が出てきたのか」
と思ったのか?

どっちなんでしょうね?そんな問いかけをした最近のインタビューなどあったんでしょうか?

個人的なファーストコンタクトは90年代にクロスオーバーな"Jamalca"(1974)を古本屋のレコード箱で見つけたところからでした。安いから買った、ぐらいで、時々聞いてるうちにみるみる好きになりました。そしてのちにHip Hopで数多サンプリングされていることを知り、その代表作"The Awakening"(1970)と出会い、そこからは見つける度にコツコツ買い集めて、現在15枚です。

そんな中からまず一枚紹介するとすれば、そのどちらでもなく、これなんです。

"Cry Young" by Ahmad Jamal with voices (1967)

この頃はまさに、日本ではスルーされている頃ですね。いや現在、世界でもスルーされてる作品かもしれません。なにせCD化されてないようですから。1967年と言えばマイルスは"Miles Smiles"を出す頃。ニュージャズと言われたモード系なものから、フリージャズなどにどんどん深化していく時期だし、この年にはJohn Coltraneも召されてしまう頃。

そんな頃に、一切ピアノスタイルを変えずに、むしろコーラスグループと組んでこんな作品を出していたのはあなたらしいです。お仕事のリスニングミュージックかと思いきや、コーラスアレンジまでした意欲的な作品じゃないですか?ゴスペルというより聖歌な歌い方のコーラスグループを従えて、まるでヨーロッパの映画音楽のような作品集。この、緻密に構築された音楽の中で、さらりと弾かれるピアノの美しいこと美しいこと。構築されたJazzyぐらいな温度感のこのアルバム、その温度感が故でしょうかね、大好きなんですよ。エゴのありかがアドリブではなく、「構築」の方にあるところが。

あ、しかもこれをリリースしてるのはシカゴのChessレーベル傘下のCadetじゃないですか!!ってことは奇しくも同時期にRamsey Lewisも所属してましたよね?Ramseyは翌年1968年に、我々の界隈でも評価の高い、Charles Stepneyプロデュースの"Mother Nature's Son"と言う大作を出してますが、間違いなく影響受けている気がします。Charles Stepneyが気合を入れるきっかけになったのかもしれませんね?しかもこの頃はRay BryantもCadetですからねぇ。あぁ、許されるならばこの頃のCadetのスタジオを覗き見したいです。貴殿のCadet期のものはまだこれしか持ってませんが、他もコツコツ探してみますね。

いやぁでも、1958年の"But Not For Me"以降、大したヒット作を出せていないのに、ずっとアルバムを出し続けたのはすごいですね。というか、出してくれるレーベルが常にあったというのは、俺がどうこう言うまでもなく、支持者が絶えずいたという証ですね。レコード化されていない90年代のNature~自然を題材にした作品集なども素敵です。スティールパンをフィーチャーしたりしてるのも素敵です。70年代こそフュージョンからディスコ的なのまでやってらっしゃいましたが、そんな中で聴けるピアノのアプローチも常にAhmad Jamal、あなたそのものでした。

あ、でもそういったフュージョン〜ディスコなアプローチの曲の入ったアルバムはサブスクにありませんが、ひょっとしてそれはお嫌いでしたか?

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