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遺作として作られた映画から考える終活

70歳になる尊敬するミュージシャン先輩からメールが来た
「死ぬ直前の演技が素晴らしいんだ」
とのメッセージとともに、最近見た映画を二つ紹介された

ハリーディーンスタントン主演 "LUCKY" 2017年公開 →2017年死去(91歳)
バートレイノルズ主演 "The Last Moviestar" 2017年公開 →翌2018年死去(82歳)

いずれも、彼ら役者の遺作前提で作られたかのような、そして結果、見事に終活となった作品だ。そもそもの映画評は色々あるようだけれど、いずれも個人的には味わい深い作品だった。

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"Lucky"
ジョンキャロルリンチ監督 2017年

「パリ・テキサス」ヴィムヴェンダース監督1984年などで印象的だったハリーディーンスタントンの90歳の時に撮影された映画。もう遺作〜終活として作られたのは明らかな作品で、盟友のデビッドリンチやエドペグリーJrほかがちょい役で出てくるし、同じく妻子のいない爺さん仲間が、自らの生命保険を飼っていた亀にあげるかどうか?を話してたり、、、セリフに昔のベトナム戦争のことを振り返るシーンがあったりして、リアルに終活を考えさせられるシーン多数。田舎の偏屈爺さんと言う設定ではあるが、「パリ・テキサス」的でもあり、後輩役者のジョンキャロルリンチが初監督をして、先輩を粋に送り出そうとした作品なのかな?

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"The Last Movie Star"
アダム・リフキン監督 2017年

問題児で女関係も華々しかったバートレイノルズの終活的な遺作。これはもう事実上本人役で作られたような映画で、落ちぶれたスターをそのまま演じているところがいい。そして過去を清算すべく、自分が育った家に、アメフト選手だった頃に出た競技場に、その頃愛した女性とデートした場所に、次々と出かけて行くことになるシーンがいい。まさにスクリーンの中で終活をさせている感じ。その、思い出詣での気持ち、あと、過去傷つけた元妻がいる老人ホームに会いに行くシーンも素敵。

終活と言えば!なこんな作品も軽く紹介しておこう

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「ドンファン」
ロジェヴァディム監督1973年

今年ずっとハマっていたブリジットバルドーの最終作。彼女の場合は、タブロイド紙に追い回されるのに辟易したからとされつつも、セックスシンボルとして存在していた自らの身の衰え、特に顔の皺が目立つようになっていたことを気にして、潔く引退したとされる。39歳にて引退。現在86歳でまだ健在のようだが、この引退の仕方も潔くて格好いい。自らの姿態を売りにした者として「美しいうちに去る」と言う素敵な引退の仕方。しかも監督が、キャリアを大きく羽ばたかせるきっかけとなった監督、しかも初婚相手であるロジェヴァディムと言うのが素敵。実際の映画の内容はもう、これまでの定番「男を翻弄する女B.B.」をそのまま演じたもの、と言うのもいい。過去に共演したロベールオッセンが「どこかで会ったことあるよね?」と言うのも粋。

終活

終活ねぇ、、、俺も現在52歳だしね。先日49歳で黒人女性作曲家なAndrea Martinが亡くなったのを聞いても思ったけど、明日は我が身ってのが少しずつ近づいて来てるんだなと思う今日この頃。ま、そもそも「安全安心な日々」なんてものが幻想だからね。平均寿命って言ったってあくまでそれは平均の話で、自分の死期は自分しか分からない。いや死期を自覚せずに亡くなることだってあるだろう。ネガティブな話ではなく、事実。そこにちゃんと向かい合うことは大事。そこに向かい合わなくて済むように仕向けてあれこれ買わせようとする現代社会だからね。

とは言え、俺自身のキャリアのピークはまだまだこれからだと思ってるんでご安心を。死んでから評価されても仕方ない。生きてるうちに誠意を持って、まだまだ面白い作品、気持ちいい作品、心地よい演奏、忘れられないライブ・舞台をお届けして行きたく思ってます。

そして70歳の先輩からはこんなメッセージが来ました
「俺、自分が買い占めたいアルバムを1枚作ってから死にますね」
だって。

うん、それはポジティブに受け止めます。
なんならば是非ともそのアルバムに関わらせてください!
と返信しときました。


では最後にB.B.の最終作に出て来た素敵なシーン、ジェーンバーキンとのシーンをお届けしておきます

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