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房さんとの4日間【4日目】

【3日目~続き】

 所沢MOJO、房さんのステージが始まった。ドブロで奏でる”Paris,Texas”。Ry Cooderが書いた、Wim Wenders映画の曲。この映画自体が房さんのお気に入り。ドブロの響きがテキサスの田舎の草原を想像させる曲。ドブロの曲が3曲続く。モアリズム中村と後ろの方でニヤニヤしながら見学してる。

 そして4曲目、房さんはエレキギターに持ち替える。曲は昨夜横浜で一緒にやった10拍子の曲”I’ll Keep Trying”。ベースのアキラに視線を送る。

「呼び込まれないけど、ここでいいんだよね?」

「いいと思うよ。。。。いや、待ったほうがいいかも?」

 どうやら房さんは、昨夜この曲を俺が一緒にやったことを忘れているようだ。3曲目が終わり。呼ばれるかと思ったらまだ呼ばれない。そして4曲目”Stormy Monday”が始まってしまう。再びアキラに視線を送る。

「え、俺、行っていいよね?」

「うん、おいでおいで」

 ステージに上がったところで房さんが俺に気づき

「ここから仲間に加わってもらいます。紹介します。SWING-O!」

 緊張感の中ステージに上がったが、よくよく客席を見渡すと昨日の横浜と同じ顔が沢山だ。「誰だお前」ではなく、ウェルカム感に溢れている。そんな暖かい空気感の中、”Stormy Monday”は最高のピアノソロが出来た手応え。会場からも大きな拍手。すると房さんもニヤニヤしながらスイッチが入り、最高のソロが始まった。この日も最高のステージのまま終わったことは言うまでもない。房さんご本人は「声が出なくてごめんな」とMCで言っていたが、むしろ昨日よりも声が伸びていたのは皆が感じたことだろう。実際ライブ終了後に「声出てたじゃないですか」と言ったらこう返ってきた。

「出ないから頑張って出したんだよ」

 そして案の定、みなさんに言われた。

「明日もよろしくな」

「いや明日はレコーディング仕事が入ってて、、、、でも残念なお知らせがあります。先程明日のスタジオの連絡が来て、スタジオがなんと高円寺なんですよ(笑)。ま、何時に終わるかはわかりませんが、何にせよかけつけます」

【4日目】

 この日はDJ WATARAI案件のレコーディング。Hip Hopな作品作り。そう、ブルースだろうがHip Hopだろうが「黒い」音楽は俺にとっては同じもの。なにせひと続きの音楽だからね。高円寺のスタジオには16時入り。この日はキーボードを持参しなきゃいけないので、迷ったがピアニカを持参するのはやめておいた。今宵の房さんライブ会場Jirokichiにはピアノがあるし、いや流石にピアノは片付けてあったとしてもこのキーボードを使ってライブは出来るはずだから。あれ、俺すっかり今日も参加する気になっている。

 そして案の定、レコーディングは順調。19時に終わった。終わってしまった。急いで房さんマネジャーに連絡する。どうやら今はサウンドチェックも終わって早速飲んでいるようだ。飲みの席に合流し、今日はキーボードを持ち歩いてるのをバンドメンバーに見られると「参加する気満々やん!」と言われてしまった。

 が、結論から言うとこの日Jirokichiには参加出来なかった。既にセッティング済みで、かつお客さんも入れ始めてて、キーボードスタンドを置く場所すらないとのことで、この日は客として見させてもらう形になってしまったのだ。個人的には残念だが仕方がない。そもそも3日間とも俺の名前はクレジットされていないライブなのだ。順応してくれる場所とそれが難しい場所があるのは理解してるつもりだ。だが残念だった。何が残念ってピアニカを持参しなかったことだ。

「備えよ常に」

いつもチャンスあらば、という時に世話になってきたピアニカ。あ、厳密にはピアニカはYAMAHAの登録商標なので、俺が使っているのはSUZUKIなのでMELODION(メロディオン)。昨日一昨日の個人的なピークは、房さんの持ち歌”Travellin”のレゲエバージョン上でのメロディオンソロだったしね。それをまたJirokichiでもやりたかった。もちろん客として見る房さんも最高だったが、1音楽家としてはその悔しさの方が勝ってしまった。実際高円寺近所の楽器屋に電話したりしたが、鍵盤ハーモニカを扱っている店がなかった。

。。。とこの日の残尿感はあったものの、少し経ってから俯瞰するならば素敵な4日間だったと今なら思う。勇気を持って初日のリハーサル時間に顔を出してなければ、一日見学しただけで終わっていた訳だからね。ツヨシとアキラの素晴らしきリズム隊と一緒に音を出せたのもよかった。好きなミュージシャンといつでも一緒にグルーヴできる訳じゃないしね。更に俯瞰するならば俺の音楽人生はずっとこんな感じだなぁとも思う。必要とされた積み重ねではなく、必要とされるように飛び込んできた積み重ね。呼ばれないなら会いに行く積み重ね。売れっ子のように見られたりするけれど、その中身はそんな感じ。房さんが言ってくれたように「どこにも属さない生き方」だからね。属することの安心感よりも、一匹狼たちの集いの方が楽しいのだ。そんな、俺自身の生き方を再確認させてくれた4日間だった。

房さん、ありがとうございました。
また近々Grooveしましょうw


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