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【感想113】メメント

 メジャー一本目の脚本でこんだけ面白い話が作れるんだったら20年経ったら何でも撮れる人になるよ。
『フォロウィング』を踏襲するような話ではあるけれど、基本的には逆行する形で追っているおかげでかなりわかりやすい部類ではあるし10分しか記憶が持たないという設定が構成に効いてくる面白さとして余計にうまく機能しているのもあるし、ラストシーン含め結末の良さも2時間弱を通して見せてきたことに対するいいメッセージとなっているのも個人的に好きな部分。

他人に勧めやすい ★★★★☆
個人的に好きか  ★★★★★

 最初のシーンが逆再生、相棒として記録していた男を主人公の男が撃ち殺すシーンからスタートするところからなぜこのようになったのか?を男が覚えていられる10分単位で徐々に過去に遡っていくので、実はめちゃくちゃシンプルな構成。
細切れにされたシーンも「謎の光景からスタート→記憶が途切れる」を時間軸を逆にして並べ替えているだけ。なので間に差し込まれるヒントに近しいワードがある会話を元に、直前で繰り広げられたシーン冒頭の光景にどういう経緯で至ったのかを明かされていく。ということの繰り返しなので観客側も記憶を辿っていくような体験をしながら見ていくことになってくる。

 『オッペンハイマー』でもあったように、モノクロシーンが差し込まれる個所は過去から時間通りに進んでいくシーンと明確にカラーシーンと違う時間の使い方をしている事と、2種のシーン進行がどういう演出を生み出していくのかは実際に見て確かめてほしい。『TENET』でもそうだけれど、作品内で時間を扱うときの見せ方は本当に旨いネタの組み込み方するなあと思う。

 話の結末としても、安易に想像できるとはちょっとだけズレる、見ている人にも刺さる様な言動なのが憎いなぁとも思う。
単純な時間逆行で見せているわけでもない、あそこをラストシーンにもっていかないといけない理由も主人公が抱えているものの正体とも直結するっていうのが味噌になってくる。
小川哲の『君が手にするはずだった黄金について』内でも似たようなテーマの話はあるので、『メメント』が好きな人は手に取って読んでほしい。

 

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