見出し画像

【感想105】関心領域

他人に勧めやすい ★★★☆☆
個人的に好きか  ★★★★★

 音楽以外の音でここまで魅せられる作品もそうないと思う。
音響面で各方面の賞にノミネートや受賞されているのも納得いくほど個性の1つとして存在感を放っているし、カットの仕方や人物・背景の見せ方も見どころあり。A24っぽい奴が観たいって人は滅茶苦茶合うと思う。


見に行く前の準備

 正直、何も知らないで見に行った方が楽しめるまである。

 見に行った時の知識としては「アウシュヴィッツを題材に組み込んでいる」「ヒトラーの史実を通してドイツ情勢をふんわりと知っている」レベルで行ったけれど、
・アウシュヴィッツ収容所で何をしていたのか
だけ知ってればあとは何も知らなくても十分楽しめると思う。
後半からはヒムラーを筆頭に当時の主要人物の名前が出てくるけれど、そもそもこの映画の主要人物がどういう人なのかも特に深く知らない方がインパクトある体験ができると思うので何も予習しないで気軽に見に行ってほしい。






以下よりネタバレ含む感想。


ネタバレ有

 日常に組み込む収容所からの悲鳴や環境音の塩梅が恐ろしかった。
一家が大人子ども関係なく収容所から出ている騒音に目もくれず、淡々と生活している姿を描き続ける。普通なら他所から訪れた人物が収容所からの叫び声に驚いたり恐れたり、それに対して気に留めるなと言い伏せる様子がありそうなのにそんなシーンはないまま進む。

 これが時間が経つごとに厭らしさのボルテージが上がっていく。
中盤あたりからやってきた妻の母親が1日耐え切れずに逃げ出したり、幼稚園児ぐらいの年頃の息子が漏らす悪態、観客側にも絵面の異常さを忘れさせないために出す不協和音。
何の変哲もない家族なはずなのに時折見せてくる差別的な意識とそれが異質ではないという無自覚さ、こちらには収容所と家族の様子を1画面に収めるように見せてくる意地悪さ。

 特にラストに関わるシーンは印象深いというか、一番怖かった。
全く発音がないまま淡々と掃除を進めていく現代のシーンから切り替わり、それを眺めていたような素振りに見えるルドルフ。その直後に見せた仕草がこの映画自体の根幹にかかわっているし、現代のシーンを一度見せた厭らしさもエンドロール後も余韻を引きずる要因になった。

 平坦な日常しか見せていないからこそ全く見せていない収容所での悲惨さをより濃く印象付けているし、ただひたすら不快感をじんわりと感じさせるのに徹しているだけあって映画館で見るのに適した作品だと思う。
ザンドラ・ヒュラーを見るだけでもう胃がもたれそうなぐらいキツイ人物でしか見れてないのは勘弁してほしい。

この記事が参加している募集

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?