[感想10]博士の愛した数式

買った理由

オススメされたから。

内容の感想

読む前の穿ったイメージを覆されるぐらい、ハートフルという言葉で括るのはなんだか嫌だなと思っちゃうぐらい誠実に向き合いたくなる温かいお話だった。

博士と言われる人物がきっかり80分の記憶しか持たない、という死亡確定ロマンスと揶揄されてしまいそうな要素を持っている。
けれど結末としてはそんなことはなく、全員が同じ意味合いで、というわけではないけれど幸せな結末に至っていたのが印象深い。

博士は数学者としての知恵が常人との比にならない、何か数字を認識すればそれに伴う何かをいとも簡単に出してしまうほどの貯えが備わっている。
ただコミュニケーションがそれでしか取れないという、今の人にとっては「よくわからない」「面倒な」「おかしい」人というレッテルが張られるのは間違いない。
それでも、そんなコミュニケーションでも魅力的に感じてしまう人が必ず存在する。それが主人公として描かれる私と、その息子のルート。

過去は決して褒められるようなものではない私が、そんな博士との交流を機に数学へ向き合う姿が特に輝いて見えた。惹かれたことに真摯に向き合う、それだけで魅力的に映るからズルい。

そしてこの文章で私はどういう人なのかはピンとくると思う。続く文章も大事だけれど、内容に大きく触れているので割愛。

正直に言えば、内野指定席三枚分の出費は痛かった。怪我の治療代が重なったので尚更だった。しかし、お金ならあとでいくらでも取り返せる。老人と少年が一緒に野球を楽しめる時間は、おそらくそう沢山は残されていないだろう。

『博士の愛した数式』より p.132

数学への気持ちに劣らない子どもへの愛を持った博士、母子家庭で慎ましくも誠実に育ったルート、上記のような私の3人が描く物語はそりゃあ名作として残るよなと。
こういう一般的な名作は個人的に面白くないなと思って手に取るのは避けていたけれど、オススメされたら素直に読むもんだなと反省している。
作品を見る体力は無尽蔵にある(気がしている)ので、おススメあればちゃんと向き合いますクンとして手を挙げるべきなのかもしれない。

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