[感想9]愛されなくても別に

買った理由

ユーフォ公開直前+サイン本が陳列されてたのでいっか.....!て感じで。

内容の感想

シスターフッドとして限りなく満点に近いし、個人的にはジュブナイル作品としてもだいぶ良い作品だなと思った。

母子家庭で家事全般と学費諸々を稼ぐためのバイトで大学生活をすべて費やしている主人公の宮田が、江永という同期の年上女性とのコミュニケーションを機に宮田自身と周囲が変化していく様子を描いている。

この作品のズルいところは、宮田が徐々に俯瞰視点で自分を見つめなおしている描写が徐々に表れる所。
上記の通り”可哀そうな私”な自分が最も惨めだと意識している中で、さらにハードな”可哀そうな私”である江永や、よりライトな”可哀そうな私”の木村といった人物と交わり、他者の心境を蔑みつつ自省する。
読み手と同じ視点にまわる宮田を理解できるかが読むうえで大きなハードルになってくるけれど、そこで大きな高さにしないような工夫になっているので全く理解できない世界の人として宮田を見る人はそう多くはならないと思う。

そしてその不幸さに比例するように、コミュニケーション能力が与えられているのも妙だった。
金銭・家族ともに与えられていた木村が唯一あんな結末になってしまったのも無理はないなとも思う。宮田と江永、そこに加えて同じバイト先の堀口といった小さいながらも関係を構築して、自分を紐解いていける。それだけでどこまで変わってくるのかを見てほしい。詳しくは単行本の解説読んだ方が早い気がする。


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