見出し画像

【感想112】ソウルフル・ワールド

 劇場公開されなかった作品だけれど、3作の中で特にこの作品は映画館で見たほうがいいって自信持って言える。
ジャズを題材に扱っているだけあって様々なシーンで出てくる演奏シーンや音楽の親和性の高さ、世界の表現技法やPIXARだからと舐められない程壮大かつ大事なテーマを映画館という没入できる環境で見るからこそよりいい体験になると思う。

他人に勧めやすい ★★★★☆
個人的に好きか  ★★★★★

 「ジャズプレイヤーになること」に執心しているジョーと、目指すものもなく怠惰な時間を過ごしたい22番というソウル(生まれる前の魂を指す)の二人が共に過ごす時間によって、お互いに必要だったものがなんだったのかを気付いていく話。

 人生や生きることに対して真逆なスタンスな2人ではあるけれど、日ごろから悩んだり考えすぎる人が陥りやすい2パターンを描いているのもあって映画をはじめとした物語を好んで見ている人には刺さるっていう、かなり当たり判定の大きい上に深く突き刺さるテーマを扱っている。
何者かになろうとしているジョーの視野が狭まっている言動や22番の冷笑仕草がどのように和らいでいくかは見ていて特に響いた。

 何より話の中で伝える技法の巧さは改めて見て一番驚いたかもしれない。
引くほど揶揄される『鬼滅の刃』を筆頭としたモノローグやセリフでの説明は最低限に、構成や展開で理解させやすいように工夫されている。
特にこの作品だと相対化できる概念がないだろう「魂だけの世界」という存在と現実世界での物事とのリンクのさせ方や、それを説明されて一発でピンとくる描写が前もって出されていたり、何をどう感じているかというキャラクターたちの体験に水を差さない画の見せ方は自分事として物語を消化できるいい余裕になっているし、テーマとしてもそれが格別にマッチしてる感じが特に良いところだと思う。

 『アバウト・タイム』然り『aftersun』然り、こういった人間について描いている作品を真正面から受け止めている人は特に大切にした方がいいな。と痛感してる。
最近はみんなバカにしてるけれど、こういう光るものを見逃すから画一化するような見方は良くないよ。


この記事が参加している募集

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?