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61際の食卓(13)こども食堂のくじらの立田揚げ

立田揚げは、小学校給食を思い出す一品である。 

哺乳類であるくじらを食べることに、誰も抵抗感を覚えない時代の話だ。 当時の人気給食メニューは、1)くじらの立田揚げ 2)ハンバーグ 3)揚げパン。 紛れもないベスト・オブ・ベストがくじらで、家の食卓には絶対に登場しないあの味に幼な心がときめいた。 サクッとした歯ざわり、肉々しい赤褐色、血の味わい…。 くじらという海の生き物を、私たちは味わうことにより記憶に留め、数十年経ても尚、鮮明に蘇らすことができる。 以来、築地でくじら屋の扉を叩くまで30年近く、くじら肉を食べる機会はなかった。

 くじらを再び食べたのは、場外のちょっと不思議な古い家屋の奥にあるくじら専門店で、刺し身からベーコンまでのくじらコース料理を堪能した。今回、くじらメニューを再現できたのは、その店「築地の鯨」のおかげだ。

くじらに馴染みのない現代の小学生たちに、カレー味をつけて食べやすいようにとアドバイスを受けて、前もって味付けされた鯨肉にカレー粉を薄くまんべんなくまぶし、上げる直前に片栗粉を握りしめるようにまぶした。
不思議なものでカレーという香辛料は、こどもの舌を魅了する。今回もコロナの感染防止のため、テイクアウト形式となり、帰宅後の宅食となったが、食べたことのない鯨肉の赤身に警戒心を抱くことなく、「美味しい!」を連発したというから、つくづくカレースパイスは大したものだと思う。

 ちなみに、大人には柚子コショーがおすすめとのことで、後日、カレー粉のかわりに柚子コショーを和えてから片栗粉を付けて揚げてみた。これがまた、香りよく、ビールが進むこと請け合いである。 

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