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はいりさん二冊

つる・るるるさんへお友達から引き継がれたという数冊の本の中に、片桐はいりさんの著書があって、
「おっ、これ知ってる!」
となったのは、もう2週間くらい前。
以前、はいりさんが「徹子の部屋」で話していた弟さん家族のことを書いた本、
『グアテマラの弟』だった。

知ってるけれど読んだことがない本に思いがけないところで再会して「私も読みたい!」
と思ったそのきっかけが、
つる・るるるさんだったという何とも素敵!な繋がり
(勝手に繋がりましたが、るるるさん、ゴメンなさい)。
ひとりニマニマと笑ってしまう。

とは言うものの、私には海外旅行の経験もないし、海外に住んでいる家族親戚知り合いもいないので、こういう外国生活の話や紀行文には普段あまり惹きこまれないのだけど。想像する世界が遠すぎて。

でも、はいりさんの話は違った。それもよりによって遠く地球の裏側の中南米の話なのに。
自分の居場所を見つけて帰って来なくなってしまった弟さんのいるグアテマラを、弟さんの所望するファックスの機械を手土産にはいりさんが初めて訪れた時、現地から大森の実家へと弟家族の暮らしぶりを画像を交えてファックスで送ったら両親がとても安心したとか、

一緒に住んでいた頃は喧嘩も出来ないほど仲が悪かった弟さんと、それ以後は日本↔グアテマラでどうでもいい世間話をダラダラとパソコンでするようになったとか、、

そんなに遠く離れたところにいても、届くべきものは届くべき時にちゃんと届き、納まる時にはちゃんと納まるもんなんだと妙な安心感と説得力がある。
そう感じながら読んでいくと、はいりさんの地球の裏側での素敵な珍道中や弟さん家族との生活の話が、
私にまで何となく埼玉と大森くらいの距離感で伝わるような気がしてとても面白かった。
グアテマラという名前もコーヒーの銘柄以外に色んな景色や人に見えて来た。

『グアテマラの弟』で調子づいた私は、更に片桐はいりさんの本を探して読んだ。面白くて止まらない。


『もぎりよ今夜もありがとう』
はいりさんが地元大森の映画館で今でも時々「もぎり」をやっていることは、あさひやさん伝いに知っていたけど、
もともと学生時代に銀座の映画館でアルバイトをしていて既に映画館の申し子みたいになっていたことが、この本を読んでわかった。

小さい頃からの映画好きが高じて、映画館で映画と寝食を共にするよな映画に恋するよな青春時代を送ったエピソードの数々や、
俳優さんになってからも地方の映画館の行く末を訪ね歩いてはロマンの欠片を探す映画館愛。
なんて素敵なんでしょ!

私は、シネコン以前のはるか昔に銀座や有楽町や渋谷で見た映画のことはそれなりに覚えているけれど、そこにあった映画館がどんな外観でどんなつくりで雰囲気だったか、もううろ覚えにしか浮かばない。殆ど記憶がない所もある。
それだけ行った回数も少ないということだけれど、特に懐かしいとか恋しいとも思わなかった。
それが、はいりさんの文章を読んでいると、知らないはずの覚えていないはずの映画館が私でさえ愛おしく思えて、何でもいいから映画を見にシネコンでもいいから行きたくなってきた。

しかもすでに私は立派なシニア料金なことを思い出して、こんな未来も来るんだよと、初めて友達とテアトル東京に行った頃の自分に言ってみたい。