三界唯心

三界とは一般に、欲界・色界・無色界の三つの世界をいうとされています。欲界が一番下で、無色界が一番上の仏教的世界観というわけです。
・欲界……六道輪廻を繰り返す凡夫の世界。
・色界……初禅天、二禅天、三禅天、四禅天
・無色界……空無辺処、識無辺処、無所有処、非想非非想処

実はこれ、瞑想の段階なのです。
・欲界……生死流転をくり返す、瞑想とは無縁の心の状態
・色界……欲や不善をはなれて完全に落ち着いた状態に至る四つの過程
・無色界……沙門になったばかりのお釈迦さんは、アーラーラ・カーラーマから空無辺処定を、ウッダカ・ラーマプッタから無所有処定という瞑想を習い習得しました。が、それは一時的な心の変化で、その状態が続かず三界に戻ってしまうことから彼らの元を去りました。

よく仏教の世界観として固定的に図示されますが、これは心がどう世界を見るかなのです。

『華厳経』には、唯心偈として有名な次の一文があります。
 心如工畫師 畫種種五陰
 一切世界中 無法而不造    
 如心佛亦爾 如佛衆生然    
 心佛及衆生 是三無差別

 心は巧みな画家のよう 様々な世界の観取と反応を描きだす
 一切の世界において 作りださないものなどない
 心のままに仏もまた作られる 仏のように衆生も作られる
 心と仏と衆生の三つに 異なることなどない

『華厳経』は釈尊入滅後の成立ですが、世界を心の状態と結びつけている観点は同じだと思います。
 

『仏般泥洹経』には、釈尊がかつて教化した世界として二十八天が上げられています。
第一の四天王がいるところ
第二の忉利天
第三の塩天
第四天の兜術天(兜率天・弥勒菩薩がいるところ)
第五の不憍楽天
第六の化応声天
梵天、梵衆天、梵輔天、大梵天、水行天、水微天、無量水天、水音天、約浄天、遍浄天、浄明天、守妙天、近際天、快見天、無結愛天……
(三つ飛んで)
第二十五の空慧天
第二十六の識慧入
第二十七の無所念慧入
第二十八の不想入

これらは明らかに天上の世界として描かれています。それとともに、釈尊が瞑想によって到達した、釈尊の心というたくみな画工が描き出した世界像とも言えるのです。




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