③内服・静注ステロイドの長期副作用~副腎抑制

※注
以下の内容は、基本的には内服と静注で起こるものです。
外用、吸入、点鼻では
『あまり起こらない』
ので、それらを使ってる人におかれましては過度な警戒は不要です。

ではスタート。

まずステロイドとは何か。
作用がありすぎて本が何冊も出るレベルですが…
まずは根本として
『生命維持ホルモン』
『体調不良時に全身状態を保つホルモン』
といえます。
指令中枢は、他のホルモン(甲状腺系、性腺系、成長ホルモン)と同じく脳下垂体の前葉。
画像参照:https://www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0/12-%E3%83%9B%E3%83%AB%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%81%A8%E4%BB%A3%E8%AC%9D%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E4%B8%8B%E5%9E%82%E4%BD%93%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E4%B8%8B%E5%9E%82%E4%BD%93%E3%81%AE%E6%A6%82%E8%A6%81

中枢
下垂体はホルモンの総合商社

んで、下垂体から指令を受け…ステロイドが実際に分泌される場所は
『副腎皮質』
です。副腎髄質からは別のホルモンが出ます。

下垂体 『さあ、副腎皮質よ…ホルモンを出すのです…』
副腎皮質『あいあいさー!』

と、分泌されます。
ちなみに材料はコレステロール。
摂らなさすぎもよくないんだよ。俺は摂りすぎだけど。

副腎はここ。
コレステロールから各種ステロイドの合成経路

さて。
問題になるのは「コルチゾール」です。
脳下垂体で発注、副腎皮質で産生、全身で作用。

通常時は
全身 『足りてます!』
下垂体『作りすぎなくていいヨ!』
副腎 『あいあいさー! こんぐらいで!』

といった感じで、適切な量を自動調整します。
生理量がコルチゾール7-8mg/㎡程度。
(体重ではなく体表面積換算です)

体調不良時にはステロイド分泌が増えます。
全身 『もっとくれ!』
下垂体『よっしゃ増産!』
副腎 『あいあいさー! じゃんじゃん出しまーす!』

軽度の体調不良なら生理量の数倍
めっちゃ具合悪いと10倍ぐらいは出ます。
さっきから副腎は『あいあいさー!』しか言ってません。
そう、言われたままに作って放出する、とっても素直な子なんです。
でもそれ後にが仇になる…

そんなステロイド。
過剰になると、当然あちこちに副作用が出ます。
これらは、1-2日程度では基本的に起こりませんが…
…個人的には1日で白内障になった小児なんて症例も診た経験があるんで、油断はできません。
これらは、量や日数依存で起こりやすくなります

ステロイド副作用の一覧

この一覧の中にある『副腎抑制』が今回の話題です。
長期間ステロイドを内服していると何が起こるかって…
本社が居眠りします。

(内服や静注している)
全身 『足りてまーす』
下垂体『作らなくていいぞ』
副腎 『あいあいさー! ライン止めまーす!』

が続き…

全身 『足りてまーす』
下垂体『zzz…』
副腎 『作れって言われてない! ヨシ! ラインこのまま!』
になります。

副腎現場猫

これが3週間以上続いた場合…いきなり休薬すると…

全身 『足りませーん』
下垂体『zzz…』
副腎 『作れって言われてない! ヨシ! ラインこのまま!』
全身 『おーい?』
下垂体『zzz』
副腎 『ヨシ!』
全身 『…誰かぁぁぁ!!!!』

副腎現場猫

…生命維持ホルモンであるステロイドが全く分泌されなくなります。
これを「副腎クリーゼ」と呼びます。対応遅れると死にます。

そう。副腎皮質は言われたらきっちりやるけど、素直でいい子過ぎる
『ホントにライン止めてていいんですか?』
本社に問い合わせを入れられないアホの子なんです。

基本的には、3週間程度の連日内服・静注で起こります。
ゆえに長期間ステロイド内服をする場合、我々はめっちゃ気を使って慎重にステロイドを減らします。

以上、長々書いたけど、つまりね……

個人輸入とか自己判断とか、そーいう薬じゃねぇし
あまつさえ食品に勝手に入ってるとか論外すぎるんだよ!!

ステロイドは作用も全身で様々だわ薬もたくさん種類あるわ…本が何冊も出るレベルの底なし沼です。今回のツリーはあくまで

・ステロイドの副作用の中で、副腎不全とは何か

の軽い説明と「だから自己判断ヤメレ」っていう極めて浅い内容です。そんな浅い内容を超ざっくり書いただけでもこの分量になります。


また、医師の把握なしのステロイド使用なんてケースを、我々は一般外来においては想定してません。基礎疾患ない患者の符牒に対して副腎不全を疑えるのは、医師ってより超能力者。

ついでにいうと
・下垂体から副腎への発注(ACTH)
・副腎ステロイド
ともに検査はありますが、院内項目ではなく外注検査の施設が大半なので、日数かかります。


結論
ステロイドは
勝手に使ったり止めたりせず
ちゃんと処方されたものを

https://twitter.com/syanosyano6631/status/1604738507351564289?s=20

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?