うつ病の妻は障害年金を受給できるか

 私の妻は現在うつ病を患っており、自立した生活を送ることが困難な状態です。
 共働きでないと生活が苦しいこともあり、妻は単発の派遣の仕事など実際に働こうとするものの、出勤当日に体調が悪化して極度の緊張から過呼吸になるなど仕事に行くことができませんでした。

 またうつ病は睡眠障害、思考の抑制、希死念慮、抑うつ症状、意欲の低下、身体の痛み(人によって様々なようですが、肩が凝ったり、腰痛がひどくなったり、腹痛、頭痛に悩まされたりと精神疾患は身体的な痛みとして発現することが多いようです。私の妻の場合は腹痛と頭痛でした。)などなど、様々な症状が出ます。その症状によって障害年金の請求自体が難しかったりします。いってしまえば、障害が重く障害年金の障害要件を十分に満たせるような人ほど障害年金の請求は大きな壁として立ち塞がるのです。

 私は家族としてサポートできることをやりたいと考え、また生活をしていくため障害年金の請求を妻の代理人として手続きをしました。
 ここでは、障害年金の請求に当たっての重要なポイントを3点記載いたします。
 このnoteが誰かのお役に立つことができれば幸いです。

①初診日について

 まず障害年金は国民年金法、厚生年金保険法の2つの法律により規定されてます。
 国民年金は別名基礎年金と呼ばれており、全国民が20歳になったときから加入してその名前のとおり保険料をしっかり納めていれば基礎的な年金を受けることができるようになっています。
 厚生年金には主に会社員・公務員が加入しており国民年金(基礎年金)の上乗せで給付を受けることができます。

 私の妻の場合高校生2年生の時に「不安抑うつ状態」と初診を受けました。
 障害年金の場合、この初診日(障害のもととなった傷病についてはじめて診てもらった日)が大変重要です。
 初診日がわからないと話にならず、門前払いとなります。
 なぜならこの初診日に年金制度に加入しているかどうかで障害年金が受給できるかどうかが決まるからです。初診日が色々と基準になっているのです。

 しかし救済のようなものがあります。私の妻は20歳になる前つまりは国民年金に加入する前に初診日がありました。年金は保険制度であり、加入していないのに障害年金は受給できないと思えますが、法律名をよく見てみてください。
 「国民年金法」「厚生年金保険法」
 国民年金法には“保険“という言葉がありません。
 それは、国民年金法に規定する障害年金において「20歳前傷病による障害年金」(国民年金法第30条の4)の存在があるからです。
 20歳前に初診がある障害については福祉的に国民年金法により障害年金を支給するものです。
 これにより妻は初診日に国民年金の被保険者でないものの、初診日という重要な要件をクリアしました。

 ちなみにですが、障害厚生年金(とりあえずは障害基礎年金の上乗せ分と考えていいと思います)は厚生年金の被保険者期間に初診日がないと受給できません。だからこそ、もし体調がすぐれないことがあれば厚生年金に加入している期間中すなわち在職中に医師に診てもらうことが重要です。

②障害要件について

※障害者という表記を忌む方がいらっしゃるようですが、ここでは障害者というのは疾患等により身体等の機能が害われ、それにより生活等に支をきたしていると考えて使用します。障がい者、障碍者いずれでもなく法律の条文にも使用されまた世間一般的にも使用されている障害者で統一して表記いたします。もちろんながら障害者に害があるという発想はございません。

 障害者とはいえど、様々です。
 身体障害者もいれば、知的障害者もいます。そして、私の妻のように精神障害者もいます。

 また、障害の程度も様々です。
 寝たきりの状態、生活の支援がいる状態、生活はできるが仕事をするのが難しい状態などです。

 一様に障害者といってもどれぐらいの障害の重さの人にどれぐらいの年金を支給すればいいか、判断が難しいものだと思います。
 そこで、国は目安のようなものすなわちガイドラインを定めており、症状から障害年金の受給を客観的に決定をしております。
 客観的にとありますが、言い換えると医師の書く診断書が障害要件に大きな影響を及ぼすということです。

 また障害の状態はいつ確認されるのでしょうか。一般的に物理的な怪我の場合、症状が時間の経過とともに治癒、あるいは固定化していきます。
 精神疾患の場合は症状が回復したり悪化したりと変動があります。

 障害要件は原則障害状態が初診日から1年6月経過日(障害認定日という)障害の程度が定められた基準以上であることで満たされます。
 なお、症状が固定あるいは治癒した場合はその日が障害認定日となります。

 そして、障害年金における「障害の程度が定められた基準以上であること」とは以下の3つです。

1 日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの

2 日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

3 労働が著しい制限を受けるか又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」「傷病が治らないで、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のもの」とされています。

 そしてこれらの障害程度は上記の1は障害等級1級に、2は2級に、3は3級に該当します。
 国民年金法においては2級以上でないと受給決定されません。
 厚生年金保険法では3級以上で年金が受給でき、3級未満の場合は、障害手当金(一時金)が受給できる場合があります。
 そしてこれら等級の決定に最も大きな影響を与えるものは先ほど申し上げた医師の診断書になります。
 障害等級は国のガイドラインを見てどの等級に該当しそうか判断してから医師に診断書を書いてもらうといいです。
 また障害等級の判定に当たって日常生活における態様が大切になります。
 しかし、医師は患者と対面している時の状態しか知りません。精神障害者の場合、病院に行くことは外出という大きな決断をする出来事で、また大きな疲労を伴うものです。そのためある程度体調がいい時にしかできません。
 つまり医師が見ている精神障害者の様子はある程度元気なときなのです(家族が無理やり連れてきた場合は別かもしれませんが)。
 だからこそ、支援してきた家族が日常生活における様子をありのまましっかりと医師に伝え、診断書に反映してもらう必要があるのです。
 このコミュニケーションを怠ると、医師と患者(あるいはその家族)の認識に齟齬が生じて、診断書には患者が思う障害等級と比べて軽いものと判断されてしまう可能性があります。
 そうなれば、本来受給できるような障害の程度の方が、受給できなくなるおそれがあります。

 私と同棲する前に妻は一回目の障害年金について家族の支援のもと請求をしましたが、不支給決定となりました。
 そして当時の医師の診断書をみてみると妻の認識と比べて軽い症状として日常生活の態様が記載されておりました。
 私が不支給決定を知った時には、審査請求の期限をとっくに過ぎていたため、諦めるしかありませんでしたが、事後重症請求(障害認定日には障害要件を満たさなかったが、あとあと障害要件を満たしたとして、請求するもののことです)として障害年金の請求を行うこととしました。
 もしあの1回目の請求で支給決定されていれば、妻の経済的な不安が軽減されて治療に専念できていたかもしれません。そうなれば症状が現在よりも良くなっていたのではないかと思います。障害年金は経済的な基盤を整え、治療に専念できるようにするという一面があります。そのため、医師には面倒な診断書の依頼がきたとは思わず、治療に役立つものとして障害年金の請求には協力的であってほしいものです。
 もちろんほとんどの医師は協力的であると思いますが、中には障害年金の受給を快く思っていない医師もいるとネットの情報ですが書き込みがありましたので、全員がそうであるとは限らないということでしょう。
 どのような医師に診てもらうか、障害年金の請求にあたっては大変重要ですので、評判等を考慮して病院を選ぶことはもちろん、話を全く聞いてくれないなど不誠実な医師にあたった場合はすぐにかえる、反対に誠実な医師とはできるだけ長くお付き合いをするなど臨機応変な対応が必要かと思います。

③手続方法について

 妻ははじめ、区役所に相談に行きました。
 しかし対応があまりよくなかったようです。
 区役所の相談員の知識のレベルはおそらく年金事務所の相談員と比べると劣ると思われます。
 したがって年金事務所に相談に行かれる方がいいと思います。
 年金事務所は予約制です。あらかじめ連絡して日程を決め、代理人が相談に行く場合は委任状を準備していきましょう。
 また、相談をするにしても、何を相談したいのかを決めておくといいでしょう。そのためには前提知識をインプットしておき、提出物もあらかじめ整えて、書き方がわからない箇所や理解ができないところを聞くようにするといいと思います。予約制のため相談の時間は貴重なものですから、準備を怠ると後悔する可能性があります。
 私の場合は必要書類はあらかじめ調べて、書類もある程度書いた上でわからないところを相談しました。また妻の情報は全て持ち出ししました。情報は例えば、今までの職歴(厚生年金の被保険者期間等を確認されますので、あると正確に答えられます。)、受診歴(いつ、どこの病院を、どのような症状で受診したのか、またいつまで通ったのかなど詳細に記録したものや、お薬手帳等関連書類を用意するといいでしょう)、マイナンバーカード、年金手帳、その他必要と考えるものです。
 相談される側の気持ちを考えてみてください。
 情報がない中で相談をされると一般的なことしか言えず、個別具体的な話までできないでしょう。
 そのため情報はしっかり用意したうえで、かつ障害年金の制度の概要を理解したうで行くようにしましょう。
 そして提出物の不足や記入の抜けた箇所の指摘を受けるようにしましょう。
 それから医師の診断書を準備し、指摘を受けたところなどを訂正して郵送か窓口で提出して完了です。
 郵送の場合はできれば簡易書留で送り、書類が受理されると年金事務所から受理された旨の通知書がきます。
 あとは、支給決定されるまで待つのみです。ちなみに支給決定まで3ヶ月以上かかります。
そして決定後はさかのぼってまとめて年金の支給がされます。
 年金の受給決定通知書が届いた時はすごく喜びました。妻も年金が支給されると決まったときは、その日は安心してか、よく眠れたようです笑


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