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世界最大のファンラン、C2Sを走る

今年もまたやってきた、C2S。

「C2S」なんて書くと、何かの暗号か?と思われるかもしれないが、City to Surf (City 2 Surf)というランニングイベントだ。

1970年から始まったこのイベント(なんと僕が産まれた年じゃん)、僕が初参加したのは2002年で、それ以来ほぼ毎年走っているのだが、今年走るにあたり、密かに目標を立てていた。それは、

60分を切る、

である。

このコースの全長は、14キロ。60分を切るには、1キロあたり4分17秒のペースで走ればギリギリで達成できる。

一般市民のランナーなら結構速いペースだが、僕は2014年から19年までの間は連続して60分を切ることができていた(といっても58-59分台と、いつも時計をにらみつつのゴールだったけど)。

これをいつまで続けられるのかな?と思っていたが、2020年からCovid-19の影響でイベントが2年連続で中止。

復活した2022年のレースでは、久々だからとにかく楽しもう!という気持ちのほうが大きく、タイムをそれほど気にせず走ったせいか、60分を少し越えてしまった。

あの時は状況が状況だったので、タイムは二の次、とても満足して走れたので良かったのだが、今年はまた60分切りを目指したい。

いつも出来てたんだから大丈夫じゃない?と思う反面、「どうも最近はあまり速く走れなくなってきてるんだよな…」という不安もあった。

フルマラソン、ハーフマラソンのタイムもここ2-3年は下り坂だし、なんといっても年齢が…もう50プラスだもんなあ。

僕にとって、ランニングは体力向上というより、景色のいい屋外を走ってメンタル改善を図る、というのが主な目的なので、トレーニングプランを作ってそれに沿った練習をする、ということはまずやらない。
もう若者ではないから、さすがにそれではタイムは向上しないだろう。

このまま、「楽しんで走る」にシフトするという手もある。ランニングは、誰かのために走るというものではないから、誰かに文句を言われる筋合いはない。

ただ、僕としてはもう少しジタバタしたいのだ。キツい思いをして、心臓をバクバクさせて、空気を思いっきり吸ったり吐いたりして駆けてみたいのだ。

というわけで、今回は普段のランニングの途中にスピード練習(2キロを力走する)をしてみたり、坂道ランをやったりということを嫌々ながらもやってみた。はて、この効果は出るのかな。

そして当日。わらわらと集まってくるランナーをかき分け、スタート地点に入る。

なにせ7-8万人がエントリーする大会なので、参加者はガチで走る人、ゆるりと歩くのがメインの人、という形でグループ分けがされている。
僕のグループは一般ランナーでは速いほうなのだが、その中でもなるべく前の方に入る。

群衆の中、運良くランナー友達と遭遇できたので、スタートまで雑談などをしながら待てた。一人だと手持ち無沙汰で困るので、これは助かった。

さて、スタート前の主催者挨拶、先住民代表によるWelcome to the Country(この地に住んでいる先住民をリスペクトし、我々いわばよそ者を歓迎する、というスピーチ。最近は公私に渡る行事の前にたいてい行われる)、国歌斉唱のあとに、いよいよスタート。

この写真を見ても分かる通り、かなりの人数が走っているが、速いグループ、更にそのグループの中でも前の方にいたので、いつもだと自分より遅いランナーを縫うようにして走らないといけないのだが、それがほとんどなく、スムーズに流れていく。これは助かる。

このコースは、6-7キロ地点にかなりの急坂が1キロ弱ある。ここをどうしのぐかが60分切りの鍵だな、と思っていたので、作戦としては、

「前半飛ばせるところは飛ばして貯金をし、後半粘る」

で行こうと思っていた(余り作戦というほどのものではないけど)

というわけで、今回はあまり景色などを見る余裕はなかったし、沿道にいるプロのカメラマン相手にポーズを取る、ということも余りしていなかった…と思ったが、ここに載せた写真でも分かるように、ちゃんとカメラ目線を送ってるじゃないですか。

このレース、沿道のあちこちでバンドの生演奏やDJがあるのも楽しみのひとつなのだが、我々のグループはスタートが早かったせいか、多くのバンドはまだ準備中だった…こら!

例年はちゃんと演奏していたんだけどな…今年は皆さん寝坊したのかしら?

さて、ランニングウォッチをちらちら見つつ、頭の中でタイムの計測をする。

きつくなると空を見た。この日は雲の多い日だったが、その分直射日光に当たらないのでしんどくないし、ほぼ無風状態だったのでとても走りやすかった。

閑雅な住宅地を抜け、ついにハートブレイクヒル。本当に急な坂なので、もちろんペースは落ちるが、気持ちは落とさないようにガシガシと登っていく。うん、いい感じだ。

登りきったところでチラリと時計を見ると、おお、このまま行けば60分を切れそうなペースだ!

ただ、さすがにしんどくなって来た。

ハートブレイクヒルが終わってやれやれ、と思ったのもつかの間、小さな坂はこの後もちょいちょい出現し、距離は短いもののいちいち苛つく。

面白いもので、ちょっとでも気が弱くなってくると、悪魔のささやきが頭に浮かんでくる。

「もうここまで頑張ったんだからいいじゃん。ゆっくり行きなよ…」

ああ、そうしようかな…という弱気が出てくるが、ブンブンと頭を振り、それを否定する。

「今年はやり切る、と決めたからやる!」

キッという感じで、空を見る。おお、雲が多いけど、やはりキレイだ。

いや、こうして走れるなんて、やっぱり幸せだよな…ヨシ!

と気持ちを切り替え、ペースを上げる。もう少し。

最後の登り坂を走り抜けてカーブを曲がると、今度はボンダイビーチに向けて延々と下り坂が続く。

下り坂でヘタな走り方をするとけがをするけど、タイムを稼ぐ最後のチャンスでもある。ここは重力に身を任せ、駆け下りる。

あと一キロ。周りのランナーも、怒涛のようにゴールを目指してペースを上げる。時計を見ると、やった!60分を切れる!

前方にゴールのゲートが見えたときの気持ちは、なかなか文字にすることは難しい。本当に色々な感情が湧き起こるのである。

下の写真の僕の表情を見るのが一番わかり易いかもしれない。まさに、ランナーズハイである。

結果は、58分38秒と、59分も下回るタイムであった。しかも、この記録は僕としてはこれまでで2番めに速いタイムである。

ゴールした後、メダルをもらい、ラン友と合流。みな、良いタイムで走れたようでとてもいい表情だった。僕もそんな表情なんだろうな。

達成感に満たされたふわふわとした気持ちで、ランナーでごった返すボンダイビーチを後にした。

さて、この後はもちろん冷たいビールである。これを飲まなくては、ランニング大会を終えたことにはならぬのだ。

さて、来月はシドニーマラソン…フルマラソンだ。

ええ~!今度は42.195キロ走るの?と自問自答し、ややげんなりとするのも事実だけど、楽しく且つ精一杯走り抜けたい。

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