マウンティングする女①

 私の通っていた看護学校は半数が社会人経験者で年齢も20代後半から40代前半まで様々だった。  
もちろん女子が多く社会人男子は3人だけだった。
女という生き物について理解して頂けたらその実例を紹介しようと思う。
看護の世界というものは基本的に女、女、女だ。
女しかいない。最近では男性看護師も増えてはいるがまだまだ少ないのが現状だ。
その中で比較的年齢の近い2.30代女子が12.3人いた。
既婚者は私を含めて4人であとは独身と、シングルマザーが2人いた。
既婚者の中の4人中2人は子供がいて、私とAは比較的年齢も若く既婚だが子供は居なかった。年齢もAは私の1つ上だったと思う。私は元百貨店のアパレル店員でAは美容部員をしていた。境遇が似ている為かAは私に仲良くなりたいのか近づいて来た。私は元々予備校時代の友だち3人がたまたま同じ学校に入学し、たまたま同じクラスになった為その3人と仲が良かったので特にAと関係を築きたいと思ってはいなかった。そもそも別に友達を作りに看護学校に入ったわけではないので人付き合いが嫌いな私は、極力色んな人と交流を持つことを避けたかった。

 入学して2日目くらいにAは私に旦那の職業を聞いて来た。私の旦那は医療関係者だが臨床に出るような技術職ではない。だが医療関係者なら必ず知っている職業である。私は正直にそう言った。特に隠す必要もないし、言ったところでべつに自慢になる程の仕事でもない。普通のサラリーマンっちゃあサラリーマンである。Aの旦那は自営業をしていると言っていた。興味がなかったので聞かなかったにも関わらず相手は自分のことをペラペラと話しだした。海外旅行が趣味だの、英語が話せるだの、全部自慢だった。いや、自慢だ、と私は捉えた。
私は海外は小さい頃に家族でハワイに行ったことと、大人になってからは韓国(激安LCCで)しか行ったことがなく英語も話せないし、なにより飛行機が乗れないので遠くの国には行けない事を伝え、旦那も普通のサラリーマンな為、特に自慢するような事はなかった。へー、凄いですね、というセリフが自分でも驚くほど棒読みだった。
 続いてAは旦那の車の車種について聞いて来た。Aの旦那の車はジャガーだと言った。私は車に全く興味がないし車種を聞いても分からない、ジャガーと言えば横田しか知らなかった為、聞き流していた。そして私の旦那は車を所持していない。というより所持できない。免許の更新を忘れていて運転免許証が失効したからだ。これを言うとそんなやつおるん?!とめちゃくちゃ驚かれるので旦那の沽券に関わる為一応言っておくと、特にずぼらな人間なのではなく住所変更を忘れていた為更新ハガキが届かなかったのだ。それでもズボラと言えばズボラだが、これまた包み隠さず言った。私自身は免許は持っているが地元の田舎でしか運転経験がない為車の所持はない。そもそもマンションの駐車場代に目を剥いた。1番安くて1.5万なのだ。出入りがしやすい場所になると2万になる。そんなアホみたいな金額を出してまで車の所持などしたいと思わなかった。うちの地元では駐車場代など月極3千円だ。最悪その辺に停めていても別に文句の言われる環境ではなかった。というような事をA話したと思う。
 そして極め付けだ。Aは私に今住んでるマンションをいくらで買ったか聞いて来たのだ。鈍感な私はここで気が付いた、この人はおかしい。昨日今日知り合った他人に対してする質問ではない。失礼が過ぎる、と。そしてこれが俗に言うマウンティングか、と。

この記事が参加している募集

スキしてみて

ノンフィクションが好き

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?