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[書評] プロフェッショナルは「ストーリー」で伝える -4/6-

THE STORY FACTOR(4/6)

前回に引き続き、ビジネス書籍の プロフェッショナルは「ストーリー」で伝える を紹介していきます。

【ストーリー】賢者と僧侶

ほとんどの人は、相手の話を聞いているつもりでも、実際には聞いていなかったり、上手に聞けていなかったりする。「聞くとは、自分が話す番を待つことである」という発想に陥っている人は多い。
目に見える結果や数値で測定できる結果しか評価されないこの世界で、私たちは聞く技能を上手く学べずにいる。

「聞くということは、自分の話す順番を待つこと」つまり、会話において「話した者勝ち」というイメージを感じている人は多いと思います。実際、たくさん話す人の方が人気があったり、周りに人が集まったりする場面が多いように思います。一方で、たくさん話をする人でも聴き手にとってメリットのない話題が多い人は人気がなくなり人が離れていきます。自慢話ばかりする人がこの典型的な例です。重要なことは、自分が伝えたいことと、相手にとってメリットのあることをしっかりとミックスしたストーリーを考えることです。そのためには、相手の話を聞くことはもちろんですが、相手の趣味嗜好に興味を持つこと、その日の機嫌などのメンタルコンディションに至るまで注意深く把握しておくことが大切です。この考え方をベースに持ち合わせておくと、必然的に一方的なコミュニケーションにならずに双方向のコミュニケーションが増えていきます。

既存のストーリーを語らせる

上手に話を聞けば、相手は自分の思考を再検討し、どうしてそういう結論にいたったかに目を向け、古い思い込みを捨て、新しい結論を導き出す。ところが、聞き方の下手な人は、相手の思考にずかずかと踏み込み、相手の抱えている問題を攻撃してしまう。
その人のストーリーを語らせたいなら、本当に知りたいという思いを込めて、問いを発しなくてはならない。

ストーリーを語るには双方向のコミュニケーションが重要であるということにも強く関連しますが、まず最初に相手に興味を持つことが出発点です。相手に興味を持つと何らかの自分との共通項が見つかったり、もっと相手の考えていることを知りたいと考えるようになります。さらに、しっかりと感情を載せてその人に質問を投げかけ、理解を示すことが自然にできるようになります。「人に興味が無い」ということがストーリーテラーの最大の弱点になるので、もしこの性質を自覚している人は頑張って弱点を克服することをお勧めします。

ストーリーを台無しにする聞き方

あなたが、「聞く」という行為を相手を打ち負かす手段として用いようとすれば、相手はすぐ危険を察知し、自分の考えの不確かな部分は口にしなくなる。むしろ、自分の考えを守るために高い壁を築くだろう。
聞く姿勢は、装うことができない。相手に対しては、常に心からの敬意と好奇心をいだくべきだ。

これも、ストーリーを語るには双方向のコミュニケーションが重要であることと強く関連しています。この正しく聴く姿勢が出来ているかどうかは、話を聴いた後で自分の語るストーリーが修正できているかどうかですぐに気付くことができます。相手が話してくれた内容を聴いた後でそれに対抗するようにストーリーを語ってしまうか、相手の話してくれたストーリーに合わせてストーリーを修正して伝えられているかが大きな分かれ目です。繰り返しになりますが、相手に興味を持つことが出発点です。どのような人でも、人それぞれの人生を経験してきており、話し手にはない知識を必ず持っています。総合的には自分の方が優れている・恵まれているといった真理的なバイアスを乗り越えて、双方の共通項を見いだしたり相手の方が優れている点を見つけて聴き出すように工夫するとコミュニケーションが活発になり相互理解が進みます。

パンドラの箱を明けた責任

ストーリーの力を悪用して、非倫理的な方法で他人に影響を及ぼしたりしようとすれば、あなたのストーリーはいつか苦い結末を迎える。
ストーリーの力を正しく用いなかったために、栄光から転落した例は数知れない。自分がすべての正解を知っていると思い込んだり、自分が叡智の伝達者以上の大きな存在だとうぬぼれたりするのは大間違いだ。

ストーリーを語る目的は、常に自分の利益のためではなく他者の利益のためだという感覚が重要です。この感覚を持っていれば、自分の都合の良いストーリーを語ってしまうワナから距離を置くことができます。相手に説得力を持って伝えるときに、他者を貶めるようなストーリーやその場かぎりで適当なストーリーを語ってしまうと、相手が最初は良い反応を示してくれたとしても信頼関係を継続させることが難しくなります。特に説得が上手になってきたときや、人が自分の意見を聞いてくれるようになり始めたときこそストーリーの悪用に陥りやすいので気を付けたい所です。

退屈させない

ストーリーの語り手が犯す最大の罪は、聞き手を退屈させることだ。長すぎるストーリーや、どこに向かっているのかわからないストーリーは退屈きわまる。聞き手のことを忘れたり、自分自身の心理セラピーのために話したり、自分の苛立ちを吐き出そうとしたり、恐怖で自分の想像力が萎縮してしまったりすれば、あなたという人間も、あなたのストーリーも、退屈だと思われてしまう。

伝えたいことが重要で沢山あるときには、ストーリーが長くなりがちです。また、一回のストーリーの中で同じ様な内容になったり、話し手自身の話が多く入り過ぎたりすると相手が退屈に感じてしまいます。常にストーリーが話し手のためではなく、聞き手のためであることを意識することです。また、話している最中に相手が退屈していることを察知したら、すぐにストーリーの構成や内容を修正することも重要です。
但し、自分の話が退屈かどうかを聞き手に直接問うことは絶対にしてはいけません。むしろ、それを察知してストーリーをこっそり修正して話を続けてくれる方が、相手との信頼関係を強める効果を生むことになります。

恐怖心や罪悪感をもたせない

ストーリーを通じて相手に恐怖心や羞恥心をいだかせ、そこから行動を起こさせるというテクニックを用いる人がいる。短期的にはともかく、長期的には逆効果の手法だ。この種の感情を過剰に注ぎ込むと、しまいには相手が行動できなくなってしまう。恐怖心や罪悪感は、人を「前に進ませる」感情ではなく、「遠ざける」感情だからだ。

これも、ストーリーは常に自分の利益のためではなく、相手の利益のためのものだという感覚を持ってさえいれば回避できるワナのひとつです。恐怖心や羞恥心は、話し手が聞き手に感じさせるものではなく、聞き手が自ら感じる様なストーリーを伝えることが大事です。

希望をもたせる

人を動かすために大切なのは、明快なメッセージでもなければ、戦略プランや課題リストでもない。ましてや、意思の力でもない。聞き手に成功を信じさせ、希望をもたせるストーリーを語ることだ。それができれば、一点の曇りもない明確な主張ができなくても、緻密な戦略プランを示せなくても、意思決定が全会一致でなくても、意思の力に全面的に依存しなくても、目的は達せられる。

人を動かすときに、話が上手である必要はありません。また長い話をする必要もありません。聴き手が「動いてみよう」と思うきっかけを掴ませるキーワードがあれば十分です。ポイントは人から言われたからやるのではなく、人から言われたことをきっかけに自分で気付いてやるというプロセスになるように話すことです。明確な答えがないストーリーでも、話し手の伝えたい熱量だけで十分に人を動かすことはできます。
大勢の人が聴き手になるときは、出来るだけ沢山の人が共感できる汎用的なストーリーや例え話をすることも有効です。聴き手全員が共感できなくても、共感してくれた人がストーリーを編集して伝えたかった意思を他者に広げてくれることもあります。


ー この書評は、次回(5/6)に続きます ー



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