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69

 「69 Sixty Nine」僕が高校受験浪人中に出会った小説です。村上龍さんの作品ですが、内容を知っている方なら高校に進学する前に読めばどのような影響があるかはおわかりいただけるのではないでしょうか。僕は小さい頃からよく本を読む子供でした。中学生になると父親の書棚にある小説等を引っ張り出して読むようになりました。そこで出会ってその後に一番影響があったのは村上春樹さんの小説です。人には公言していませんが今に至るまで僕はハルキストであると自認しています。そうなのですが村上龍さんの小説にもその後の生き方を左右してしまう力強さがありました。先に投稿した「神の啓示」に記したことですが、洋楽ロックへの扉を開けたばかりの僕が読んだ小説でした。

 ある日のこと書店に行くとピンクの表紙に青い文字で69と書かれた文庫本が平積みされていました。なんとも卑猥な表紙ですが、手に取り目次を見てみました。目次に踊っていたのは、アルチュール・ランボー、アイアン・バタフライ、レディ・ジェーン、ジャスト・ライク・ア・ウーマン、チープ・スリル、レッド・ツエッペリン、ヴェルベット・アンダーグラウンド...アルチュール・ランボーは詩人ですが、他は大半がミュージシャンの名前や曲名でした。名前やタイトルだけは知っているものもありましたが、ほとんど聴いたことはないものばかりでした。迷うことなく買って帰りました。

 内容についてはあまり書かないでおこうと思いますが、1969年のベトナム戦争に揺れる米軍基地のある街、佐世保を舞台にした高校生の青春小説です。読んでから僕はこんな高校生活を送りたいと願うようになりました。

 当然ですが僕の教科書になりました。Rolling Stones、Cream、Bob Dylan、Jimi Hendrix、Janis Joplin、Led Zeppelin、Spencer Davis Group、Paul Revere & The Raiders、Velvet Underground、Iron Butterfly、Procol Harum、Vanilla Fudge、少しずつですが聴いていきました。映画はゴダール、ケネス・アンガー。ポップアートならウォーホル、ロイ・リキテンシュタイン。まだ見たことも聴いたことも読んだこともないものたちが文章の中にちりばめられていました。その暗号を解くために、それらを調べていく生活の始まりでした。そして1960年代は世界的に革命の時代、学生運動というものに対する憧れが芽生えました。結果として加速度を上げて1960年代に傾倒してくことになりました。

 高校受験浪人は人にはあまり会わなかったのでかつての同級生から受ける影響も皆無だったと思います。その中で自分が偶然にも「69」に出会ってしまったのでした。流行からは逸脱してしまったのかもしれません。でもそれが後の人生における重要な人との出会いに大きく影響していくことになるとは、僕は知る由もありませんでした。


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