見出し画像

煙たなびく湾 1

これは、僕が箱庭の世界を拡張するために、アイスランドを一人で旅した物語である。

僕は一人旅の時は旅行ノートをつける習慣があり
、誰にも見せるあてのない正直な気持ちを一眼レフの写真とともに記録していた。

今回はこのノートを参照しながら少し客観的に、彼の考察を含めながら書いていきたいと思う。

なぜアイスランドか

ダンサーインザダークという映画をご存知だろうか。後味の悪い映画ランキングなどで必ずと言っていいほどランクインする、人間の業と親子の愛を強烈に描いた作品だ。
この映画の主役で、カンヌ映画祭の主演女優賞を受賞したのが、アイスランド出身のビョーク(Björk Guðmundsdóttir)であった。

ビョークは元々音楽家だが、この映画では希望も絶望も真っ直ぐに生々しく演じ、そして信じられないほど魂を込めた歌を歌った。
しかもアカデミー賞の受賞式では白鳥を体に巻き付けた謎のスワンドレスを纏い、持参した卵をレッドカーペットに並べて遊ぶという天衣無縫の天才っぷりであった。

アイスランドからはるか彼方のとある国に、この映画のインパクトに心を掴まれ、世界の果てにあるファンタジーの国を夢想する男がいた。
彼はいつしか大人になり、働きはじめると、ある程度まとまったサラリーを手に入れるようになった。

彼は思った。
憧れていたアイスランドに行きたい。
オーロラを見ながらビョークの歌を聴きたい。

冒険の下準備

彼はお金にルーズで夢想家だったが、やりたいことに関しては異常な執着を見せる男だった。

さっさく彼はHISに行き、アイスランドまでのフリーツアーを申し込む。
そして先輩から教わった中野のフジヤカメラに突撃。全くの素人だがオーロラを撮りたいと無謀な宣言をした上で、ニコンのfm3というアナログカメラとレリーズと三脚を入手した。
さらには免許センターで国際免許を取得するなど、準備は特急で進められた。

世界の果ては見つかるのか
続く

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?