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#36『”見つめるだけで終わった恋”SHISHAMO「第3ボタン」を語る』

今回は2013年にデビューアルバムの発売に合わせてリリースされた、SHISHAMOの高校生時代の自主制作CD「卒業制作」の中から「第3ボタン」という曲について語っていきます。

この曲を簡単に説明すると”好きな人を遠くから眺めることしかできない女の子の心情”が描かれています。よく学生服の第2ボタンを好きな人に渡したり、好きな人から貰うという話を耳にしますよね。でもこの曲のタイトルになっているのは「第3ボタン」であって、果たしてどういう意味を指しているのかが注目ポイントになっています。残念ながらMVはありませんがYouTubeにて音源がありますので載せておきます。

それでは語っています。

一番Aメロの歌詞

君の匂いを知らないよ
だから忘れることないよ
すぐにどこかに行ってしまう君を
この手で引き留められたなら
何もいらない
何もいらない

「第3ボタン」作詞:宮崎朝子

「君の匂いを知らないよ だから忘れることないよ」というフレーズ。普通、好きな人の匂いって記憶に残りますよね。つまり、いつも遠くから眺めることしか出来ない存在だということが読み取れます。

その後の「すぐにどこかに行ってしまう君を この手で引き留められたなら 何もいらない」というフレーズからは、声すらかけられない臆病な自分にうんざりしている様子が伺えますよね。

一番Bメロの歌詞

下駄箱でいつもトロトロ靴ひも結んでる
理由考えたこともないのでしょう

「第3ボタン」作詞:宮崎朝子

好きな彼が帰る瞬間を待ち伏せしているということがわかります。本当に話せなくてもいいから一目彼の姿を見れるだけ十分嬉しいんですよね。

一番サビの歌詞 

君は何も知らなくていい
知らないままサヨナラでいいの
こんな惨めな私の気持ち
どこにも行けないまま腐ってけばいい
明日になったって迷子のままだよ

「第3ボタン」作詞:宮崎朝子

「君は何も知らなくていい 知らないままサヨナラでいいの」というフレーズから主人公が好きな彼というのは卒業してしまう先輩だということが分かります。卒業してしまっては好きな気持ちが行き場を失いますよね…。「どこにも行けないまま腐ってけばいい」という表現がちょっとやさぐれている感じがして宮崎朝子らしい歌詞だなと思います。でも、彼にとっては主人子が好きだということ以前に主人公の存在すら認知していないでしょうから、主人公は勝手に盛り上がって何もすることが出来ないでいる自分に惨めさを感じてしまうんだろうなと思います。

二番Aメロの歌詞

君の声を知らないよ
だから思い出せないよ
あの日階段ですれ違った時に
声をかけられなかったのは
ただ怖いから
ただ怖いから

「第3ボタン」作詞:宮崎朝子

「君の声を知らないよ だから思い出せないよ」というフレーズからおそらく同じ学年やクラスメイトでもなく、部活動での交わりも何もない男の子に一目惚れしたんだろうなということが読み取れます。やっぱり接点が同じ学校に通っているだけという人に声をかけるってハードルが高いですよね。

二番Bメロの歌詞

こんなに君のこと見つめてるのに
目が合わない理由
考えたくもないんだ

「第3ボタン」作詞:宮崎朝子

どうなんでしょうか。主人公の女の子は彼を見つめていたと思うんです。彼からしたら少なからずそういう視線に気が付きそうですけど気付かないものなんでしょうかね…。それとも視線に気付いてはいたけれど、特に気が無かったから目が合わなかったということなんでしょうか…。主人公はもしかしたら気がないことも分かっていたのだとしたらかなり切ないですね。

二番サビの歌詞

誰にも言えない
本当の気持ち
情けなくって涙があふれた
本当はずっと君のことだけ
うしろ姿をただ見つめていたい
君は私の名前さえ知らない 知らない 

「第3ボタン」作詞:宮崎朝子

こういう時に相談したり、ただ話を聞いてくれるような友人がいたら気持ちが楽になるんでしょうね。この主人公は自分で抱えて凄く苦しそうですよね。

「本当はずっと君のことだけ うしろ姿をただ見つめていたい」というフレーズ。なんだか少しわかる気がします。もちろん彼と親しくなりたいとは思っているんでしょうけど、ただ遠くから彼を見るだけという距離感くらいが以外と楽しいというか、ちょうど良かったりするんですよね。

「君は私の名前さえ知らない 知らない」が彼との交わりが一切ないことを表現していますね。

Cメロの歌詞

あの腕もあの首もその襟足も
全部私のものになる
都合のいい夢
いやんなっちゃうなあ

「第3ボタン」作詞:宮崎朝子

腕と首と襟足って3つとも絶妙なパーツの選択ですよね(笑)。いい夢見れたら嬉しいけれど、目が覚めると現実とのギャップに”はぁ~”ってなっちゃ
いますよね。

最後のサビの歌詞

本当は本当にもう会えないってこと
分かってるのに知らないフリしたの

あの日が最後なの知ってたのにね
どうして私は
もう意気地なし
私は君に何も伝えられなかった

「第3ボタン」作詞:宮崎朝子

もう会えなくなると分かっていながらも、何も伝えることが出来なかったという展開でこの曲は終わります。もどかしいですね。

まとめ

好きな人に声すらかけることが出来ないまま終わってしまった女の子が描かれていましたね。やっぱり何も交流がない相手に恋に落ちて、そこからアタックしていくってかなり勇気がいりますよね。

君の匂いと声を知らないという表現が個人的に良いなと思っていて、それだけで二人がどういう距離感なのかが直ぐに分かるじゃないですか。ボーカルの宮崎朝子は情景を端的に表すのが本当に上手いなと思います。

なぜ「第3ボタン」というタイトルにしたのかは歌詞の中で明かされていませんでした。そもそも学生服のボタンにはどのような意味があるのか調べてみました。

  • 第1ボタン 自分

  • 第2ボタン  一番大切な人

  • 第3ボタン 友人

  • 第4ボタン 家族

  • 第5ボタン 他人

といった意味があるそうです。卒業の日に第2ボタンを好きな男性から貰ったりするのはそういうことなんですね。

でもこの曲のタイトルは冒頭でも言ったように「第3ボタン」なんですよね。まず、歌詞から推測するに、声をかけることすら出来なかったことから第2ボタンを他の女の子に取られて、代わりに第3ボタンを貰ったという訳ではなさそうですよね。つまり、第2ボタンの意味「一番大切な人」以前に第3ボタンの意味「友人」にすらなることが出来なかったことからタイトルを「第3ボタン」にしたのではないかと思われます。

正直はっきりとなぜ「第3ボタン」なのかは定かではありませんが、普通だったら「第2ボタン」という曲を作りそうなところをそうしてこないあたり、この時(当時高校生)から既に宮崎朝子はやはり只者ではないなと思います。

そして、CDデビュー10周年イヤーの締めくくりLiveとして2013年11月11日に開催された”SHISHAMO 10th Anniversary Final Live「FINAL!!!‐10YEARS THANK YOU-」で卒業制作の中から「宿題が終わらない」と今回取り上げた「第3ボタン」を披露してくれたんですよね。そしてこのライブ映像が2024年4月10日にリリースされることになりました。YouTubeにてダイジェスト映像あるので載せておきます

皆さんも是非「第3ボタン」を聴いてみて下さい。

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