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心の支えはどん底な時にわかる

窮地を救ってくれるヒーロー

どん底なら這い上がるしかねえ

人間、どん底だと思う時期が人生に何度かある。
そんなとき、救ってくれる人はいるだろうか。

私にとっては、高校からの友人がそんな存在だ。

彼とは高校一年生の時に出会った。
正反対な性格の彼は、いつも明るく、周りに人が絶えなかった。
羨ましく思ったことも、一度や二度ではない。
「彼のようにはなれない」
私は彼をそんな目で見ていた。

正反対だったことが幸いだったようで、彼は私に興味を持ってくれた。
友人になるのに、まったく時間はかからなかった。

私の中では、彼は憧れの存在だった。
彼のことが憧れに変わったきっかけは、『合コン』だった。

高校は男子校だった。女子は保健のおばちゃんただ一人。しかも還暦を迎えたような容姿をしており、女子と呼ぶには40年遅い。
男子校だったため、彼女がいる友人もほとんどいなかった。(と認識していた)
そのため彼女が欲しければ、近隣の女子校との『合コン』しかなかった。そんな合コンのセッティングをするのは、彼女がいる奴がその彼女の高校とセッティングするか、女子校に女友達がいる奴がその女子校とセッティングする。
ほとんどはその二択。

合コンは争奪戦だった。
地元には当時、『三大お嬢様学校』が存在しており、その三校との合コンは特に争奪戦だった。じゃんけんという、古典的な方法で選抜されるのだが、単純明快な方法だからこそ奥深い。この時ほどじゃんけんを研究したことはなかった。初手は『チョキ』を出す確率が何%だの、『あいこ』のあとは『パー』の確率が何%だの、研究に研究を重ねていた。
それほど苦労して『合コン』の権利を勝ち取ったにも関わらず、いざ合コンが始まると話せない。なにせ中学以来、女子とは話していない。圧倒的に実践が足りない兵士と同じだ。

それなのに、彼は違った。
流暢に喋るし、笑いもとる。キムタクと明石家さんまが同居している彼をみた時、「負けた……」と思った。イケメンなコメディアンに勝てるはずがない。
悔しさよりも尊敬し、憧れた。

そんな彼はアクティブで、いろいろなことを共に経験させてもらった。
合コンはもちろん、柔道やカラオケ、料理や好きな本まで。

カラオケなどは毎日のように通った。
当時は『カラオケボックス』なるものが登場したての頃で、物珍しさも相まって、完全にハマっていた高校生は多かった。
そこでは十八番『大きな玉ねぎの下で』を歌い、歌唱力を磨いては、合コンのカラオケでは気合を入れていた。
まあ、それでも話せなくては意味がなく、結局コミュニケーションが上手いやつが女子をかっさらっていった。そんな中に彼もいた。
彼の優しさで女子を紹介してもらうこともあったが、紹介してくれる女子も彼のことが好きでついて来る子を紹介してくれる場合が多かった。彼と比べたら、私のスキル程度では1日持たずに飽きられた。

女子だけではなく、友人としてもコミュニケーションに長けていた彼と時間を積み重ねるうちに親友となっていた。
元々人を寄せ付けない私は、人と関係性を深めるのに時間がかかる。
しかし彼とだけは、本当に『知らないうちに』親友となっていたのだ。
人の心に入り込むことも得意で、意識せずとも親しい関係になっていたことで、彼はかけがえのない存在となった。

彼とは、高校を卒業しても友人関係を保っていた。偶然の再会などもあったお陰なのだが、それでも30年である。長いようで、長い。

思えば私は、誰にも話せないことを話す相手として、彼の存在があった。
窮地に陥ると助けてくれるウルトラマンであったが、心の中にもウルトラマンが棲みついていたのだ。心の支えとなっていた。

今の彼とは常に一緒にいるわけではないのだが、私が窮地に陥ると必ず現れるという関係性で、ここまで共に時間を積み重ねた。いわば、ウルトラマンみたいなものだ。

以来、私が住む場所をなくしては自分の家に居候させてくれ、働く場所をなくしては自分の会社に呼んでくれた。
私が好調な時にはほとんど顔すら見せず、窮地に陥ると知らないうちに目の前にいる。

こんな友人がいることが、私は誇りに思う。
私は築き上げてきたものもなく、地位もお金もないが、この友人を持てたことが何よりも誇れることだと心から言える。

その場を救ってくれるだけではなく
「どん底なら這い上がるしかねえじゃねえか! 」と勇気までくれる。
立ち上がるまで見守ってくれ、歩き出すまでみていてくれる。
「友達は多い方がいい」と聞くが、本当に窮地になっても救ってくれる友人が一人でもいたら、人生というのは捨てたもんじゃない。

「この人のために生きよう」

そう思える人がいる。
救ってくれるからじゃない。
何度転んでも、立ち上がる勇気をくれた彼。
彼が転んだ時に、今度手を差し伸べるのは私だ。
その時が来るまで、頑張って生きよう。

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