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覚悟を決めると人は変わる

一生懸命に目を向けると暗闇を歩くことになる

どんなことでも、一生懸命やるようにしようと考えるようになったのは、小学生の頃だった。
学校の先生から言われた言葉が胸に残る。

「どんなに些細なことにも、一生懸命取り組みなさい」
運動会の準備をしているとき、入場門の制作をあまりにもダラダラと時間を使ってやっていた生徒たちに向けて、先生がとても静かに、注意した。
入場門なんて、あればいいだろ、くらいにしか感じていなかった私たちは、まさに“てきとうに”作っていたのだ。
冷静に、先生に注意されたことによって、緊迫感が増したこともあり、それからは誰一人、喋る者はおらず、皆が無言で一生懸命に制作し、色を塗った。
するとそこには、誰もが絶賛するほどの、入場門がそびえ立っていたのだ。このときの入場門の美しさは、今でも、まぶたの裏に焼き付いている。

しかし本当は、「何事も一生懸命やる」という意味が、ほとんど理解できてなかったかもしれないし、その覚悟が、私には無かったのかもしれない。

自分で選んだことなのに、気持ちが入らないことがある。
どう工夫しても、気持ちが入らない時には、何をやっても入らない。
そんな時には、結果というものがついてこない。
時間を無駄に過ごしているだけだった。

入場門の美しさを覚えているのに、勉強は頑張ることができない。
周りの友人たちは、一生懸命やっていることを、自分は頑張れなかった。
学習塾に通ったり、人に教えてもらったりもしたが、結局最後まで頑張れなかったのだ。

勉強を頑張ることができないのであれば、本くらいは読もうと、一生懸命読んだこともある。
ただ、一生懸命読んだところで、何も変わらない。いや、変わっているのかもしれないが、自分自身、何も楽しくない。
本を読むことは好きなのに、一生懸命読んでいると楽しくなくなる。
これは一体、どうしたことだろうか。

入場門を作ったときには、一生懸命行なったことで、達成感も生まれ、輝くほどの美しい時間を過ごすことができた。それに加えて、誰もが絶賛するほどの造形物ができたではないか。
勉強は一生懸命出来ないし、読書は一生懸命やることで、楽しいものでは無くなってしまう。
この違いはどこにあるのか、わからないまま学生時代は終わってしまった。

就職しても、一生懸命に苦しむこととなる。
目の前の仕事に文句も言わず、一生懸命やった。
愚痴も言わずに、歯を食いしばり、二度目の桜が散ったころ、私は疲れ切っていた。仕事に向かって、一生懸命やっていこうと思っていたのに、疲れて一生懸命できなくなっている。
仕事に向き合う事すら、難しくなるほどに、一生懸命どころではなくなってしまった。

一生懸命やろうと、気持ちを立て直し、仕事に向き合って、目の前の仕事に一生懸命に取り組む。
すると、やがて疲れてきて、疲れ切るまで働いては、気持ちが切れてしまう。
こんなことを、何年もの間、繰り返した。

何がいけないのか、まったく分からない。
目の前の仕事を、馬鹿にすることなく一生懸命向き合っているのに、自分はどんどん疲弊してしまう。
「私は社会不適合者なのか」
と、本気で思っていたこともあった。
絶望感にさいなまれ、真っ暗なトンネルを明かり無しで歩いているようだった。

すると、一筋の光が差した。
「努力を努力と思っているうちは幸せになれない」
イチロー選手がテレビで言っていた。
イチローは、私と同じ年だ。同級生には、少なからずライバル心があることもあり、私の心に突き刺さったのだ。
そして、その話の中で「覚悟」という言葉を使っていたのだ。
当時、イチローはメジャーリーグでプレーしていたことに対して、覚悟がないと結果なんてついてこないと発言していた。
胸を打たれた。
私に足りないものが、やっと分かったからだ。
それは、「覚悟」だった。
一生懸命やっていたことは間違いないが、「一生懸命やらないといけない」と思って、一生懸命やっていた。
努力を努力として、頑張っていたのだ。
そこには、覚悟がない。

「オレは、この道で生きていくんだ」
そうした覚悟が無ければ、努力は努力のままでしかない。
しかし、覚悟を決めることによって、努力ではなく、覚悟の上による行動になる。つまり、自分自身がやりたいと思ってやれることになるのだ。

これによって、私の中での一生懸命は、変化した。
思い返せば、覚悟が決まっていなかったことは、何事も上手くいっていなかった。逆に、覚悟さえ決まれば、何でも結果はついてきた。

私に足らないことが、覚悟だったと知った瞬間、運動会の入場門がなぜ、あれ程まで光り輝くことができたのかが理解できた。
あの時先生は、覚悟を決めることを、些細なことに一生懸命に取り組むことで理解させようとしていたのだ。
それを私は、一生懸命にばかり目を向けて、その先の目標を見失っていた。

覚悟を決めることができるようになったおかげで、今でも私は努力を努力と思わずに、愉しんでやれている。
今日も私は、早起きして執筆活動をしている。

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