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書くことの意味

苦しい思いをしてライティングを習ってまで書こうとするのは爪痕を残したい願望

「日記をつけています」
「すごいですね〜! なぜ日記をつけようと思ったのですか?」
日記をつけていると、必ずと言ってもいいほど質問される言葉だ。
なぜ、書こうと思ったのか。
この答えを、私は明確に答えることができなかった。
自分が熱中していることなのに、理由を問われた途端に、答えに詰まることがある。
「熱中していることに理由なんてない」
そう言ってしまえば、済んでしまうのかもしれない。
しかし、自分が熱中していることに理由がないと言うのは、底の浅さを露呈しているようで、なんだかつまらない。
書きたいと思ったことは事実だ。その理由を探ってみたい。

思えば日記を書き始めたのは中学2年の春だった。
この時、書き始めた理由は、初恋だった女性との記録を書き残したいという衝動にかられたためである。書かずにはいられなかった、というのが本音になる。
毎日書いているうちには、書くことをためらうような、残念な気持ちの日もあれば、目を背けたくなる現実を突きつけられる日もある。しかし、そんな時も書いてきた。
「きっと、明日はいい日になる」
そう信じることが、書くことへの活力だった。毎日書いてきた自分の努力を無駄にしたくないという気持ちも当然ある。これまで欠かさず書いてきたのだ。ここでやめては、もったいない、という気持ちもあることは間違いない。
しかし、それだけでは続かなかった。明日への希望が、一番の書くためのエネルギーとなった。
そうして書いていると、一つのことに気がつくことができた。
日々を過ごしていると、良い日もあれば嫌な日もある。良い日ばかりだと感じていると、良いことだと判断する基準が上がっているのだ。
つまり、「今日は良い日だった」と思いにくくなっているということ。よほど大きな良い出来事が無い限り、良い日だとは感じないのである。
反対に、悪い日の後には、ほんの些細なことでも「良い日だった」と心から思うことができることに気がついたのだ。
もちろん、悪い日は嫌だ。悪い日というのは、たった1日でも嫌だと思うし、良い日は何日も続いて欲しいと思う。
しかし、悪い日があるから、良い日を感じることができるのだと気づいたのである。
そういえば、「雨が降るから晴れの日が嬉しい」という言葉を聞いたことがある。
昔から言われていることだが、本で読んだから、この言葉を知っていることと、自分で体験して、この言葉の意味を知ることの違いの大きさを、実感することができたこともこの時たっだような気がする。

中学2年の時に、初恋の女性ができたことによって、書くことを覚えた。
書くことを覚えたことによって、雨が降ることの大切さに気づくことができた。
雨が降ることの大切さを実感することによって、本を通して学んだことを体験することによって、本物の自分の知識になるのだと知ることができたのだ。

しかしそもそも、書きたいと思ったのは、恋の記録という自己満足である。
自分が何を感じて、相手からどんな言葉を投げかけられたのか。
日記というものは、書いているだけで幸せな気持ちになっていく。毎日書いていると、書くことがない人いうものが出てくるのだが、必死に書くことを探すうちに、ほんの些細な出来事に気づくことができるようになる。道端に咲いている花に気がつくことができる気持ちを持っていることを、自分で知ることができるのは毎日を幸せにするのだ。
恋の記録はやがて、恋に留まることなく、私の人生に関わる全ての人に向けられた、私の記録になっていった。ほんの小さな出来事も対象になっていったからである。

日記を書いていく中で、自分が感じたことを書くことが得意となっていった私は、学校で出される読書感想文などは得意だった。
読書感想文を書いていくと、本で学んだ知識を体験することで自分の知識になっていくことを、日記によって学んだことが活かせた。
高校生の頃に、読書感想文で金賞を取ったあたりから、読書を通して自分の内面に迫る方法が、多くの人に評価されていた。それは、大人になってからも変わらなかった。
本で得た知識を、体験したことを書くことで、私は成長してきた。

書くことが私の人生には欠かせないものだった。
やがて私は、自分の人生を本にしたいと考えるようになった。
読書を通して、自分の人生を、内面から迫る本を電子書籍で出版した。とはいえ、自費出版である。他人から評価されたわけではない。
しかし、私が書くということに対して抱いているのは、書かずにはいられない衝動のようなものだった。書いた内容を「面白かった」と言ってくださった人もいた。しかし、赤の他人に伝えることは、できなかったのだということを、出版によって初めて思い知ったのだ。

今までは、『書くことは人に伝えること』だと思っていた。
しかし、人に伝えることは、伝える方法をいうものがあることを学んだ。自己満足で書いても、人の心は動かすことはできないのである。
だから現在、私はライティングを学んでいる。
出版した電子書籍を、「面白かったです!」と言ってくださった方がいらっしゃったものの、書くことで人の人生を変えることができる技術を手に入れたいと思っている。

自己満足ではなく、書いたものが末長く残っていく文章となって、爪痕として残っていくために。

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