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目標は自分を追い込む

具体的な目標を持つことは道のりを制限する

「10年後に年収1000万になる」
と手帳に書いてきた。
夢や目標は、手帳やノートに書いていくことで、実現する可能性が上がるという考え方の本を信じて実践してきた。
しかし、この方法は自分には合わなかった。

手帳というのは、スケジュールを管理するものである。
スケジュールとは、『未来のスケジュール』のことだ。
未来のスケジュールを書こうと思ったとき、どう考えるだろうか。
現段階の自分が、将来叶えたい理想的な状態になるために、欠けていることは何かを考え、必要な行動に落とし込んでいく。おおざっぱではあるが、そんなところだろう。

これを忠実に行なってきた。
夢は大きい方が良いという。どんなに遠い目的地でも、着実に一歩一歩、進める人なら問題はないが、今の自分にできることは知れていた。だから、足らないことだらけだった。
大きすぎる夢は、現実の自分を見れば見るほどに、遠ざかっていく。自分のできないことが目について、隣を走る人が、とてつもなく有能な人に見える。焦れば焦るほど、足がもつれるように、自分が空回りしているように感じる。

「焦らなくても大丈夫ですよ」
そんな言葉を投げかけてくる人のほとんどは、自分よりも前を走る人だ。
焦るに決まっている。焦らなければ、私の人生はここで終わってしまうんだぞ。どうせ、他人の人生だと思って、気楽にアドバイスしているんだろ。

「あなたには能力があるから、きっと成功します」
こんな言葉を投げかけてくる人も、そのほとんどは自分よりも前を走っている。そんな言葉を言っているあなたの方こそ、能力が高いじゃないか。能力の高い人から言われても、全然嬉しくない。

卑屈な思いが私の心を支配していく。
それでも、「夢や目標を高く持って、努力し続けた人が成功する」と言われ続ける。これほど辛いことはない。
ボロボロになっているのに、まだ進まなくてはいけないのか。
この果てしない道のりは、どこまで続いているんだろうか。

成功したいのに、隣の芝が青く見えてしまう。
これではダメだと思うのに、この感情を抑えながら行動するのは、生きていくことが辛くなるほどの苦しみとなっていく。
「この感情を、どうして抑え込んだらいいのだろうか」
いつしか私の目的地は、夢や目標ではなく、卑屈な思いが支配する自分の心を平常心に保った、平和な世界を目指していた。
「もう、成功なんてしなくていいや」
と、思った瞬間、吹っ切れたような気がした。

「具体的な夢や目標を持つのはやめよう」
そう考えたとき、急に楽になった。

今までは、10年後の目標、5年後の目標、3年後の目標、1年後の目標、半年後の目標、来月の目標を立てていた。
厳密な計画を立て、達成できそうな目標を立てる。それを毎月、毎週、毎日やる。すると、目標を意識できるため、目標達成のイメージが明確になるというものだ。

目標達成のための道を進んでいるときに、別の道が見えてきたとき、浮気をしていては、元々持っていた目標を達成することが難しくなる。具体的に、目標や目的をもって、行動を制限すると、目標達成の確率はあがる。夢や目標を持ったとき、その目標を、わき目も振らずに達成するのは、確かにカッコいい。
小説家として芥川賞に輝き、一流小説家として生きることは、多くの人があこがれる姿である。

しかし、私にとって、これは良いことではなかった。
具体的な目標を立てることは、とても息苦しかった。
私は人生で、経験したいことがたくさんある。それこそ、書ききれないほどにある。目標を一つに絞れないのだ。

やりたいことがたくさんあると、やりたいことが巡ってくるチャンスも多い。順序もバラバラだ。
「今はこっちの道を進んでいるから、そっちはまた後でね」と断っていたりすると、もうそんなチャンスは二度とやってこない。
「この道しかない」というのは、生きにくかった。

肩書がいくつもある人がいる。
小説家であり、俳優であり、アイドルであるなんて人もいる。恐らくそれらの肩書はすべて、本人がやりたかったことの延長線上にあったものだろうと思う。多くの肩書を持っている人は、なによりも生きていることが楽しそうなのだ。
「たった一つの大きな目標を達成しなければならない」という強迫観念のような、切迫感がないことが自由に生きているように見える。

楽しそうなことを、次々とチャレンジしていくだけで、あらゆる経験ができるというのは、人生を楽しむコツの一つだと思う。
そして一旦、こういう考え方にシフトすると、大きな目標というものをもつことが苦しくなくなったのだ!
すると、「そうか! そもそも人生とはそういうものだ!」と気づいた。
日々の生活に小さなチャレンジを加えながら、いろいろな経験を積んでいく。そうした日々を積み重ねていく中で、自分の人生をかけても良いと思える目標を設定する。

これこそが、理想の人生なのだ! と、私の答えにたどり着くことができた。
時には、諦めることで、新たな道が見つかることもあるのだ。



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