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雨よ、憂ひ纏ひて。❷

曾祖父様の遷都政策の功罪は、様々だ。ただ、御爺様の不幸という点に話を絞って言うならば、遷都によって地の利の力をそがれた貴族たちを作ったことは、その罪と言える。
地の利の力をそがれて力を失っていった貴族たち。地の利がなければ貴族としての権勢も築いていけぬ、立ち回りのできぬような貴族とも言えぬような、貴いと言われるような力もない者達だ。だが、力ない貴族であったればこそ、分かり易く力を持っていた御爺様に群がった。

御爺様は病を受け、譲位し、古の都、古里に帰られた。幼いころより古の都で過ごされていた御爺様が譲位後に古里へ帰られることは当然のことであったかもしれない。御爺様は寵愛を授けていた女官と共に帰った。
御爺様は幸いなことに病から回復された。
そして、遷都により力をそがれた貴族たちの旗印にされてしまった。

力ない貴族たちに踊らされる、踊りなさる、御爺様。
御爺様は「よろずよの宮」の大伯父様と、対立なさってしまった。
御爺様も力ない貴族たちと同じく力ないお方であったのか、御爺様に群がる貴族に持て囃され気が大きくおなりになったのだろうか、貴族たちをあるいは寵愛を授けておられた女官を衷心より憐れみなさっていたのか、御爺様自身が御身の幸不幸も安楽も案じておられなかったのか、私は御爺様とお会いしたことがないので想像することしかできない。

御爺様と大叔父様が対立なさって、御爺様がご出家なさった顛末は当然の成り行きであったのだと思われる。それは御爺様にとっても当然のこととしてお分かりのことであっただろうと思われるのだ。

私は、御爺様のように心砕くものなど要らない。
私は、誰かの権勢のための道具になどならない。
私は、この身に流れる青い血すら疎ましい。

私は、御爺様が失脚し大叔父様が勝利を収めたこの世を寿ぐよ。

成長するための某かにに使わせていただきます。