見出し画像

人間がどう動くかの、ネットオークション詐欺ゲーム

今日、朝日新聞の朝日デジタルを読んでたら、ミクロ経済学を知っていれば絶対に引っかからない詐欺が報道されていた。


☆☆☆


内容はこうだ。

ヤフーオークションで高級ブランド、ルイ・ヴィトンの財布を買った。

商品情報には「未使用に近い」新品とあった。

なのに、受け取って見ると複数の傷。

出品者を訴えた裁判の話である。


■「未使用に近い」ブランド財布に傷 ヤフオク出品者訴えた結末は?

出典:朝日新聞デジタル

傷だらけのルイ・ヴィトンの財布25万円の訴訟のために、民事裁判1年と裁判費用50万円ぶち込む。

余程怒りが収まらなかったのだろう。


ゲーム理論的に原告側には2つの選択肢があった。

騙されて25万円支払ったあと


■騙されたあとの選択肢

  • 裁判をして50万円さらに多く裁判費用をつぎ込む。1年間怒りを瀰漫することで、己の人生を台無しにする。

  • 裁判せずあきらめる。二度とネットオークションを使わない。

という2つの選択肢があり、上の選択肢を選ぶことで、より多くの損失を被ったわけだ。

余程怒りが収まらなかったと見える。

復讐したかったわけだ。

裁判で勝っても金はほぼ返ってこないのに、相手をやっつけたかった。

己の身を滅ぼしてでも。

新聞では裁判内容とその後について記事が書かれているが、ゲーム理論的には、「裁判する」を選択した時点で既に負けが確定し、詰みである。


もう一つ、ゲームを組んで行こう。

出品者側のゲームだ。

傷だらけの財布を、バレずに一番高く売れるのはどこだろうか?

こうなる。


■傷だらけの財布のゲーム

  • 大黒屋:ブランド品の中古買取りショップ。プロのバイヤーが買い取りをするため、傷物の財布は安く(すべてが適正に)査定される。

  • ハードオフ:ハードオフでルイ・ヴィトンの中古財布は6,000円で売ってる。ハードオフの場合(ブックオフもそうだが)、粗利1割なので、600円でルイ・ヴィトンの財布を仕入れ、6,000円で販売している。二束三文で買い叩かれる。

  • ヤフーオークション:傷の部分を隠して写真を撮り、匿名で顔も隠せて、騙せれば、買い取り相手はプロのバイヤーではなく、素人の消費者だから騙して高く売れる。実際傷物のルイ・ヴィトンの財布を25万円で売れたため、訴訟を起こされている。ちな、新聞は珍しい出来事だけ記事にするため、実際には弁護士を雇い、50万円の裁判費用を掛けず泣き寝入りしているのが多数派。

出品者側のゲームを見ると、まずプロのバイヤーが相手だと適正査定をされてしまう。

高く売りたい奴は、出来うる限りプロのバイヤーを避ける

またブックオフやハードオフのようなリサイクルショップだと、それ以下に買い叩かれる。

商品知識がないため、雑に査定される。

しかもそれらは実店舗だから顔すら隠すことができない。

顔を隠し、高値で売り逃げられるのに一番良いのはインターネットオークションサイトである。

ここから演繹(えんえき)するゲームに入る。

すなわちこういうことだ。

インターネットリテラシーが高く、人を騙すほど写真撮影に上手く、できる限り素人を相手取りたい、プロと相対したくない、顔を隠したい、それすなわち、自分が傷物の財布を新品同様と謳うことからも、自分が軽微な犯罪を犯していることを自覚している詐欺師ほど、証拠を隠せ、顔を隠せる、インターネットオークションを多く活用している事実がある。

普通、庶民はスーパーとか行くとあっちのスーパーのほうが卵は安い。

鶏肉は業務用スーパーのほうが安くて量が多い。

お得だ。

とか言う。

これはミクロ経済学的には合理的であり、一番安くて品質の良い商品を無意識のうちに探し求めているという行為に他ならない。

なのに、高級ブランドになると、軽微な犯罪の自覚はあるのに、顔を隠してでも出来うる限り高く売りたいユーザーが一番多く集うネットオークションサイトを利用してしまう

論理矛盾である。

インターネットオークションの出品者は最低でもインターネットリテラシーが高く、そして素人を相手取ることでより高く騙して売り込みたいという、インセンティブ(動機)を持つ、変な奴が多数派を占めているのに、だ。

顔すら隠さないと商品を売れないようなヤバい奴が多数派なのだ。

ヤフーオークションの出品者に顔写真必須にしたら出品数は半数以下になる。

つまり半数以上は顔を隠さなければ販売できない、バレたらまずい商品を販売している自覚があるのだ。

ゲームのルールを購入者側に戻す。

なぜ素人を騙したい!って人が多く跋扈するインターネットオークションを使うわけ?

間にB(企業)を挟めば6,000円で買えるルイ・ヴィトンの財布をなんで25万円出して買うわけ?

最初の選択肢が一番問題である。

インターネットオークションは売り手側に取ってコスパ最高である。

売り手側にとってコスパ最高って買い手側にとってコスパ最悪だってなぜわからないのか。

意味不明である。

素人を相手取り、適正査定をさせないことで、もっとも多くの金を受け取れる。

適正価格で売りたくない。

騙したい。

綺麗じゃない商品を綺麗に見せたい。

適正価格より高額で売りたい人たちの集まる場所

それが出品者にとってのインターネットオークション。

それって買い手側からしたらコスパ最悪だってなぜわからないのか?


私は写真が好きだからたまに中古カメラを買う。

その場合、絶対に、絶対に利用しないのはインターネットオークションである。

カメラの場合、相手はほぼ全員プロだ。

プロとハイアマチュアしかいない。

パソコンをほぼ使えない、会員登録やパスワードなど理解できない、あまりデジタルカメラを使いこなせない未使用ユーザーは、あそこにはいない。

角度を整え、傷のない部分だけ綺麗に写真撮影して、画像をリサイズして新品同様の綺麗なカメラにレタッチして売る。

色味や彩度やホワイトバランス、コントラストや露出(写真の明るさのこと、暗くすれば傷は見えない)を変えて新品同様に見せ、売る。

デジタル一眼レフカメラを使いこなしている、カメラを良く使うヘビーユーザーが出品するカメラ

それが出品されてくる。

なんでこんなもの買うわけ。

意味不明である。

私が欲しいのはほぼ未使用品である。

フジヤカメラやマップカメラのようにプロ御用達の知る人ぞ知る高価格買い取りのカメラ屋も使わない。

これらの利用者もハイアマチュアとプロだけだからだ。

素人はカメラのキタムラで二束三文で買い叩かれる。

シャッターを100回しか切ってない、インターネットを使いこなせない、オークションサイトにログインできない、露出を変えられない(傷を隠せない)、RAW現像できない(色味を綺麗に変えられない)、オークションの出品方法すら分からない。

そういう人は車で近くのカメラのキタムラへ行って、実店舗で販売する。

二束三文で買い叩かれる。でそれを二束三文でキタムラは売る。

その素人が使ったカメラを二束三文で私が買う。

ブランド物も同じ。

モノの価値が分からない売り手はリサイクルショップを使う。捨ててもいい品なので、価格は気にしない。

高く売れそうと、モノの価値がある程度理解できる売り手は、バイヤーを通す。具体的には大黒屋で売る。適正価格で売れる。

そのモノの価値以上に高く売りたい人は顔を隠してインターネットオークションサイトで、素人相手に、より高く売る。


そしたら買い手側のゲームは一番上に行けば良い(モノの価値が分からない売り手)から買うのが一番良いよね。

ブックオフとかハードオフとかで5,000円くらいでシャネルとかプラダとか売ってるのに、なんでわざわざ顔隠した出品者から25万円も出して傷物の財布買うわけ?

理解不能。

(おしまい)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?