滝行で拾ったお姫様に振り回されてる件について。①

※文フリの既刊からの続きです。

かくして、姫の望み通り9月の3連休に京都に行くことになりました。 

当初は1人で行くつもりだったのですが、京都好きで神道を信仰している友人の敦子(仮名)が「わたしも行きたい!」と言い出したので、急きょ2人旅となりました。実はこの敦子を連れて行ったのも姫の思惑なのですが……。

京都好きで旅慣れている敦子が新幹線の手配やら細々としたことを全てこなしてくれて、あとは旅立つだけとなりました。

始発の新幹線で出発するため、東京駅近くの敦子宅に前泊し、まだ薄暗い東京駅で東海道新幹線に乗り込みました。

なぜ始発の新幹線かと言うと、寺社仏閣は午前参りが一番良いからです。本当は行水して水以外は口にしない潔斎をするのが一番いいのですが、そこまでの体力はなかった……。

さて、9時前に京都に到着し、地下鉄を乗り継いで目指すは知恩院です。

知恩院に行くと決めて初めて知ったのですが、門から本堂までかなりの上り坂なんですね。階段も見上げるほど高く「え、これ上がるの……!?」と考えただけでクラクラします。すると、敦子曰く「無料のマイクロバスで上まで行けるよ」とのこと。さすが京都好き。なんでも知ってます。

本堂は広くて立派な作りです。朝のお勤めが終わったばかりで閑散としていましたが、老婦人が直に板に座り手を合わせていました。まだ暑さの残る時期でしたが本堂はしんと静まり返り、仏様がただわたしたちを見つめています。

わたしも老婦人のように板の間に正座し、仏様に手を合わせました。スマホで浄土真宗のお経のページを開き、静かに読経を始めました。全ての事情を知っている敦子はやや後方で手を合わせています。

わたしはただ「姫よ、安らかに成仏してくれ」と願いながら心をこめてお経を読み上げました。そのために京都に来たのだから。もう、この世の苦しいことは忘れて、旅立ってほしい。あの夏、あの場所で巡り会ったのも何かの縁なのだから。
わたしの望みは姫の成仏、それだけでした。

読経が終わると、スッと体が軽くなりました。そらだけでなく、ピンク色の何かがひわふわと体から飛び出ていくような感覚がありました。滝行の後よりも心と体も軽くなった気がしました。

「終わった?」

敦子にわたしはうん、と答えました。

もう姫はここにいない。そう確信しました。

「終わったよ。ミッションコンプリートだね」

「よかったね〜」

その後、知恩院のそれぞれのお堂にお参りし、着物を着たり和喫茶に行ったり、普通に京都旅を堪能して帰ってきました。楽しい旅の思い出が増え、帰りの新幹線の中で深い眠りにつき、あっという間に東京に戻ってきました。

「さて、姫も無事に帰したことだしマコさんに報告しないとな〜」

京都土産の漬物を摘みながら、わたしは鼻歌まじりにマコさんといつ会おうかカレンダーを眺めていました。

……しかし、その考えは甘かったのです。甘すぎたのです。スタバの期間限定のフラペチーノより甘かったのです。

京都旅の1週間後、わたしはマコさんから衝撃の事実を聞かされることになりました。

→続く

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