先祖、襲来~2023盆~

皆さんは誰かに祟られたり、祟ったことはありますか?

いや、ネタじゃなくて真剣に聞いています。おそらくほとんどの人が、どもらもNOと答えるでしょう。わたしはというと、この人生で生きてる人間、死んでる人間に何回か祟られたことがあります(ここまでですでに色々ツッコミたいでしょうがまあ最後まで聞いてください)。

しかし、声を大にして言いたい。他人様を祟ったことは一度もありません!

誰かの不幸を神社やお寺に願ったこともないし、丑の刻参りだって未経験だし、魔方陣を描いて悪魔を召喚したことだってありません、断じて。

ところが、一転してわたしが加害者……つまり「祟る」側になる可能性が出てきてしまいました。

工エエェェ(´д`;)ェェエエ工  ←本当にこういう顔になった。

事件にきっかけはお盆の帰省でした。

今年は大好きなおばあちゃんの新盆なので、親戚やお寺さんを迎え入れるためにわたしは朝8時から掃除やらお茶の準備やらでバタバタと働いていました。午後は早めの時間帯に自分のマンションへ帰らなくてはいけないので、忙しい。

お茶、OK。香典返し、OK。お墓の掃除、OK。

準備は整いました。唯一クーラーの効く和室でのんびり麦茶を飲んでいると、父は昼食はどうするかと尋ねてきました。

「お父さんとどっかで食べてから帰るよ。駅前のデニーズでいいよ」

奢ってもらう気満々です。

「まあそれはいいんだけど、市役所の人が来るから13時には帰ってくれ」

「え?ハァ?なんで?」

「実は、ご先祖さまが建てた観音様が150年ぶりに見つかったんだ」

「……はい?え?」

「おそらく道路拡張工事の際に、土建屋がちゃんと確かめもせずに埋めてしまったんだろう。この間フィールドワークで確かめに行ったら、きちんと我が家の名前と寺の過去帳にあるご先祖様の名前が掘った観音様だった。なので、市長に(ここは大人の都合によりカット)してやろうと思ったけど、ようやく市役所が折れたから今日話し合いにくる」

暑さのあまり、父の頭がおかしくなったと思いました。

ご先祖様……はまあお盆に出てくるよく出てくるワードだからいいとして、
観音様?土建屋が埋めた?150年前?え、何の話してんの?

「お前も確認してきなさい。すぐそこだから」

父に促されて、家から十分ほど歩いた広大な田んぼの端にある小さな石碑のようなものを見つけました。確かに、道路のアスファルトのせいで半分くらい埋まってしまっています。よく目を凝らして見ると、確かに我が家の名前が……。

はっきり言って、ぱっと見は「なんか縦にデカい石」にしか見えません。うっかり埋めてしまった土建屋さんの気持ちも分かります。素性の分からん石より道路整備の方が大切でしょうから。

しかし父は静かに怒っていて、ここ数年市役所がわと何らかの交渉をしていたらしいのです。オイ、老害やめろよ……と思いましたがどうせ止めても聞かないので黙っていました。

地域の方、お寺さんの棚経が終わると、親戚が二名お線香を上げに来てくれました。優しいおじいちゃまとおばあちゃまという感じで、わたしは好きな二人です。亡くなったおばあちゃんのことも「お姉さん、お姉さん」と最後まで慕ってくれました。ぶっちゃけ嫌いな親戚もたくさんいますが、この二人の葬式には行こうと思います。

「実は、ついにあの観音様を掘り出したんですよ」

線香をあげ終わったあと、お茶を飲みながら父がさりげなく二人に報告しました。

おばあちゃまは、

「まあ、やっぱり。〇〇さん(父の名前)よくやってくれたわね」
「もう何代も前から噂になってたよなあ。いやあ、すごいな。大したもんだ」

親戚たちに褒めたたえられた父はまんざらでもない顔でしたが、わたしはおばあちゃまの一言が気になりました。

「あのう……。やっぱりって?」

「ここらへんの地域はね、お地蔵様や観音様を篤く信仰するの。それで小学校の近くにお地蔵様があるでしょ、そのほかに観音様もあったはずよねって親戚とご近所の方で何代も語り草になってたのよ……」

へえ、そんなことがあったのか。それでそれを発見&掘り起こしまで漕ぎつけた父はちょっとしたヒーローなわけね。わたしは合点がいきました。

「でもひでぇ話だよなあ、観音様を埋めちまうなんてよ。いくら工事だからって……」

「あら、けんちゃん、実はね……」

おばあちゃまの表情が険しく、声が低まりました。

「勝手に観音様を埋めた業者さん、祟られて死んじゃったらしいわよ」

!?!?!?!?!?!?!?

「それ、本当ですか!?」

思わず大きな声が出ました。

「本当よ。なんなら家族ごと祟られてるって話よ」

背筋がゾッとしました。

怖すぎる、わが先祖。気持ちは分かるけど祟るのはやめようよー!

わたしに恐怖だけを植え付けて、親戚たちは帰っていきました。ついでにわたしもデニーズで昼食を奢られると、さっさと帰宅を促されました。父よ、まさか市役所とまた変なやりとりをしてるのではあるまいな?

このままでは、わたしは霊に取り憑かれたことのある被害者から、祟り神の子孫に降格です。おい、勘弁してくれよ……。

ちなみに父からの報告によると、観音様はきちんと掘り起こした後、現在地からすぐ近くのところに建立し直して貰えるそうです。一応、平和的に解決して良かったです。

マンションに帰省して、わたしはよくないと思いつつ4時間ほど泥のように眠りました。

念のため、生霊に憑かれた時にお世話になった占い師さんに霊視してもらったところ「ご先祖さま、全然怒ってないよー!むしろやっと俺の時代が来た!みたいな感じで喜んでるよー!」とのことなので一安心しました。

まあ、祟ったのか祟らなかったのか真実は闇の中ですけど……。

皆さん、生死は問わず、人から恨みを買うようなことはやめましょう。古いものは大切にしましょう。

きちんとした建立が完了したら、手を合わせに行く予定です。

お願いだから父もご先祖さまも次のお盆までおとなしくしてますように……。

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