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或る祭りの終焉


あらかじめ申し上げる。わたしは今日、老害のようなことを書く。読んでいて気分がわるくなってしまったら、即座にUターンしていただいてかまわない。おおくのかたを不快な想いにさせるであろうことを承知のうえで、このnoteを書く。どうぞよろしくお願いいたします。


毎年、個人的にものすごく楽しみにしている「祭り」がある。

ものすごくくだらなくて、ばからしくて、それでいてたのしくて、涙が出るほど笑える、そんな祭りだ。
そこで出会ったかた、そしてその友達の輪が広がり、いまのわたしを作ってくれた、と言っても過言ではない。まちがいなく、あの祭りでわたしの人生は変わったのだ。

その祭りは話題となり、過去最高のひとが押し寄せた。身動きも取れぬちょう満員。入場規制がかかるほどだった。
一昨年→昨年は台風の影響もあったにせよ、微増で済んでいたものが、今年は昨年の2.5倍もの人数が押し寄せたそうで、そりゃ主催のほうも予想できねぇよなぁ、といったかんじだ。


わたしは、陰キャである。

ふだんはその顔を見せないようになんとかがんばっているので、そうおもわれることもすくないが、本質的にはずっと変わらないとおもっている。
すきなバンドのライブで、あなたはとなりのひとに話しかけられるか?
「今日のライブ、さいこうでしたね。あの曲、生で聴けてもう感動しちゃいましたよ!」って。

わたしには、できない。そんな勇気はない。見た目もわるい、コミュニケーションを取るのもにがてなのだ。わたしのようなものが話しかけたら事案になるのではないか、という気持ちにしかならないのだ。

ただ、その祭りはちがう。各々が、へんなかっこうをして集まる祭りだ。
「それはなんのかっこうですか?」
そんな言葉が、自然と口に出てしまう。
聞かれたほうも、アイデアをひねり出してかんがえたかっこうだ。うれしくて、かならず答えてくれる。つまり、へんなかっこうを通じて、どんなひとでもコミュニケーションが取れるお祭りなのだ。

それが、なによりも心地よかった。たのしかった。
端から見れば正気の沙汰ではないだろうが、参加者同士で分かり会える、「何か」があったのだ。
だって、趣味も年齢も性別も、なにもかもがちがうひとたちが「あのイベントに参加した仲間」というだけで集まって仲良くなれるの、すごくないか。

今年は満員だった。身動きが取れなかったので、ただステージを見ているひとのほうがおおかったようにも思えた。わたしはステージよりも、フロアで、気になるおもしろそうなかっこうのひとに話しかけて、即興のコントをしたり、合わせの写真を撮るのがすきなんだ。そのたのしみが、今年はすくなかったなぁ、とおもって残念な気持ちになった。もちろん、これは誰のせいでもなく、しかたがないことなんだけど。参加者が増える、というのはいいことなのもわかっているけど。


そして、昨年会場が渋谷に変わった。なんとなく「あっ、層がちょっと変わってきているかもしれない」とおもった。10倍くらいに希釈された悪意のあるかっこうのひとたちや、「ちょっとした有名人になりたいひと」が来ていた。
それはそれでまぁおもしろかったのだが、これがエスカレートしたらちょっといやだな、ともおもった。

今年、それは現実になった。ショックはない。ただ、やっぱりなぁ、というあきらめにも似たような気持ちになった。

政治臭や売名、むき出しの悪意。

そういうの、勘弁してくれよって。
この「祭り」は「もっと大きなお祭りへの反逆」でもなんでもない。
そういうものことをちょっといじっておもしろおかしく、自分たちでたのしむのが目的だったとおもうんだけどなぁ。過度に揶揄したり、架空の敵を作って攻撃するのって、ちょっとちがうんじゃないのかな。って。
むき出しの悪意、笑えないですよ。悪意ってのはスパイスなんだ。気づくか気づかないかくらいにちょっと入れるのがちょうどいい。分量をまちがえたらいけないとおもうんだ。

そして、入場無料、主催のひとたちもあまり自社を出さないお祭りで、いち参加者が会場でじぶんの宣伝をするのってどうなのよ、あまりにも好意に甘えすぎじゃないか。あとからTwitterアカウントでこういうお祭りに行ってきました!って言うのはいいよ。でも会場でこういうことやってます、来てくださいってのは、ちがうでしょ。知らねぇよ、おまえのことなんか。

ただ、事前登録制ではないし、これはいい、これはダメ、という基準を設けるのもちがう。そうすると自由な発想ができなくなっちゃうだろうな、というのもある。そもそも、たかがいち来場者であるわたしに、他人をどうこう言うような権利などないのだ。わかったうえで勝手にどうこう言っている。タチがわるくて申し訳ない。


ただ、例年ものすごく力を入れて書いていた主催サイトのレポートが、もう笑ってしまうくらい手抜きだった。あまりの手の抜きかたに、これはこういうギャグなんじゃないかとおもったくらいだ。昨年との落差が、すごい。
そういえば会場でも、主催のかたが撤収の際に「ま、また、おもしろいことかんがえてやりますんで」とおっしゃっていた。

ああ、主催ももう、飽きてる。

正直、そうおもった。去年「来年、もう終わるな」ってなんとなく感づいてはいたけど。
祭りはいつまでも続かない。はじまったものは、盛り上がって、いつかは終わるのだ。
集客が見込める「イベント」だから、来年すぐに終わりはしないだろう。でも、もうわたしたちのなかでは終わってしまったのだ。知りたくなかったけど。

すべてのものには、終わりが来るのだ。

きっと来年は会場も運営方法も変わるだろう。「やっぱり、最初に行ったあの年がいちばんおもしろかったな」そんなことを言いながら、おもいながら、それでもきっと、わたしは足を運んでしまうような気がする。

終わった祭りに、未練たらしく。


#エッセイ

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